
ギャラップ社の世論調査によれば、アメリカ人の半数がテロ攻撃を強く懸念しており、また3分の1近くが政府はテロの脅威から市民の安全を守れないと考えているそうだ。事実、ニュースで過激派の話題が尽きることはない。
それでも、テロリズムに対する私達のイメージは必ずしも正確とは限らない。ここでは意外と思われる現代テロリズムにおける5つの事実を見ていくことにしよう。
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5. 世界最大規模のテロリストグループにはイスラム教と無関係なものも多い

だが、他の主要なテログループにはイスラム教と無関係なものもあり、それどころか宗教とも関係ないものもある。
その代表の1つがコロンビア革命軍だ(FARC)。マルクス・レーニン主義の社会主義政権樹立を目的としており、宗教とは一切関係がない。2014年11月に発表されたフォーブス・イスラエル誌の試算によれば、FARCは世界で3番目に資金が豊かなテログループであり、コロンビアのほぼ30%を支配しているとされる。現時点でもアルカーイダやボコ・ハラムより大きな組織であるが、実は2000年代初頭には現在の3倍もの規模があり、実に年間3,000件もの誘拐を行っていた。
一方、ジョゼフ・コニーが率いるウガンダの反政府勢力、神の抵抗軍(LRA)は、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、スーダン南部において現在も勢力を拡大している。聖書と十戒に基づく神聖政権の樹立を目指すキリスト教系団体で、1987年以来、10万人以上を殺害してきた。
日本では、1995年に東京の地下鉄でサリンガスを撒き、死者12人、負傷者5,500人を出したオウム真理教があった。その後継団体には現在1,300人ほどの信者が存在し、布教活動を続けているそうだ。
イスラム教といえばテロを思い浮かべる人もいるかもしれないが、アラーなど歯牙にも掛けないテログループが多数存在するの現実だ。
4. ヨーロッパのテロリズムの大部分は分離独立主義と関連

2014年、ヨーロッパで発生した全テロ事件の半分は宗教や極右過激派ではなく、アイルランド共和主義と関連している。同年、欧州刑事警察機構は201件のテロ事件を報告しているが、そのうち109件が北アイルランドで発生していた。民族主義運動や分離独立運動は、各地で起きるテロリズムの主要な動機である。コルシカ島の独立を目指すフランスのコルシカ島の民族解放戦線(FLNC)は、2013年に警察署へ連続砲撃を実施した。また、2015年には、マケドニアで民族主義のアルバニア系テロリストによって警察官5人が殺害された。
だが、何もヨーロッパの頭痛の種は分離主義者だけだというわけではない。過去2年では左翼系過激派も目立った動きを見せている。2013年、ギリシアではマルクス主義者が政敵2人を殺害し、イタリアでも無政府主義者によるレター爆弾事件があった。
特定の問題に関連したテロ行為もある。フランスではワイン醸造家の一団がワイン生産に関する抗議として、社会党のビルに爆弾を仕掛けた。
3. アメリカで起きたテロが組織的に行われたことは滅多にない

ところが、南部貧困法律センターによれば、アメリカにおいてテロ行為が組織的に行われた事例はごく少数で、そのほとんどは一匹狼(1人)もしくは2人によって実施されているという。
同センターが60件のテロ事件を分析した結果、その75%近くが単独の犯人によって立案、実行されていたことが判明した。さらに、外部に協力者のいない2人以下の犯人に拡大すると、全事件の90%を占めてしまう。
この「指導者なき抵抗」理論は、1980年代後半から90年代前半にかけて提唱され、政府が潜在的なテロリストを発見できない根拠とされた。1995年に共犯者1人の力を借りてオクラホマシティで168人を殺害したティモシー・マクベイの事件後、一匹狼によるテロ行為は急増し、1995〜2011年ではほぼ3分の1が一匹狼による事件(南部貧困法律センターの調査で、犯人の大半を一匹狼が占めていたのもこれが理由)である。この時点において、すでに組織的なテロリズムはほとんど過去のものになっていた。
2. テロリストの目的は実現しない

2009年、米ジョージ・メイソン大学は、1968年以降に発生した457件の組織的テロ運動を分析し、過激派が国家を制圧した例はなく、94%が自身の掲げる目標を1つたりとも達成できていないことを明らかにした。
確かにこの研究はやや時代遅れである。おそらくはISISがその傾向を覆し、中東に半国家的な存在を作り上げることに成功したと論じられるだろう。
しかし、全体的な傾向としては未だ正しい。IRAは数十年も戦いを続けてきたが、北アイルランドは現在でもイギリスの一部だ。これまでの数知れない爆破事件や銃撃事件によって、アメリカ政府が倒れることはなかった。1990年代後半にはコロンビア政府打倒間近と言われたFARCでさえ、現在では武装解除を視野に入れている。彼らの期待に反して、テロリズムは目標実現の近道とはなりえない。
1. テロの目的は布教やイデオロギー拡大だけではない

米オハイオ州立大学で、USを標的とした52のイスラム系過激派を調査したところ、その動機の中で圧倒的に多かったものは復讐であることが判明した。大部分のテロリストは、イスラエルを支持するアメリカを罰するため、あるいは単にアフガニスタンやイラクでの戦争行為への怒りゆえにテロ行為に訴えているという。
また、米ミシガン大学の研究からは、一般的に若い男性で構成されるテロリストのほとんどは、冒険、仲間意識、地位、女性を求めてテロ組織に参加していることが明らかとなった。
だからと言って、テロの脅威や組織が公式に掲げる目標を軽視していいということではない。そうではなく、テロリズムの目的を理解するには、より大局的な歴史的視点とテロ組織に所属する個人の動機を考慮する必要があるということだ。
via:listverse.・translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
いつの時代も「悪」は居るからアタマを悩ませるね…
性善説とか性悪説とか聞くがどちらなのやら
2. 匿名処理班
政府も「テロに屈しない」だけではなくて、
こういう核心的な啓蒙活動を積極的に行なっていくべきだと思う。
3. 匿名処理班
テロを知り己を知れば百戦危うからずか
4. 匿名処理班
テロの語源はフランス恐怖政治
5. 匿名処理班
刹那的に結果を求めるから、結局は大きな流れには抗えないんだろうね。でも長期的な戦略を持ち得るほど復讐というエネルギーは大人しくないからなぁ。
6. 匿名処理班
テロで成功を獲る事よりも、主義主張を喧伝する為にテロを行っている様に感じる。
テロは最早、本来の意味さえ失われている。
7. 匿名処理班
5つとも意外でもなんでもない、ごく一般的な内容だと思うんだが…。
今はこういうことを知らずに騒いでる人が多いわけ?
8. 匿名処理班
今のところ恐怖で支配し、異教徒にはイスラムとの対立の構図を煽るというISの目論みはうまくいっているように思える。
しかもISが潰れたとしても次の組織が立ち上がり引き継ぐだけで無限増殖する。
9. 匿名処理班
いやさ、「国家掌握に成功したらテロと呼ばれない」から、結果的に「過去に例は無い」ってことになるんじゃないの?
革命だってクーデターだって征服だって、成功したからそう呼ばれるだけで、その当時やってたことをみりゃ「テロ」でしょ。
失敗したら「テロ」とか「反乱」とか呼ばれるだけで。
アイルランドも成功したら「同化政策に対する激しい抵抗を伴う独立運動の結果、独立した」と言われる。
きっとISISも、安定した国家樹立したら、歴史的には「テロ」とは呼ばれないよ。
10. 匿名処理班
残酷な事件とか風習についてのニュースで、全然イスラム関係ないものに対してもやっぱりイスラム教は〜とか、ムスリムはおかしいだとかそんな内容のコメントたくさん見かける。
恐ろしいのはそのコメントのそう思うボタンの数がそう思わないより上回っている事が多々ある事。
11. 匿名処理班
細かい団体が一つの国でそれぞれ主張してもまとまらないから、選挙という民主的手法で多数決をとり、妥協案や歩み寄りで国民全体が納得するように進めてきたのが先進国だ。
強い武力と容赦ない弾圧を示して国のリーダーとなっても、人類の歴史でそれが安定した例は見当たらない。
思うに、テロリストは個別の大義のために命をかけることに陶酔して、より目立つ活動をしようとしているだけなのかもしれない。目的達成が問題ではないのだ。
12. 匿名処理班
5つとも全く意外な話じゃないし
むしろ意外に感じた人たちのテロリズムのイメージを聞いてみたい。
例えば4で出てくるアイルランド共和主義の主体であるアイルランド共和軍(IRA)なんて
少し前まではテロリズムを扱った映画なら必ずと言っていいほど登場する超有名な組織。
映画では『パトリオット・ゲーム』『ジャッカル(リメイク版)』『デビル』とか。
だから「分離独立主義と関連」てのは国際社会に目を向けている人間なら常識中の常識なんだよね。
13. 匿名処理班
米1
世の中に善も悪もない
人が勝手に決めるだけ
14. 匿名処理班
サパティスタ民族解放軍みたいに巧みに外国向けの広報活動をして政府に潰されないようにしつつ、武力闘争を放棄して地道に政府と交渉を続けてる組織もあるよな。
15. 匿名処理班
ごく普通に生活してるムスリムの人たちが犯罪者であるかのように差別されるなんて、とんだとばっちりだよ。無知って怖い。
16. 匿名処理班
暴力は何も生まない
これは綺麗事じゃなくて経験と歴史から導き出された真理
戦争に意味や目的があるとすれば、自分と同じだけ相手にも血を流させるてことだけだろう
両者うんざいするぐらい血を流してようやく妥協できる、人間社会というのは実に非合理的にできている
17. 匿名処理班
入信の動機はカルト宗教と同じ
ヒエラルキーから逃げたつもりでも
結局内部でマウンティング行為しあう
猿山と変わりない
18. 匿名処理班
宗教の対立が派手な宣伝合戦を呼んでるのではなくて...
意外でもなんでもないぞ。
だれがどう不利益を被るかで自ずと分かるもんだ。
19. 匿名処理班
宗教が文化に取り込まれてしまった日本じゃ、皆心のなかで宗教争いなんて個人の意見の食い違いぐらいしか思ってないから
個人が神の名を使って自己主張、根が深いのは解るけど馬鹿らしいよね
実際人類の歴史の中で神々が戦った戦争もなし、悪魔も出てこない
人間がただ争ってるだけ。
20. 匿名処理班
※10
そしてテロを起こせば起こすほど人々はその喧伝する内容と組織に猜疑心を生み敵対心を燃やし嫌悪感を抱く・・・テロ組織がその悪循環に気がつくのはどれほどの犠牲が必要なのだろうか
21. 匿名処理班
※2
対立するどちらにも大義名分があり善だから難しいんでしょw
自陣側は善で、その秩序を害する者を悪と呼ぶだけw
22. 匿名処理班
神道最高
23. 匿名処理班
※29
結局の所、ネットで犯罪自慢してる愚者達と何ら変わらない低俗な行為になるのも、全くの偶然でも無いよね…
24. 匿名処理班
テロリストを撲滅させるのは武力だけでは無理だとつくづく思う。
残念ながら世の中には戦争を歓迎する人間がいるのだ。
結局のところテロリストたちはそうした人間を喜ばせているだけの駒に過ぎない。
ただただ関係のない人々が血を流すだけ。
25. 匿名処理班
ハリウッド映画の敵役の歴史たどればわかりやすいかも
26. 匿名処理班
※16
一定期間テロとして扱われていたのが、国家成立したのは北朝鮮かな
敵対心から揶揄的にテロリスト扱いすることもあるだろうけど、北朝鮮も一応国家だしね
戦前の朝鮮や満洲では「金日成一派」によるテロ行為がそれなりに報じられててそこそこ有名だったんだよね
金日成より有名なテロリストもいたし、報じられてる金日成(殺害したとの報道があったりする)と北朝鮮の金日成は別人説も根強かったりするけど
27. 匿名処理班
ネットとミドルエイジクライシスが合わさると、凄く下劣なネットテロが起きる気がする。
28. ・・・
最近流行りのイスラム教系テログループなんかは、ヨーロッパ社会とムスリム移民の間に楔を打ち込むのが目的になってるな
つまり、イデオロギーの核にイスラム教を掲げながら、テロの標的(最終的に困らせたい対象)は同じムスリムということに
そういえばISISなんかは、移民先で挫折した元ムスリム移民やキリスト教社会での脱落者が構成員や幹部であることを考えると、自分の同類を産み出すためにテロを繰り返しているとも言える
29. 匿名処理班
テロリストが殺した人の数と国家が殺した人の数はどちらが多いんだろうか?
30. 匿名処理班
明治政府を作り上げた薩摩長州連合も結局、身内の過激派を抑えきれなくて
全国の武闘派を再結集する形で過激派を一掃したもんな
そこから武断政治が終わって民権運動に発展していったのだから議会政治はやはり強い
31. 匿名処理班
十字軍時代にシリア諸侯を悩ませ独立国家の体を為していた暗殺教団を潰したのは利害関係のないモンゴル軍だったりするからな。プーチンがシリアとイラクを丸ごと征服するぐらいの事をしないとISISは無くならないと思う。
32. 匿名処理班
テロと戦争の違いは?
民間人を標的とするのと巻き添えで死ぬのの違い?
じゃ〜原爆はテロ?民間人も狙ってたよね??
実験で民家の街並みを再現してやってたよね
宣戦布告してやってるのは???
めくそ、はなくそだよね
33. 匿名処理班
>動機の中で圧倒的に多かったものは復讐であることが判明した。大部分のテロリストは、イスラエルを支持するアメリカを罰するため
アメリカやイスラエルはそこまで彼らの恨みを買うようなことをしてきたのか
34. 匿名処理班
※49
「報復」を理由に挙げて暴力行為に及ぶ人間っていうのは、そのほとんどが勝手に被害者意識募らせて過激な行動に出る人間か、暴れる口実に使いたいだけ。
なんとなく「それっぽく見える」し自己正当化に使いやすいから。
イスラエル問題と直接関係ある連中はイスラエル周辺で紛争してるので精一杯だし、他所でテロする奴らは何の関係も無い奴ばかりだよ。
ビン・ラディンがアメリカを敵視するようになったきっかけなんか、イラクがクウェート侵攻した時に義勇軍作って駆けつけようとしたら「アメリカがなんとかしてくれるからいらん。むしろお前ら邪魔」って言われてプライド傷ついたのが発端だしな。
35. 匿名処理班
※49
事の発端は一次大戦のイギリス三枚舌外交でしょう
油田の利権と、対立するオスマン帝国の解体を目論む連合側は
アラブ建国を約束し、利用するだけしてボロ屑の様に捨て、
あまつさえそこにイスラエル建国しちゃったんだから・・・・
36. 匿名処理班
勝てば官軍
負ければテロリスト
37. 匿名処理班
金・愛(性愛含む)・自尊心 これのどれかが満たされていないと反社会的になりやすい しかしビンラディンはどれが欠けていたのだろう
38. 匿名処理班
基地ができればベレッタが儲かる。
戦争が起きればアメリカが儲かる。
39. 匿名処理班
※49
その辺の事はルーマニアの元将軍Ion Mihai Pacepaの本に色々書かれてますよ。
翻訳本無いので英語版読むしかないですが。
40. 匿名処理班
※53
自尊心かな。
冷戦時代に「俺は国を守る戦士なんだ!」ってアメリカに支援されてソビエト軍と必死に戦ってたけど
後になって冷静に考えると、「あれ、俺達ってアメリカにいいように使われてただけじゃん」って気づいて
自尊心がズタズタにされただろうね。
41. 匿名処理班
ISISを支援している国や王族をなんとかせにゃ、前に進まないでしょ?
でも、あのロシアでさえそこに手を突っ込まない・・・。まぁ色々ある
のでしょうね。
42. 匿名処理班
※35
ランボー3・怒りのアフガンとかおもしろいことになってるな
43. 匿名処理班
根本的なところを見誤っている。
多くの連中は目的を達成するというお題目を掲げてはいるが、それは宣伝用であって実際には目的を達成するプランどころか意欲も薄い。
むしろ別の手段によって要求に近いものが達成されそうになった時、彼等はそれを破壊によって妨害する。なぜなら、彼らは自分にとって都合の良い組織を維持し続ける為にテロしていることが大半だからだ。だから彼等は一見愚かなだけな自滅的行為を喜んでやる。自分の楽園である組織を維持する為だけにメンバーを使い捨てるのだ。残ったテロが復讐型なのは説明の通りだ。
44. 匿名処理班
>94%が自身の掲げる目標を1つたりとも達成できていないことを明らかにした。
裏を返せば6%は最低1つの目標を達成できたってことでしょ
結構高い確率に思うしテロって有効なんだな
皮肉だがソシャゲで狙ったもの引くよりはよっぽど確率ある
45. 匿名処理班
※53
じゃあ911の報復でアフガンをボコボコにしたアメリカも同じだな。
偉そうに「テロとの戦い」とか宣ってるのも非難しないと片手落ちというか、大国のプロパガンダにまんまと乗っけられてるだけじゃないの?
ちなみにアメリカはじめ「先進国」があっちこっちに無駄な火種をばらまきまくって人の国を分裂させて荒稼ぎしてるのは歴史的事実。三枚舌外交もその一環。