photo by iStock
長く古いトンネルほど、暗く、危険で、不気味だと言われ、じめじめして腐ったような雰囲気が、薄暗がりの中になにか邪悪なものが潜んでいるのではないかという思いを抱かせる。事実いわくつきのトンネルは世界各地に存在するが、マサチューセッツ州西部にあるこの現役の鉄道トンネルほど、不気味な歴史をもつものはあまりないだろう。
全長8キロ近くあるフーザック・トンネルは、「血塗られた穴(ブラッディ・ピット)」の異名を持ち、幽霊の目撃例が後を絶たない。
山の尾根の裾野を切り開いてつくられた狭いトンネルは真っ暗で、骨の髄まで凍えそうな寒さだ。完成まで24年もかかり、工事中に亡くなった作業員は192人にもなる。
多くの犠牲者を出したフーザック・トンネル工事
フーザック・トンネルの工事は、1851年1月、ボストンとエリー湖運河をつなぐ計画の一端として、技術者のライオネル・ボールドウィンの指揮のもと始まった。ボールドウィンは、始め工事費用は116万9168ドル、完成まで3年と見積もっていたが、これはまったくの見当違いだった。結局、かかった年月は21年、費用は1900万ドルにもふくれあがり、ボールドウィンはニューイングランドの笑いものになってしまった。
多くの人は、「フーザック・トンネルができる前に、20世紀がやってくる」という作家オリヴァー・ウェンデル・ホームズの皮肉を繰り返して楽しんだ。やっと最初の列車がトンネルを通過したのは、1875年2月9日のことだった。
credit:WIKI commons
このトンネルの完成には、多くの犠牲が伴った。トンネルの深い中央シャフトに落下したり、生きたまま焼かれたり、ニトログリセリンの爆発に吹き飛ばされたりと、悲惨な事故が相次ぎ、工事中に192人もの作業員が亡くなった。
幽霊が引き込んだ?生き埋めになった作業員のケース
ネッド・ブリンクマン、ビリー・ナッシュ、リンゴ・ケリーら、3人の作業員のケースも悲惨だった。ケリーがうっかり爆発をおこしてしまい、あとの2人が生き埋めになってしまった。パニックになったケリーは、助けを呼びに行かずに2人を残したまま逃げてしまった。1年後、トンネル内のブリンケンとナッシュが死んだ同じ場所からケリーの遺体が発見された。ここから、死んだふたりの幽霊がケリーに復讐したのだと広く信じられるようのなった。
1868年、この3人の悲劇的な事故から3年後、機械技術者のポール・トラヴァースは妹に宛てた手紙の中でこう書いている。
昨夜、午後9時頃、ミスター・ダンとぼくはあの大きなトンネル(未完成)の中に入ったんだ。シャフトのほうへ3キロほど行って立ち止まり、耳をすませた。あたりは静まりかえっていたけれど、誰かが痛みにうめくような声をふたりとも確かに聞いた。
知ってのとおり、戦争中、ぼくはそんな声を何度も聞いているからわかったんだ。だけど、ランプの芯を長くしてみても、シャフト内にはほかに誰もいなかった。
シャイロー(南北戦争の激戦地)以来、こんなに恐ろしい思いをしたことはなかった。ミスター・ダンも絶対に風の音などではなかったと言っていた。それなら、ナッシュなのか、それともブリンクマンだったのだろうか?
悲しみに満ちた声がトンネル内に響き渡る
1872年、クリフォード・J・オーウェンズという医師が、友人のジェームズ・R・マッキンストレイと共に、夜遅くトンネルの中に入ったとき、もっと不気味な体験をした。「シャフトに向かって3キロほど進んで、引き返そうとしたとき、突然、悲しみに満ちた声を聞きました」続いて、頭のない男のような形をした青い光が、宙に浮きながら彼らのほうへ向かってきたという。
「それは、触れることができそうなほど近くに来ると、わたしたちを観察するように正面で止まった。そして、シャフトの東のはずれに向かって去って行き、ふと見えなくなったのです」
トンネルの建設にこんなに長くかかった理由のひとつには、作業員の確保が難しくなったことがある。実際に危険だったことももちろんだが、人々がここは呪われている、出ると頑なに信じ始めたのだ。
多くの人間がおかしなものを見た、不気味な音を聞いたと証言し、怖がってしまって、どんなに賃金を高くしても、特に夜にはトンネルに入りたがらなかった。
credit:"Berkshire Sampler," October 30, 1977, via Newspapers.com
幽霊に襲われた体験を持つ男性の話
10代のときにトンネルで働いていたジョゼフ・インポコは、50年近く前の自分の体験を詳しく話してくれた。彼はフーザックの幽霊たちに命を救われたという。あるとき、インポコが線路でしゃがみこんでいると、叫び声が聞こえた。「逃げろ、ジョー、逃げるんだ!」振り向くと、列車がこちらに向かってきているのが見え、幸いなことに間一髪で飛びのいて事なきを得た。
だが、まわりを見回しても、トンネル内にはほかに誰もいなかったという。またべつのときは、インポコは氷の中から鉄製のバールを取り出そうとしていると、また声を聞いたという。
「ジョー、ジョー、それを捨てろ、ジョー!」思わず、持っていたバールを放すと、次の瞬間、1万1000ボルトの電流によってバールはトンネルの壁にたたきつけられた。送電線がショートしていたのだ。
ある日、インポコたち作業員が木を伐採していたときのこと。仲間たちが「逃げろ、ジョー、逃げろ!」と叫んだので、振り向くと大木が彼のほうに向かって倒れてきた。
一目散で逃げましたが、転んでしまい、勢いよく木がぶつかってきました。みんなの笑い声が聞こえてきましたが、それとは別にハ、ハ、ハ、ハという奇妙な笑い声が聞こえました。そのあとすぐに、全員トンネルでの仕事をやめてしまったという。死ぬのが恐ろしかったからだろうが、それ以降、インポコをからかうようなことはしなかったらしい。
皆は笑うのをやめていたのに、その笑い声は谷のずっと下のほうまで響き渡っていました。まわりにはうっすらと霧が出ていました。嘘だと思うかもしれませんが、あのときのほかの作業員8人はのちに全員死にました
この事件から2ヶ月後、インポコはフーザック・トンネルはもうたくさんだと思って、仕事を辞め、スプリングフィールドに引っ越した。しかし、この不気味な場所と縁が切れたわけではなかった。
毎年、なぜか彼はトンネルを訪ねている。その理由は、トンネルに来ないと悪いことが起こると幽霊に言われたからだというのだ。
インポコは、この異様な巡礼を何十年も続けていたが、妻にそんなのは迷信だからやめろと言われ、言う通りにして年に一度のトンネル行脚をやめた。
すると、その3週間後に妻が死んだという。
そして、こんな記事が新聞に載った。
ハスタバがトンネルに入っていくところは目撃されているのに、それきり出てこなかったという。それ以来、今日に至るまで、誰も彼の姿を見ておらず、生きているのか、死んでいるのかもわからない。
警察、行方不明の男性を捜索
ウィリアムスタウン:ウィリアムスタウン警察は、週末から行方不明になっているバーナード・ハスタバ(55)の全国捜索手配書を発行した。
行方不明になる前、ウィリアムス・インに滞在していたハスタバは、親戚を訊ねるために、金曜にフーザック・トンネルを通ってグリーンフィールドまで歩いていくつもりだと言っていたという。
ハスタバは身長175センチ、体重65キロ、茶色の長髪、濃い眉毛、飾りのついたチェーンを首につけている。最後に目撃されたとき、フォックステリアを連れていた(1973年7月10日、バーモント州のベニントン・バナー紙)
The Hoosac Tunnel Hauntings
現在も人々を怖がらせている呪いのトンネル
フーザック・トンネルは、現在でも貨物列車がときどき通過するが、相変わらず訪問者を怖がらせている近寄り難い場所だ。今でも、不気味なうめき声が聞こえる、トンネルの中や周辺に奇妙な光や幽霊が出るといった証言がある。豪胆な者がトンネル内を歩いてみると、たいていは後悔する。なにかがすぐ後ろをつけてくるような不穏な気持ちになるという。
いずれにしても、フーザック・トンネル付近に行くのなら、明るい日中にしたほうがいいかもしれない。
References:Strange Company: The Haunted Tunnel/ written by konohazuku / edited by parumo
あわせて読みたい
廃墟となった精神病院から聞こえる不気味なオルゴールの音(オーストラリア)
ゾクっとする怪談話「未来からの電話」
世界各地で語り継がれる8つの都市伝説やUMA伝説
学校で起きた怖い話:小学校の中庭に現れたクトゥルフの姿をした黒きもの
身の毛もよだつ。世界10のいわくつき「幽霊トンネル」とそのサイドストーリー
コメント
1. 匿名処理班
先日紹介されてた「めっちゃ白くなる塗料」を塗って
洞窟とかトンネルをめっちゃ明るくしたら
さすがに幽霊側から苦情来るのかな。
「俺の白さが台無しになるやん?」って
反省会コントみたいになるのかな。
2. 匿名処理班
妻が亡くなった男性と、捜索願いが出された男性の話は、同じセクションに書かれていて「そして」で繋がっているけど、関係のある話?ない話だよね…?
もしかして何か読み落としたのかもしれないけど、分かる人がいたら教えて…
3.
4. 匿名処理班
※1
そうなったら黒いしみでお前ら許さん文字とか
苦い顔で返事送ってくるぞ
5. 匿名処理班
インポコ
6. 匿名処理班
※1
煌々と強い白色LED照明が普及し
さらに地面も白っぽいコンクリート舗装が増えて、
今の道路トンネルって、下手すると夜間は
トンネル以外の部分よりよっぽど明るくなった。
そしたら、昔の薄暗いオレンジ灯の頃に比べて
「えっ、今時の夜のトンネルって全然怖くないじゃん?」
と感じるようになった。
やっぱり人間が感じるオカルト的な恐怖感って、
シンプルに「明るさ」で大幅に軽減されるもんだと思った。
7.
8. 匿名処理班
日本最恐の常紋トンネルが真っ先に思い浮かんだ
どこでもトンネル工事は大変だったんだね
9. 匿名処理班
「費用は1900万ドルにもふくれあがり」
東京オリンピックやないか
10. 匿名処理班
※5
立て、立つんだジョー
11.
12. 匿名処理班
カラパイア 過去記事の幽霊を科学的に検証する内容を参考にすると、
トンネル内の反響で低周波が発生しているとか、岩盤から電磁波が出てるとか、そういう話ではないかな。
13.
14. 匿名処理班
タイムトンネル
15.
16. 匿名処理班
>あのときのほかの作業員8人はのちに全員死にました
そりゃいつか死ぬやろ。
「ワクチン打った人はみんな死ぬんやで」みたいなもんやね。
17.
18. 匿名処理班
※10
おととい来やがれw
19. 匿名処理班
幽霊なんて迷信だって!
ガクガクブルブル
20. 匿名処理班
あのインポコよ〜 どこ行った〜♪
21. 匿名処理班
※12
違うかな
22. 匿名処理班
※16
ニュアンスってものがわからないんやね
23. 匿名処理班
※6
そんあ当たり前のこと書かれても
24. 匿名処理班
ブラッドピットってやらしい顔してるよね