この画像を大きなサイズで見る初期宇宙で見つかった「小さな赤い点(LRD)」の正体は、ガスで包まれた超大質量ブラックホール、仮説上の「ブラックホール星」でであるという説が有力だ。
では、このブラックホールはどのように誕生し成長したのか。
国際研究チームが、日本・国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイIII」を使用し、ガス雲からブラックホールが急成長するまでの過程を最初から再現することに成功した。
さらぶ猛烈な勢いでガスを吸い込むブラックホールの姿が、地球からは謎の天体「小さな赤い点」として観測されていたことも示された。
この研究成果は『Nature』誌(2026年9月16日付)に掲載された。
参考文献:
- Japanese supercomputer explains Webb's Little Red Dots | EurekAlert!
- 謎の「小さく赤い点」の正体に迫る―ガスに包まれたブラックホールの急成長を再現― | 国立天文台(NAOJ)
小さな赤い点の謎に日本のスパコンが挑む
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙誕生から10億年も経っていない初期の宇宙に、極めて小さく赤く光る天体を次々と発見した。
天文学者たちが「小さな赤い点(LRD)」と名付けたこの天体は、ガスを大量に吸い込みながら急成長する超大質量ブラックホールではないかと考えられている。
だが、そのブラックホールがどこから来たのかは説明がついていなかった。
初期宇宙に存在するブラックホールが、どのようにして誕生し成長するのかを理解するためには、数億光年規模の広大な宇宙空間から、数光年規模の小さなガス雲の動きまでを一貫して計算する必要がある。
周囲の銀河が放つ光がガスの温度に与える影響なども含めてシミュレーションを行うには、従来のコンピュータでは計算量が膨大になりすぎるという大きな壁があった。
そこで、ドイツのマックス・プランク天体物理学研究所を中心とする国際研究チームは、岩手県奥州市にある国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイIII」を使用して、宇宙初期の環境を計算し直した。
この画像を大きなサイズで見るブラックホール誕生前からの再現に成功
研究チームは、暗黒物質の運動データを元に、重いブラックホールが生まれるのに適した銀河の密集領域を選び出した。
そこに「アテルイIII」の高い計算能力を用いて、個々のガス雲の動きへとズームインしていく手法をとった。
これまでの研究では、最初にブラックホールがあると決めてから、その成長を計算で追いかけていた。
ブラックホールがどうやって生まれたのかは、計算の外に置かれていたことになる。
今回の研究では、ブラックホールがない段階から計算を始めた。あるのはガス雲と暗黒物質だけで、そこから何が生まれるかはスパコンの結果に任せている。
初期宇宙と同じ条件をそろえたうえで時間を進めていけば、ブラックホールが生まれる瞬間も、育っていく様子も、そのまま見届けられる。
その結果、研究チームは、初期宇宙で何が起きていたのかを直接追跡することに成功した。
強烈な紫外線が超大質量星を生みブラックホールへ
シミュレーションの結果からは、初期宇宙ならではの特異な環境が見えてきた。
宇宙初期の銀河が密集した領域では、明るく輝く近隣の銀河から強力な遠紫外線(FUV)が放たれている。
ガスは冷えることで縮んで星になるが、強い紫外線を浴びたガスは材料となる水素分子を壊されてしまい、冷えることができなくなる。
こうして小さな星が生まれるのが遅れた。
小さな星が作られない間にも、ガス雲の周囲には暗黒物質が集まり続け、暗黒物質の重力に引かれてさらに大量のガスが一箇所に密集していく。
大量に集まったガスは一気に収縮して星を生み出し、その中で最も重い星は太陽の50万から90万倍という「超大質量星」にまで育った。
この巨大な星はやがて自らの重力に耐えきれずに崩壊し、太陽の約100万倍の重さを持つ、重い「種ブラックホール」へと進化した。
研究者たちは、これから育っていく前段階にあるブラックホールのことを「種ブラックホール」と呼んでいる。
同じ領域では軽い種ブラックホールも生まれたが、周囲のガスを集められずにほとんど成長できなかった。
最初から重く生まれたかどうかが、その後の成長を決定づけたのである。
この画像を大きなサイズで見るガスを爆食いする姿が小さな赤い点として見えていた
誕生したばかりの重い種ブラックホールの周りには、極めて密度の高いガスの円盤が形成された。
種ブラックホールは、周囲の厚いガス円盤から猛烈な勢いでガスを取り込み始める。
ブラックホールが限界を超えてガスを吸い込む「超エディントン降着」と呼ばれる現象を引き起こし、宇宙誕生から約6億年後には太陽の約3000万倍の重さにまで急成長した。
成長中のブラックホールの周辺で放たれた光は、外側を包み込む濃いガスの中で何度も吸収や散乱を繰り返す。
外へ光が抜け出す頃には赤い光が強くなり、水素の光も電子にぶつかって散らばることで、幅の広い特徴的な光になる。
濃いガスに包まれて猛スピードで成長するブラックホールの姿が、地球からはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見した「小さな赤い点(LRD)」として見えていたのだ。
重い種ブラックホールの誕生から過大質量ブラックホールへの急激な成長、そして赤い点として観測される姿までを、ひとつの自然な流れとして計算機の中で説明できたのは今回が初めてとなる。
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正体不明の暗黒物質の存在を前提にしてるのはどうなんだろう
正体は分かってなくても、周囲に及ぼす重力の効果(例えば銀河を構成する星々の動きなど)から、「存在する」とは考えられてるから
存在すると仮定しないと他の観測結果も矛盾が生じるからね
宇宙には暗黒物質なんか存在しないという仮定の方が不自然なほど
何もかも暗黒物質ありきの答えになるんだな
まだ何だかはわからないし観測できたことはないけど暗黒物質(ダークマター)を含んで 100% としたとき 27% くらいないとどれも計算が合わないってことみたいですから、悪い言い方でいえば慣例に従ってということなのでしょうね。 ダークエネルギーに至っては 7 割くらいらしいので、見えているエネルギーよりも多いみたいです。 これだけ違うと理論が間違っているか足りないか、観測技術が足りないかなど、ニュートン物理学から相対性理論を取り入れた現代物理学のような画期的な何かがないとわからないんじゃないかなと素人ながら思ってます。 そしてそれを見てもう少し宇宙や我々の生きている世界の心理に近づいた状態をみてから死にたいな
これは本当に難しい問題で、現在の”標準理論”は言うとおりに暗黒物質の存在ありきで成立している
これにはもちろん理由がちゃんとあって、「暗黒物質は存在しない」という論もあるにはあった(”MOND”とか。あとはカルトに足突っ込んでる論とか)のだけれど、現時点で存在する様々な観測結果と比較してみた場合には、暗黒物質の存在を仮定する論の方が現状の観測結果に近いからそうなっている
ただ、将来的に観測装置の一新や制度の向上、あるいは観測範囲を広げた結果
「未知の物質(暗黒物質)ではなくて、別の解法が見つかった」
…ってオチになる可能性は当然としてある
良いよねスパコンでの計算
初期宇宙で見つかった小さな赤い謎の天体(LRD)と、ブラックホールの誕生と成長の理論を、スパコンによるシミュレーションでひとつに結びつけることで、点と点が線になったということですかね。
映像を見ると、ホットケーキミックスと牛乳を混ぜた時にできるダマのようですね。
遠くて身近な存在に感じてしまいました。
シミュレーションは、あくまでシミュレーション
この初期宇宙で出来たブラックホール星は今の宇宙ではどのようなものになっているのだろう?
銀河中心の巨大ブラックホールの元になってるのか?
自分には脳の神経回路が出来ていくように見える映像だった
ブラックホールが出来る前あたりか
なんとなくのモヤが渦になってくのを見ると、何かの振動があってそこを中心にまとわりついているのか?と思うような、なんとなく変な感覚に思えてしまった
しかしながらブラックホールの渦巻きって美しい
360℃多彩に回転しているガス筋があるのが特に美しい
昔はスパコンでの計算はリアルタイムではなくてプログラムとデータを渡して計算結果を受け取ってたけど今はどうなのかな?