
違反した飼い主には状況に応じて罰金が科せられる。
だが、これは新型コロナによるものではない。では一体何のための猫のロックダウンなのだろうか?
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野鳥を守るため、飼い猫は一定期間外出禁止
その理由は、春から繁殖期を迎える野鳥「カンムリヒバリ(Galerida cristata)」を守るための措置だ。2022年5月12日より飼い猫のロックダウン(外出禁止)が発令されたのは、ドイツ南西部、ラインラント=プファルツ州アールヴァイラー郡にあるヴァルドルフ市である。
もし飼い猫を外出させる際は、必ず2メートル未満のリードでつながねばならない。違反すると状況によっては、500ドル(5万8千円)〜5万ドル(580万円)の罰金が科せられることとなる。

photo by iStock
十分数のヒナが孵化したためロックダウンが前倒しで解除
カンムリヒバリは、ユーラシア大陸からアフリカ北部にかけて生息するヒバリ科の仲間だ。比較的個体数が多い地域もあるが、ドイツでは激減しており、ヴァルドルフではたった3組のつがいしかいなくなってしまったそうだ。
町は残されたカンムリヒバリをどうにか守ろうと決意。それが今回の猫のロックダウンにつながったという。
その甲斐はあったようで、今年の春は十分な数のヒナが孵化し、予定より2週間早くロックダウンが解除された。
ただし今後3年間、この時期になれば再び同様の措置がとられる予定だ。

カンムリヒバリ photo by iStock
やりすぎだという意見も
一方、やりすぎという意見もあるようだ。確かに猫は野生動物を殺してしまうことがあるが、カンムリヒバリの生息数の減少が猫によるものという証拠はない。英国王立鳥類保護協会(RSPB)は猫よりも、むしろ農業と温暖化の問題であると述べているという。
それでもヴァルドルフ当局は、カンムリヒバリの繁殖地は住宅街と近いため、放し飼いの猫は無視することができず、今回の措置は適切だったと主張する。
屋外にいる猫を2年間追跡した調査によると、飼い猫のほとんどは自宅から1キロ以上離れることはないようだ。
それでも鳥の繁殖地が住宅街に近いのであれば、猫の被害に遭っている可能性は高いという。

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外出は猫にとっても危険がいっぱい
動物の権利を尊重する為、猫を自由に外で遊ばせてあげたい猫の飼い主もいるが、結果的に外出禁止令は猫を守ることにもつながる。外出中の猫は、仲間同士の喧嘩、病気の感染、交通事故といった危険に遭う恐れもあるからだ。
2020年の研究では次のように述べている。
野放図な猫の外出は、病気・寄生虫の感染、交通事故による怪我・死、捕食されるリスクや毒物の摂取、迷子のリスクが高まるなど、飼い猫の福祉を考える上での懸念となる。つまり今回の猫の外出禁止令も、以前から問題視されている愛すべき猫と近隣の野生動物との衝突の一事例ということだ。
これに加えて、猫自身の捕食行動は地域の野生生物に対する脅威となり、また近隣住民に迷惑をかけることもある
環境破壊を引き起こすのは多くが野良猫だが、飼い猫による被害も多い。
米国では年間63億〜223億匹の哺乳類が猫に殺傷されると推定されており、英国でも春から夏にかけて1億匹の動物が捕獲されているという調査結果がある。
さらにポーランドでは最近、イエネコが「侵略的外来種」に指定されてしまった。

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飼い猫の自由と野生動物を守るためにできること
飼い猫に猫らしい生活をさせつつ、野生動物を守りたいのなら、飼い主にもできることがあるという。まずは猫の去勢だ。去勢された猫は攻撃性が大幅に低下するそうだ。猫が嫌がらなければ鈴のついた首輪をすることで、鈴の音が野生動物への警告になる。
その代わりに、猫が大型動物(キツネなど)に襲われる危険性が高くなるかもしれない。
だが、もし周辺にそうした動物がいることを知っていれば、賢明な飼い主はあえて愛猫を外に出そうとは思わないだろう。
庭がある場合、猫用の囲いなどを作って、外出せずとも外の空気に触れさせる工夫はできる。
外の景色を見せてあげたいのなら、リードで一緒にお散歩するといい。慣れるまでは大変かもしれないが、北欧では猫をリードで散歩させている人は結構多い。
References:Meanwhile, cats in a German town have had their own lockdown period / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2022/08/21)本文の誤字を訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
自由であることこそ、ネコの幸せかもしれない
けども、それは色んなリスクと隣りあわせなんだよな
多種多様な生物と共存するのは難しいけど、やっぱなんとかして共存していきたい
2. 匿名処理班
ちゃんと調査して根拠を持って行う良い対策だと思う
3. 匿名処理班
猫の自由をとるか?野鳥の保護をとるか?
生態系では野鳥を保護したほうがよさそう
4. 匿名処理班
ドイツなのに罰金はドル払い?
5. 匿名処理班
やってみて効果がなさそうだったらやめればいいんじゃない?
6. 匿名処理班
小鳥遊 で
ねこなし と読む。
7.
8. 匿名処理班
『ドライブは豆知識でGO!GO!』ですやん
9. 匿名処理班
こういうのを見るたび人類が一番環境破壊してないか?と思う
10. 匿名処理班
> 〜5千ドル(580万円)の罰金
ずいぶんなドルだな。
11. 匿名処理班
>500ドル(5万8千円)〜5千ドル(580万円)の罰金
レート違くない?
カンムリヒバリ減少の主な要因は農業による生息地減少と農薬で虫が減った食糧難でしょ。猫に責任をなすり付けちゃあかん。
12. 匿名処理班
※11
頭が固そう
決めつけはよくない
やってみて効果がなさそうだったらやめればいいんじゃない?
意味理解できますか?
13. 匿名処理班
野生の生き物たちだけでなく、猫も守られる取り組みなので一時的でなく常時やってほしい。これを機に飼い主のいない野良猫の保護譲渡も進めばもっと良い
猫の外での自由の容認は、外での猫自身の怪我病気、飢え渇きの苦しみと高い死のリスクを消極的でも容認するということでもある
14. 匿名処理班
町近くの繁殖組をまず守りたい。なるほどなー。それで繁殖地に入り込まない証明ができる猫(長期間のGPS装備で行動範囲を記録蓄積するなど)なら禁止期間中でも外出の許可出ることはありますよってことにもなってるのね。
地域のキツネやテンの罠・狩りをすることもあったそうだから禁止令が無効になったとしてもニアミスな猫は安全の保障がない。
散歩見つかった猫は500ユーロ、ヒバリを狩ってたら50,000ユーロにも。現行犯や証拠持ちにはやはり厳しい。
15. 匿名処理班
交通事故でぺちゃんこになる猫も減る
弄ばれて死んでしまう小動物も減る
糞尿でのトラブルも減る
よいことだ
16. 匿名処理班
そんなことしてもトリモチで捕まえられて唐揚げにされてる現状があるからね
この手の渡り鳥が止まる木全てにトリモチが設置されてるのは壮観だ
北アフリカの方なんとかしないと焼石に水