エビを飼育し藻類を養殖する魚の存在
エビを飼育し藻類を養殖する魚の存在 Griffith University
 人間は動物を家畜にし、植物を作物に変えることで、安全確実に食物として利用できるリソースを確保してきた。

 じつはこうした営みは人間だけのことではない。一部の昆虫(アリ、甲虫、シロアリなど)はキノコを栽培し、それを食べることが知られている。とは言え珍しい事例であり、これまで人間と昆虫以外ではほとんど観察されていない。

 ところが、『Nature Communications』(12月7日付)に掲載された研究によると、ある魚が藻類を養殖するために家畜を飼っている初めての事例が発見されたそうだ。 
広告

カリブ海でエビを飼育し藻類を養殖する魚

 美しい海とサンゴ礁が広がり「カリブ海の宝石」と呼ばれるベリーズ。その海に生息する「ロングフィン・ダムゼルフィッシュ(学名 Stegastes diencaeus クロソラスズメダイ属)」には、藻を育てそれを食べるという変わった習性がある。

 オーストラリア・グリフィス大学をはじめとする研究グループが発見したのは、その藻の養殖場に「アミ」という小さなエビが大量に生息しているということだ。

 これが特に目を引いたのは、養殖場に近寄ろうとする生物がいれば、ダムゼルフィッシュは追い払おうとするのが普通だからだ。

 そこで研究グループは、サンゴ礁を横切るように泳ぎ、アミとダムゼルフィッシュを目撃するたびにそれを記録。両者がどの程度の頻度で一緒に生息しているのか調べてみることにした。

 その結果、アミがダムゼルフィッシュのそばにいる確率は、ほかの種に比べてはるかに高いことが判明したという。
3_e4
ベリーズ沖のサンゴ礁ではロングフィン・ダムゼルフィッシュが藻類の養殖場を作り餌を与えて育てている

ダムゼルフィッシュはアミを捕食者から守っていた

 アミを餌にしている魚はたくさんいる。もしアミがダムゼルフィッシュの家畜なのだとしたら、家畜を食べようと近寄る魚に対して飼い主であるダムゼルフィッシュはどう反応するだろうか?

 実験として、透明なビニール袋にアミを入れ、それをダムゼルフィッシュの養殖場の内と外に置いてみる。すると養殖場の内側にいるアミを食べようと近寄ってくる魚がいると、ダムゼルフィッシュはそれを追い払うことが確認されたという。
Dusky Damselfish Territory Defense

 またダムゼルフィッシュが捕食者から守ってくれることは、アミにも分かっているようだ。

 海で捕獲したアミをさまざまなニオイ入りの水槽に放してみると、捕食者のニオイからは逃げ、それ以外の魚のものには無関心だった一方、ダムゼルフィッシュのニオイには引き寄せられることが明らかになったからだ。

アミのフンは藻類を育てる良質な肥やし

 一方でダムゼルフィッシュにとってのメリットは何なのか? この魚が食べるのは、養殖場で育てている藻であってアミではない。

 アミがいる養殖場の藻とそれ以外の藻の比較からは、養殖場のものは品質が良く、アミを飼育するダムゼルフィッシュはそうでない個体に比べて健康状態が優れていることが判明している。

 どうやら養殖場の上を泳ぐアミの排泄物は、良質な肥料であるらしいのだ。
1_e6
ダムゼルフィッシュの藻類養殖場にいるアミ
image credit:Griffith University

現在進行形の家畜化プロセス

 これらの検証の結果、研究グループはロングフィン・ダムゼルフィッシュは、アミを家畜として飼育しているのだと結論づけている。

 ダムゼルフィッシュはアミを外敵から守る。そして、その見返りとしてアミは肥料を提供する。そんな特別な共生関係が彼らの間には形成されているようだ。

 人類は犬や猫、牛や豚など、さまざまな家畜を作り上げてきたが、それを行ったのはずっと昔のことだ。だが、ダムゼルフィッシュとアミの事例は、現在進行形で起きている家畜化プロセスを観察するチャンスであるそうだ。

References:We found algae-farming fish that domesticate tiny shrimp to help run their farms/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
実はウィンウィンの関係だった?大きなタランチュラと小さなカエルが仲良く一緒にいる理由(※クモ・カエル出演中)

ナマコのおしりから体内に侵入し、ちゃっかりと隠れ住む小型の魚「カクレウオ」

やっぱりワンチームだった!アナグマとコヨーテが仲良く排水溝を歩く姿を激写(アメリカ)

魚の舌になりすまし生き血を吸う「ウオノエ」の3Dスキャン写真

サルがオオカミを飼い慣らす日も近い?野生のオオカミを手懐けたゲラダヒヒの群れが観察される(エチオピア)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 08:45
  • ID:l3hIhj1S0 #

アミってなんじゃろと思ったらおやつ代わりに
むしゃむしゃ食ってるサクラエビもどきだった
魚の奴うまいことを知ってるとはやるな・・・

2

2. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 09:16
  • ID:rDY61cW20 #

魚って、家のネコより賢かったのか。

3

3. 匿名工作員

  • 2020年12月15日 09:22
  • ID:jNY8fvBu0 #

キノコを栽培している蟻は知っているが、他の生き物を養殖してその肥やしで藻を育てるってのは更に高次元だなぁ。
蟻と同じで知恵ではなく、本能的に刷り込まれた物だろうけど、進化、自然淘汰ってすごいな。

4

4. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 09:53
  • ID:Ck.yY0i80 #

これは共生じゃなくて飼育なの?

5

5. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 09:59
  • ID:H4v..oFt0 #

ダムゼルさん「なんかね、このアミ居るときの方がメシの量がたっぷりだし断然美味いなって気づいたんですよね。もうアミ無しの藻なんて考えられませんよ」

6

6. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 11:00
  • ID:2BQOsVEF0 #

アミの方は「この魚は僕等を食べない処か守ってくれる」って認識だろうが、魚の方はアミに暮らして貰うと藻の成長が良くなるって理解したって事か
結構間接的な利害の一致なのに御互い必要だと判ったのが凄いな

7

7. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 11:02
  • ID:YChQI.e90 #

※4
アミに餌やりとかはしてないから家畜化って感じはあんまりしないよね

8

8. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 11:17
  • ID:42GvYAhT0 #

動物ならまだしも魚や甲殻類の知能で共生って選択が出来るのが不思議だわ
どこまで分かってやってるんだろうな

9

9. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 11:40
  • ID:kirSmRRd0 #

ビジネスはしてないんじゃないかな

10

10. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 12:04
  • ID:izU15tYJ0 #

レベルEでみたな

11

11. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 12:35
  • ID:JlvR37hY0 #

※9
もしかすると、食べきれないほどの藻が育って、他の藻を食べる魚もつれてくるビジネスをしてるかも?

12

12. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 12:41
  • ID:M02sl63d0 #

沖縄のクロソラスズメダイも珊瑚の表面でイトグサを養殖している。
クロソラスズメダイはこのイトグサしか食べない。
このイトグサもクロソラスズメダイが選別して品種改良を行ったようで、クロソラスズメダイの農場からしか発見されていない。

13

13. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 12:59
  • ID:tL7yuWAE0 #

>>2
猫が飼育しているのは人間

14

14. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 13:15
  • ID:vYogeRPn0 #

※4
共生だね

15

15. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 13:46
  • ID:uzbeksOs0 #

さあどんどん育てちゃおうね…

16

16. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 13:49
  • ID:84w8gc2r0 #

守って育てたアミを食べる訳じゃないとなると、人で言えば牛や馬を放牧して糞だけ集めて畑の肥料にしてる感じか。

17

17. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 14:17
  • ID:kYXBI.6G0 #

※4
飼育と共生を分ける意味はあんまりない。
家畜/作物は人に増やして貰う代わりに食料を供給し、人は家畜/作物の保護をする。これは完全に相利共生。
さらに我々は猫様の奴隷。

18

18. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 15:46
  • ID:a5PsisJB0 #

>>3
藻やキノコなどの食料を育てる生き物はいるけど
その食料を育てる生き物を囲って育てる間接的なのはバクテリアの様な小型除けばあまり聞かないね

19

19. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 15:48
  • ID:MnU.Fz230 #

アリがテントウムシをアブラムシから守るのと似てますね、共生でしょう
飼育となると、被飼育動物が飼育主からの世話がほぼ必須つまり絶対必要みたいなイメージがあります(あくまでイメージですが)

20

20. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 16:08
  • ID:VGbD.YOQ0 #

※13 快適環境・おいしいゴハンと引き換えに
オサワリを許して頂く。(しつこいと噛み刑)
なんだオレたち、ヒヒジジイじゃないか!


21

21. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 16:49
  • ID:rIqISGF40 #

こういうお互いにメリットがある現象ってありふれてると思うんだけどね
なんでこいつだけこうなったんだろ
別の原因がさらにありそう

22

22. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 17:55
  • ID:hOadgn5Z0 #

もしアミエビをわざわざ自分の藻畑?に連れてきてたとしたら、完全に養殖だね。おいらの藻畑に入らないで!と他の魚を追っ払ってるうちに、アミエビが居心地よくなって増えたとしたら共生かな。
いずれにしても面白いね。

23

23. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 18:41
  • ID:ixhQ0Vgc0 #

>>19
アブラムシは、テントウムシの餌だから、テントウムシがアブラムシに襲われてる前提でアリがテントウムシを守るという認識がちょっとわからない

24

24. 匿名処理班

  • 2020年12月15日 23:34
  • ID:PXiCGc1m0 #

ある種のササラダニはアリの巣ですごい丁重に飼育されてるのだそうな。
餌ももらって身の回りの世話をしてもらって卵を産むのまでアリに手伝ってもらう。
でも食料が少ない時にはアリに食べられる。つまり非常食。
それでも野生で生活していくより楽で生存率が良いのでその状態に甘んじてるそうな。
まさに家畜。

25

25. 匿名処理班

  • 2020年12月16日 07:54
  • ID:VbRDUWQ30 #

※19 アリがテントウムシ守ってどうすんだよ、
なんでダレも突っ込まないんだ!

<あらすじ>ある植物にアブラムシが住んでいました。
そこへ通りかかったアリは、アブラムシから液体が出て
いたので、おいしく頂きました。
そこへテントウムシ飛来!
あーんとお口を開けてアブラムシを食べようとします。
「ヤメロ!この子はボクにおいしい液体をくれるトモダチ
なんだ!あっち行け、エイエーイ!!」

26

26. 匿名処理班

  • 2020年12月16日 18:58
  • ID:SGy.PsVw0 #

すごいなあ
生き物の多様性は底が知れないね

27

27. 匿名処理班

  • 2020年12月17日 03:43
  • ID:mLNWpqMz0 #

やはり農業や畜産をするようになると有限の資源を巡り争うようになるんだね
寝る暇もないと思うけど、どうしてるんだろう

28

28. 匿名処理班

  • 2020年12月17日 19:02
  • ID:hlzmK50r0 #

※3
アリの仲間には家畜の完全飼育やえさ場の整備をする種がいるが
まさかさかなにもいるとはね。

29

29. 匿名処理班

  • 2020年12月17日 20:00
  • ID:isLV6Djn0 #

※12
ただじつはクロソラスズメダイっていうのは沖縄や奄美諸島でオキアミで釣れてきますね

お名前
ADVERTISING
記事検索
月別アーカイブ
ADVERTISING
ADVERTISING