
カワウソは仲間から餌の取り方を学ぶ / Pixabay
学習は模倣から始まる。何かの技を習得したいと思うのなら、誰かがやっているところを観察して、その方法を盗んでしまうのが近道だ。じつは他人の真似をするのは人間だけとは限らない。かわいらしいカワウソも同じことをやっているのだという。
英エクセター大学をはじめとするグループは、ちょっとした工夫をしないと中身を取れない仕組みになっているケースに餌を入れて、「コツメカワウソ」がどうやってそれを取るか観察してみた。
そしてが明らかになったのだ。どうもカワウソは仲間を観察し、どうするのかを見てから、それを自分でも試しているらしいのだ。
試行錯誤と社会的学習
人が何かを学ぼうと思ったら2つのやり方がある。1つは自分一人で試行錯誤を繰り返して、覚えていく方法だ。これはその過程で楽しさや達成感のようなものを味わえるかもしれないが、それなりに大変な方法だ。だがもっと楽ちんなやり方もある。他人がやっていることを真似して(あるいは教えてもらって)、その技を盗んでしまうのだ。これが「社会的学習」というもので、人間だけでなく、さまざまな動物がこれを通じて学習していることが知られている。
社会的学習は効率のいい学習法だが、欠点がないわけではない。それは他人がやっていることが必ずしも正しいとは限らないことだ。よかれと思ってうっかり間違った方法を身に付けてしまうこともある。
だから”いつ”、そして”誰”から学ぶのかについて、それなりの戦略を持つことが大切になってくる。今回のグループの研究テーマがこれだ。

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社交的なカワウソたちの社会的学習
研究グループによると、社会性があり、海や川など世界各地のさまざまな環境に生息するカワウソは、このテーマを掘り下げるにはぴったりなのだという。仕掛け付きケースを使った実験と、グループのネットワーク分析を行った結果、コツメカワウソにとっての社会的学習は「刺激強化(stimulus enhancement)」としての役割を果たしていることが判明したとのこと。
仲間がケースから餌を取り出すことに成功した場面を目撃したカワウソは、自分も同じものを見つけたら同じことをしてみようと感じるらしいのだ。しかし具体的な取り出し方は、自分で試行錯誤して身につける傾向にある。
これが示唆することは、野生のコツメカワウソは、どこで餌を見つけるべきか? どのような餌を食べるべきか? といったことを仲間の行動から学んでいるということであるそうだ。
2/4 The researchers gave groups of #otters a variety of transparent containers baited with meatballs. Each of these food #puzzles could be opened by twisting or pulling a lid or handle.
— University of Exeter News (@UniofExeterNews) November 11, 2020
Photo credit: @muddyduckuk pic.twitter.com/XMl2OnqauE
カワウソが生き延びるためのヒント
カワウソの学習法を知ることが大切なのは、彼らが環境に適応する手助けをする際のヒントになるからだ。人間による生息地の破壊のために、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕しているのは周知の通りだが、コツメカワウソの場合、漁獲資源の乱獲によって彼らの餌が不足するという事態が発生している。
一部地域では、野生のカワウソを一時的に捕獲してから新しい生息域に放したり、人の手によって繁殖されたカワウソを野生に還したりといった取り組みが行われている。しかし現時点で、これを着実に行う方法はまだ確立されていない。
カワウソの捕食行動について理解が深まれば、その知見を活かして、こうした取り組みをもっとスムーズに行うことができる。
研究グループは今後、たとえばカニの貝殻を開けさせるなど、もっと現実的な仕掛けやツールを用いることで、カワウソの学習スタイルを探る予定であるそうだ。この研究は『Royal Society Open Science』(11月11日付)に掲載された。
References:These otters learn how to snag snacks by watching their friends | Popular Science/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. X
愛情を持ってしっかり教えてやっておくんなせぃ、先輩!
2. 匿名処理班
カニの貝殻...