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初期宇宙の謎の赤い点、超大質量ブラックホールを包み込むガスの繭かもしれない

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超大質量ブラックホールの概念図 Image credit:NASA, ESA, Leah Hustak
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 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見した極めて明るい赤い点の正体は、成長する超大質量ブラックホールを全方位から厚く取り囲む、高密度のガスと塵の繭であるとする新説が発表された。

 英マンチェスター大学の研究チームによると、この繭が光を散乱させることで、中のブラックホールを実際よりも100倍も重く見せていた可能性が高いという。

 この赤い点はビッグバンと呼ばれる宇宙誕生から10億年という初期の時代のもので、その後10億年ほどで姿を消したが、ガス層でできた繭はブラックホールの成長を助ける餌でもあり、銀河誕生の謎を解く重要な鍵として期待されている。

 この査読積みの研究論文は『Nature』誌(2026年1月14日付)に掲載された。

初期宇宙に浮かぶ極めて明るい赤い点

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙の深淵を撮影した際、天文学者たちは小さな赤い点(Little Red Dots)と呼ばれる、極めて明るく真っ赤に光る天体を発見した。

 赤い点は普通の銀河にしては明るすぎるし、単なる星の集まりにしては赤すぎた。

 天文学者らは当初、赤い点を非常に遠くにある小さな銀河の一種だと考えた。  しかし、本研究の筆頭著者である英マンチェスター大学のヴァディム・ルサコフ博士は、銀河説には無理があると指摘する。

 赤い点が銀河だとしたら、内部の星が100%の効率で生まれなければ計算が合わないが、実際の宇宙ではせいぜい20%程度が限界だからだ。

 次に疑われたのが超大質量ブラックホールだ。ところが、ブラックホール説においても大きな矛盾が生じた。

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による小さな赤い点(Little Red Dots)Image credit: adim Rusakov/CEERS/PRIMER

成長時間が足りない超大質量ブラックホールの謎

 通常、銀河とその中心にある超大質量ブラックホールの重さには、1000対1という整った比率がある。

 しかし赤い点を分析した結果、内部に潜むブラックホールが、銀河全体の質量の10%から、ときには100%を占めるという、あり得ない計算結果が出た。

 異常な質量比は、例えるなら幼稚園の教室に身長180cmの大人が座っているような不自然な状態だ。

 宇宙が誕生してわずか10億年という時間は、ブラックホールが銀河と同じ重さにまで育つには短すぎる。超大質量ブラックホールが巨大化するには、もっと長い年月が必要なはずだ。

 初期宇宙に完成された巨人が存在するように見えた事実は、ブラックホールの成長に必要な時間が足りないという、天文学の世界で最大のミステリーとなっていた。

 約1.54兆円を投じた最新の望遠鏡でさえ、天体の正体を見誤っているのではないか。ルサコフ博士らの研究チームは、12個の天体を詳しく調査し、ついにからくりを突き止めた。

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Image by Istock

光を散乱させて重さを偽装するガスの繭

 突破口となったのは、光の届き方の分析だった。

 ブラックホールに吸い込まれるガスは、猛烈な重力によって熱せられ光を放つ。光の線を調べると、まるでガスが時速約108万kmという猛スピードで動いているようなデータが出ていた。

 速度が速い事実は、重力が強く、ブラックホールが巨大であることを意味する。

 だが、実際にはガスが速く動いていたのではなかった。光が濃い霧のようなガスの繭の中で、電子に何度もぶつかりながら散乱していたのだ。

 跳ね返る現象はトムソン散乱と呼ばれ、光が何度も反射することで、観測データ上ではガスが速く動いているかのように見えていただけだった。

 ガスの繭はブラックホールが成長するために飲み込む高密度のガスや塵でできており、まるで蝶の蛹のようにブラックホールを包み込んでいた。

 厚いガスの繭が宇宙の盾となり、ブラックホールの存在を知らせるX線や電波も閉じ込めていたのである。

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超大質量ブラックホールを取り囲む赤い点は、繭のようなガスや塵である可能性  Image credit:NASA / ESA / CSA / Webb / Rusakov et al ., doi: 10.1038/s41586-025-09900-4。

銀河と超大質量ブラックホール誕生の鍵

 ガスの繭による光の散乱を考慮して計算し直すと、ブラックホールの重さは以前の予想より100倍も小さかった。

 算出された質量は、太陽の10万倍から1000万倍という超大質量ブラックホールの範疇には入るが、銀河と同じ重さを持つ不自然な巨人ではなかったのだ。

 質量の再計算によって、成長時間が足りないはずの初期宇宙に異常な天体が存在するという矛盾は解消された。

 赤い点の実体は、超大質量ブラックホールが急速に成長する繭の段階という、進化の途中の姿である可能性が高い。

 研究結果は、ブラックホールが最初からある程度の大きさで生まれたのか、それとも小さな種から成長したのかという、天文学における大きな議論を解明する鍵になるだろう。

 ルサコフ博士は、発見されたガスの繭が銀河の誕生を知る手がかりになると考えている。

 今後さらに多くのデータが集まれば、宇宙誕生の直後に何が起きたのかが明らかになるだろう。

References: Nature / Space / Futurism

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この記事へのコメント 7件

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  1. 時速約108万kmって秒速約300kmぐらいなんだけど 特別早いわけではないな。
    太陽のフレアが出す水素イオンだと約600km/sぐらいは有るんだよな。
    そしてフレアから出るプラズマ場合によっては約3000km/sぐらい有るものもあるからな。

    自分の記憶違い??
    太陽からの大規模フレアが観測されて磁気嵐が起きるのって大体3日後位なんだよな。

    • -4
    1. 原文流し読みしてみたけど、どうやら散乱を考慮して再分析した結果が時速108万kmみたい

      • +3
  2. >約1.54兆円を投じた最新の望遠鏡
    えーっと、約100億ドル!?
    天文学的数字と言わざるを得ない・・・

    • +2
    1. >JWSTはもともと16億ドルと見積もられていたが、開発の初期段階からコストは増大し、2008年に正式に開発が決定した時点で既におよそ50億ドルに膨らんでいた[11]。
      >NASAは最終的なコストとして、望遠鏡の設計と開発に88億ドル、打ち上げ後のミッション運用に8億6100万ドル、合わせて97億ドルと見積もっている。また共同開発をしているESAの拠出金額は7億ユーロ、CSAは2億カナダドルと発表している[18]。
      ESAの火星探査ミッションへのNASAからの支出を中断しているみたいだけれど
      想定内なんだろうな

      • +2
  3. 超大質量ブラックホールの周りに銀河があっても見えない状態なんだろうな
    観測できないんだから銀河がないと仮定しても問題ないぐらいかな

    • +1

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