
その磁場は「ASW0009io9(9io9)」というビッグバンからわずか25億年後に誕生した銀河から生じている。
9io9を調べることで、宇宙の進化にとって大切な時期である、初期の銀河の構造を覗き込むことができるという。
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宇宙の磁場
この広大な宇宙において、磁場はごく普通にあるものだ。一般的に磁場は、電気を流す性質をもつ物質が運動エネルギーを磁気エネルギーに変換(ダイナモ効果)することで生じる。
たとえば、地球にも地磁気があり、宇宙から飛来する宇宙線や太陽風などから私たちを守ってくれているが、その発生源は地球内部にある溶けた鉄やニッケルが揺さぶられることだ。
銀河の磁場も同じようにして発生すると考えられている。
銀河が回転するとき、その中にある荷電ガスも回転する。これがダイナモ効果を生み出し、磁場が発生する。
ただし、それは地球の地磁気や太陽の磁場よりもずっと弱い。
地球の地磁気ならば0.22〜0.67ガウスだが、それよりずっと巨大な天の川銀河の磁場はたったの25〜60マイクロガウス(0.000025〜0.00006ガウス)でしかない。
そもそも銀河の磁場が一番最初にどうやって発生するのか不明だ。
広大な領域で生じた磁力が、生まれてきた銀河に受け継がれるのだろうか? それとも銀河を構成するパーツで生じた磁場が積み上げられて生じるのだろうか?
「ASW0009io9(9io9)」銀河で見つかった磁場は、その疑問に答える手がかりを与えてくれる。

最も遠い銀河で検出された磁場とその向き
今回、遠く離れた9io9銀河の磁場の向きがチリ、アタカマ砂漠に建設されたアルマ望遠鏡 (ALMA)を用いた観測によって確認された。9io9銀河の前には重力レンズ(星や銀河などの質量が時空を曲げることでレンズのように作用する現象)があり、そのおかげで拡大されて見える。
英ハートフォードシャー大学の研究チームは、これを利用することで、磁場の中を進む光の波長が特定の方向に偏る様子(偏光)を測定することができた。
その分析からは、9io9銀河の磁場が天の川付近の銀河のものとよく似ていることが明らかになっている。強さすら似たようなレベルで、500マイクロガウス以下。地球の地磁気の1000分の1程度でしかない。

宇宙初期の内部構造を知るヒントに
研究チームによると、この事実は、こうした銀河が成長するときに急激に磁場が形成されただろうことを物語っているという。それは銀河磁場が星々の材料となる物質と密接な関係にあるということでもある。初期の宇宙では、しばしば猛烈な勢いで星が誕生する。研究チームの考えでは、これが銀河磁場の発達をうながす一つの要因であるようだ。そして、こうして作られた磁場が今度はその後に生まれてくる星々に影響する。
この発見はいわば過去の窓のようなもので、それを覗き込めば、宇宙の進化にとって大切な初期の銀河の内部構造が垣間見えるのだそうだ。
この研究は『Nature』(2023年9月26日付)に掲載された。
References:This Is The Most Distant Magnetic Field Ever Measured : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
そんな遠くの磁場が観測できるのに、そもそも銀河の磁場が何で生まれるか分かっていないというのが不思議というか、面白いというか…。
興味深い記事でした。
2. 匿名処理班
今、どんな姿かわからねえしw
3. 匿名処理班
>>2
大丈夫!
110億年後に判明しますので
4. 匿名処理班
地球磁場の1000分の1しかないのによく観察できたなあ。MRIみたいに画像化して銀河の姿が見えるようになるのが楽しみだ。
5. 匿名処理班
110億年前の電波かぁ…
宇宙は果てしなく、地球人も頑張ってるなぁ…