
オーストラリアに生息するタコを観察していたところ、、泥やら貝殻やら藻類やらを、他のタコめがけて投げ合っていることがわかった。
物を投げる投擲(とうてき)行動がタコで報告されたのはこれが初めてであり、相手に意図的にぶつけていると考えられるそうだ。『PLOS ONE』(2022年11月9日付)に掲載された研究によると、これは「社会的行動」の1つであるという。
動物の仲間に物を投げるという行動は社会性の現れ
物を投げる動物はそうはいない。わざわざ誰かを狙って投げる動物ならさらに珍しく、チンパンジー・オマキザル・ゾウ・マングース・鳥をはじめ、一部の動物でしか観察されていない。変わった例として、外敵や獲物を狙って糸を振りまわすクモや、獲物に水を噴射するテッポウウオが挙げられるが、これらは捕食は防御に関係する。
例えばイルカの場合、獲物を水面から放り投げたり、物を投げて遊んだりすることが知られている。
シドニー大学をはじめとする今回の研究チームによれば、物を投げて遊ぶイルカは、物を道具として使用している例とみなすことができるという。
特に仲間を巻き込むような場合は、コミュニケーションや社会的な絆を育む、あるいは攻撃などの目的があるのだそうだ。
タコも仲間に物を投げる行動を初観測
タコは本来、社会的な生き物ではないと考えられてきた。単独で狩りをするし、同種と遭遇すればケンカになったり、共食いすることもある。そのためタコが物を投げて、仲間とある種の交流をするとは考えにくかった。
ところが、今回の研究で観察されたタコは、相手のタコに対して、意図的に泥や貝殻や藻類などを投げていた。初めて観察された行動だ。
尚、「物を投げる」と言っても我々人間のような投げ方ではなく、触手を使うわけではない。タコの投げ方は、漏斗から水を噴射して、その勢いで近くにある物を相手に当たるように射出するという方法だ。
研究チームは、「物体を弾道運動させること(投げ打つこと)」を「投擲(とうてき)」と定義しているので、これも物を投げていることになるという。

最近の研究では、タコはいつも排他的なわけではなく、相手に合図を送るといった社会的行動をとることが明らかになりつつある。
しかもタコは物の扱いが上手で、さまざまな材料で巣を作ることもある。「ビンの内側からフタを外して脱出できる」くらいに器用なのだ。
タコのすごい能力!- The terrible ability of the octopus!
ちょっかいを出してきたオスに対し、物を投げて撃退したメス
今回の研究では、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州ジャービス湾に生息する「シドニー・オクトパス(Octopus tetricus)」が観察された。この辺りは、タコがやたらと密集していることから、「オクトポリス」や「オクトランティス」と呼ばれている。
研究チームは、この地域のタコがどうも貝殻を投げているらしいことに以前から気づいていたという。
そこで水中カメラを沈めて、その様子を実際に撮影してみることにしたのだ。その結果、カメラはタコが物を投げる瞬間を全部で102回とらえていた。

分析によれば、オスもメスも投げるが、投擲の66%はメスによるものだったという。
また、そのうち半分は他のタコの行為(オスが交尾をしようと腕を伸ばしてきた)に反応したもので、投げられた物体の17%は相手に命中していた。

タコは物を投げる行動をコミュニケーションとして使用している可能性
本当にタコは意図的に物を投げていたのだろうか?たまたま物を吹き飛ばしていただけという可能性はないだろうか?今回の研究では少なくとも一部の投擲は、意図的に相手を狙ったものであることを示す証拠が見つかっている。
誰かを狙っている場合、勢いよく物を投げるのだ。
また投げる物体も違う。タコは貝殻や藻類を投げて住処を掃除することがあるが、誰かを狙っているときは泥を投げることが多い。
さらに皮膚の色を濃くした状態(彼らは皮膚の色を変えられる)のタコは、強くかつ仲間を狙って投げる傾向にあることも確認されている。
体の色が濃いときのタコは、一般に攻撃的であることが知られている。
また狙われたタコが、屈んだり、触手を上げたりして、身を守っているらしき様子も観察されている。
研究チームは、こうした投擲は、「他のタコにぶつける意図がない場合でも、仲間同士の関係に社会的な影響を与える」と結論づけている。
少なくとも、タコは相手めがけて物を投げる珍しい動物の仲間であるようだ。あんなにおいしいのに、賢いし社会性もあったりするなんて、科学者が夢中になって研究するわけだ。
カラパイアでは今後もタコやイカなどの頭足類の話題にがっつり寄り添ってみることにするよ。知れば知るほど興味深い触手族たちだもんね。
References:Take that! Octopuses caught on camera vigorously throwing debris at each other | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
何故、途中から文字が小さくなってるのですか?
もっと老眼の年寄りに優しくして下され( ; ; )
2. 匿名処理班
オクトポリス…ねぇ
ある程度同種の仲間が密集してるから「社会」ができ始めてるんだろうね、個体密度が薄かったらこんな行動しなかったろうと思うよ
思えば人間だって、人数が少ない狩猟社会の頃は比較的単純で、人口密度が高い農耕社会になってから複雑になっていった印象がある
人間以外の生き物でも、個体密度が高くなって同種との接触機会が増えると、こういったコミュニケーション盛んになるんだろうな
3. 匿名処理班
タコの八つあたり
4.
5. 匿名処理班
※1
(記事で文字が小さくなっている事は分からなかったけど、)
ブラウザの設定でズーム機能があったりするので、私はよく世話になってます(笑)
Chromeなら右上の3つの点の設定アイコンからだそうです。
ー記事内容に関係なくてすみません。
6. 匿名処理班
>>5
そうでした。ズーム機能がありましたね♪
ありがとうございます。
7. 匿名処理班
そのうちクジラみたいに知性を持ってるとかなんとかでタコ焼きが食えなくなる未来が来るんだろうか
8. 匿名処理班
鳥が狙って物を落とす行動と同じじゃない?
胡桃や貝など割るためでもあるけど、嫌いな相手に物を落とすほう。
これを、やられるのは人間だけのようだが(家や車、犬など所有物含む)報告者が人間だけなのでしかたない、ほかにも動物相手にやってるはず(縄張りに入る大型動物に)。
広く考えれば「ラクダの唾吐き」「猿の口の中の物を飛ばす」も同じ。
犬程度の知能があれば取る行動では。
9. 匿名処理班
※7
大阪壊滅
10. 匿名処理班
つまり市役所のパワハラの報告で鋏を投げたのはコミニュケーションの為と言っていたのは
本気でそう思っていたと言う事なのか。
11. 匿名処理班
物を使用するのは知的生物のための第一歩だからね
そのうち尖った石を持ち運んで同種のタコを串刺しにして食いだすタコが現れてもおかしくない
12. 匿名処理班
以前魚と狩りをしてうまくいかないと魚に八つ当たりするタコとか読んだことあるけどタコって予想以上に頭が良いんだな
人間が絶滅したらこいつらが地上に進出して文明を作るかもしれん
でもたこ焼きはうまいぞ
13. 匿名処理班
※9
ラヂオ焼きを復活しよう。
14. 匿名処理班
基本単独生活ですごい短命だから、この投てき術も他のタコには継承はされないんだろうな
新たに編み出されたけど、誰にも観測されず継承されずに消えていったタコ技も多そう
15. 匿名処理班
投げつけられたり泥かけられるのが求愛したオスばかりっていう…オス目線だと大人しく引き下がるかやり返すか悩むね。次いつ異性に会えるかも未知数なぐらい広い海でこの仕打ちw
それでもはっきりお断りするタコ姉さんかっこいいね
動物の求愛って大抵メスが無視するだけなのに
不思議とこれは生理的に受け付けねぇんだよ的な辛辣な断り方に見える(´:ω:`)