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地球の磁場と老化に関係性。遮断すると病気のハエの寿命が延び、健康なハエは少し縮む

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(著)

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Image by Istock /  Petrovich9
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 普段意識することのない地球の磁場だが、実は細胞の老化や病気と関わっているようだ。

 英ノッティンガム大学の研究チームが、地球の磁場をほぼ完全に遮断した環境でショウジョウバエを飼育する実験を行った。

 すると、パーキンソン病に関連する遺伝子欠陥を持つハエの寿命が20%も延びたのだ。ただしその代償として運動能力の低下がみられた。

 一方で、健康なハエではわずかに寿命が縮み、運動能力が上がるという、逆の結果が出たという。

 この研究成果は『Aging』誌(2026年9月23日付)に掲載された。

磁場を遮断した箱でショウジョウバエの飼育実験

 これまで、我々人類は、常に磁場の中で暮らしてきた。

 地球の磁場は方位磁針を北に向け、渡り鳥が目的地へ向かうためのナビゲーションを助けている。

 しかし、生物の細胞自体がその磁場を必要としているかどうかは、長年謎に包まれていた。

 イギリスのノッティンガム大学の研究チームは、この目に見えない磁場が細胞に与える影響を解明するため、ショウジョウバエを用いた実験を行った。

 地球の自然な磁場は約25から60マイクロテスラという強さを持っている。

 研究チームは磁場を強力に遮断する特殊な合金「ミューメタル」でできた箱を使い、内部の磁場を地球の磁場のおよそ1万分の1にあたる約5ナノテスラまで下げた。

 そして、長年脳疾患の研究で使われてきたショウジョウバエを中に入れて飼育した。

 実験には、健康なハエと、正常に機能するPink1遺伝子を持たない病気のハエの2種類が用意された。

 人間のPink1遺伝子の欠陥は、遺伝性の若年性パーキンソン病に関連している。

 パーキンソン病は、脳でドーパミンという物質をつくる神経細胞が減ることで、手足がふるえたり、体がスムーズに動かなくなったりする病気のことだ。

 患者全体の5〜10%は親から子へ遺伝する遺伝性パーキンソン病とされている。

 Pink1遺伝子は、細胞内の発電所「ミトコンドリア」のうち、古くなったものを掃除する役割を持つ。

 ハエのPink1遺伝子に欠陥があると、傷ついたミトコンドリアが細胞の中にたまり、動きが鈍くなったり寿命が短くなったりと、人間のパーキンソン病に似た症状が現れる。

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Image credit:University of Nottingham

病気のハエと健康なハエで逆の結果に

 研究チームは、パーキンソン病モデルのハエを、症状が現れる前の生後20日で磁気を遮断した箱に移した。

 すると、通常の環境下で飼育されたハエに比べて死亡リスクが約半分になり、寿命が20%延びた。

 生後10日から箱に入れたグループでは改善幅が小さかったため、磁場を遮断するタイミングが重要であることが判明した。

 寿命が延びるという良い結果が出た一方で、新たな問題も発生した。

 ハエを小瓶の底に落とし、一定時間内に決められた高さまで登れるかを測る運動能力テストを行ったところ、磁気を遮断されたハエは通常のハエよりも成績が悪かったのだ。

 遺伝子の欠陥による運動障害に加えて、さらに登る能力が低下してしまった。

 健康なハエの場合は逆の結果となった。

 磁気を遮断された健康なハエは、運動能力が上がり、通常のハエよりも登る能力が向上した。

 その反面、生存率はわずかに低下した。

 同じように磁場を取り除いた環境でも、ハエが健康か病気かによって反対の反応が起きたのである。

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Image by Istock /  Dragon Claws

ミトコンドリアのバックアップシステムと活性酸素

 研究チームは、健康なハエと病気のハエの結果の違いが生じた理由を探るため、ミトコンドリアの内部を調べた。

 ミトコンドリアは、ほとんどすべての真核生物の細胞内に存在する細胞小器官で、細胞がストレスを受けたときに稼働する予備のバックアップ発電機のようなシステムを持っている。

 磁気から遮断された健康なハエでは、このバックアップシステムが通常よりも激しく働いていることが確認された。

 パーキンソン病モデルのハエにも同じような傾向が見られたが、はっきりした差として確認できるほどではなかった。

 さらに、老化の原因の一つとされる「活性酸素」の量も測定した。

 活性酸素は体の中でつくられる反応しやすい酸素の仲間で、増えすぎると細胞を傷つける。

 原子サイズの欠陥を持つ微小なダイヤモンド粒子を利用した高感度センサーを使った検査の結果、磁気を遮断されたハエは活性酸素のレベルが高くなっていた。

 安静時のパーキンソン病モデルのハエでその傾向が最も顕著に出た。

 研究チームは、磁場を失うことが細胞にとって軽度のストレスとなり、バックアップのエネルギーシステムに頼るように促しているのではないかと推測している。

 健康なハエにとっては余計な負担になるが、通常のエネルギー生成がうまく機能していないパーキンソン病モデルのハエにとっては、バックアップが不足したエネルギーを補っている可能性があるという。

磁場遮断による治療への応用と残された課題

 この研究を主導したリサ・チャクラバルティ教授は、地球の磁場が、生物が進化の過程で適応してきた環境の一部である可能性を指摘している。

 細胞が磁場にどう反応するかを解明すれば、将来的に老化や病気におけるミトコンドリアの働きを調整する新たな方法が見つかるかもしれない。

 磁気を遮断する環境を作ることは、薬や手術を必要としないため、パーキンソン病の新たな治療法になる可能性がある。

 しかし、実用化へのハードルはまだ高い。

 今回の実験では、寿命が延びたハエはパーキンソン病の核心である運動能力をさらに失ってしまった。

 治療に生かすためには、寿命が延びても運動能力が失われないことを証明し、人間でも同じ現象が起きるかを確認する必要がある。

 我々が普段意識することのない地球の磁場だが、生命と密接に関係しており、その関係を解き明かすことで、思いがけない発見があるかもしれない。

References: DOI.10.18632/aging.206424 / Could Earth’s Magnetic Field Influence How Earth Life Ages? - Astrobiology

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この記事へのコメント 2件

コメントを書く

  1. と、言うことは、、
    ピップエレキバンは効果がある!って事?

    • 評価
  2. 寿命を取るか運動能力を取るかは難しい問題だなあ。
    それぞれの程度にもよると思いますが。。

    >パーキンソン病モデルのハエを、磁気を遮断した箱に移した。
    >寿命が延びるという良い結果が出た一方で、
    >遺伝子の欠陥による運動障害に加えて、さらに登る能力が低下してしまった。

    筋肉を動かす神経が壊れていく病(ALS)のかた向けに、
    脳から直接指示を出せる装置のようなものを研究している人がいましたが、
    こういった研究で少しでも悩みを取り除けると良いですね。

    • +1

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