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生き残ってる!天の川銀河の超大質量ブラックホールに抗う特異な天体と連星

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Image by Istock ClaudioVentrella
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 天の川銀河の中心にある「いて座A*」と呼ばれる領域には、太陽の約430万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが鎮座している。

 その強大な重力はあらゆるものを引き裂き、飲み込んでしまう「死の世界」だと考えられてきた。

 だが、そんな過酷な環境で、ブラックホールに吸い込まれるのを抗うようにふるまう天体や連星が存在する。

 ドイツのケルン大学をはじめとする国際研究チームの最新の研究により、ブラックホールの至近距離にいながら破壊されることなく、驚くほど安定して存在し続ける、特異な天体と連星の存在が明らかとなった。 

 この研究成果は『Astronomy & Astrophysics』誌(2025年11月28日付)に掲載された。

天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール

 私たちの天の川銀河の中心で過ごすことは、これまで考えられていたほど危険ではないのかもしれない。

 「いて座A*」にある超大質量ブラックホールは、太陽の430万倍という途方もない質量を持ち、その半径は1200万kmにも及ぶ。

 他の銀河には太陽の数十億倍もの質量を持つものが存在するため、宇宙規模で見れば小さい部類に入るが、私たちの天の川銀河においては、間違いなく最大にして絶対的な怪物だ。

 だが、この怪物は孤独ではない。その周囲には、複数の星や奇妙な天体が軌道を周回しているからだ。

 これまで、こうした天体は、ブラックホールの凄まじい重力によっていずれ破壊される運命にあると考えられていた。

 だがどうやらそうじゃなかったようだ。ブラックホールに抗い、生き残っている天体や連星があるのだ。

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天の川銀河の中心にあるいて座A*の領域とそこにある超大質量ブラックホール Image credit:NASA/CXC/A. Hobart

スパゲッティ化を免れ、生き残る驚異の天体

 ドイツ・ケルン大学のフローリアン・バイスカー氏率いる国際研究チームは、チリにある超大型望遠鏡VLTに搭載された新型の観測機器「ERIS(エリス:高解像度撮像分光器)」を使用し、いて座A*の周囲を回るいくつかの「塵に覆われた天体」の軌道を追跡した。

 観測対象の中で特に有名なのが「G2」と呼ばれる天体だ。長い間、G2は単なるガスと塵の雲だと考えられてきた。

 通常、超大質量ブラックホールは強力な重力で物体を引き伸ばし、星を引き裂いてしまうことがある。これは「スパゲッティ化現象」(潮汐破壊)として知られるプロセスで、これまでもいくつかの星で実際にその痕跡が確認されている。

 そのためG2も当初は、いて座A*の重力によって麺のように引き伸ばされ、破壊されてしまうだろうと予想されていた。

 超大質量ブラックホールの周りを巨大な物質の雲が回っていること自体は、それほど珍しいことではない。

 実際、G2は唯一の存在ではなく、こうした天体のグループが存在する。前身となる「G1」は2005年に発見され、G2は2012年に、さらに2020年にはいくつもの同種の天体が発見されている。

 今回のERISによる近赤外線観測データは、G2について非常に詳細な軌道を描き出した。

 その結果、G2は崩壊することなく安定した軌道を保っていることが判明したのだ。

 これは、塵の雲の中に「星(恒星)」が存在し、その星がブラックホールの重力とバランスを取っている可能性が高いことを示唆している。

 銀河の中心は、単に破壊的なだけの場所ではなく、星が生き残れるほど安定した環境である可能性があるというのだ。

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いて座A*の領域 Image credit:NASA

ブラックホールの至近距離で発見された連星も安定して存在

 さらに今回の研究では、わずか1年前に発見されたばかりの連星「D9」も、安定して存在していることが示された。

 この連星は、おそらく約270万歳という若い星たちで構成されており、片方の星は太陽の約2.8倍の質量、もう片方は約0.73倍の質量を持っている。

 この2つの星は、約372日でお互いの周りをまわりながら、すぐそばにある超大質量ブラックホールの存在をあまり気にしていないかのように振る舞っている。

 発見当時のモデル計算では、D9の2つの星は強力な潮汐力(重力のばらつきによって物体を変形させたり軌道を変えたりする力)によって、100万年以内に合体して1つの巨大な星になると予想されていた。

 しかしERISによる新しいデータは、そのようなシナリオが決定的ではないことを示している。

 D9はそのままの状態で安定しているようだ。これは超大質量ブラックホールのこれほど近くで観測された、初めての連星である。

 同様に、正体が謎に包まれている天体「X3」と「X7」の分析でも、大きな変化の兆候は見られず、これまでのモデルが示唆していたよりも壊れにくい安定した軌道を回っていることがわかった。

天の川銀河のブラックホールは思ったほど怖くない?

 筆頭著者であるケルン大学のフローリアン・バイスカー氏は、今回の発見についてこう語る。

ブラックホールの至近距離で、これほど安定した天体の動きが見られるとは驚きです。いて座A*は、私たちが考えていたほど破壊的な存在ではないのかもしれません

 天の川銀河の中心は、超大質量ブラックホールと星の相互作用を研究するうえで、非常に重要な場所になるという。

 共著者であるマサリク大学のミハル・ザヤチェク氏も、「銀河中心のブラックホールは、星を破壊するだけでなく、逆に星の形成を促したり、合体させて不思議な天体を作り出したりしている可能性もあります」と指摘する。

 今後、ERISや建設中の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」による観測が進めば、過酷な宇宙で星がどう生き残るのか、その謎が解き明かされるはずだ。

References: Aanda / Uni Koeln

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この記事へのコメント 5件

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  1. なんか、、、便器にこびりついた、ウンが思い浮かんだな、

    • -3
  2. ブラックホールだから壊れないってだけかも
    引き伸ばされたチリに見える恒星群がどうなっているかは想像したくないな

    • 評価
  3. 強力な磁場で軌道を固定されてるのかもしれないね、檻のように

    • 評価
  4. これが人類が知らない重力の特性を知る新たな発見になるかも知れないなあ
    人工重力で宇宙空間でも普通に歩けたり宇宙船の推進システムとして尽きる事の無い新しいエネルギーとして利用したりも出来るかもとか自分の妄想は膨らむばかりだw

    • +1
  5. 宇宙のことを考える時は100兆歳ぐらい生きたかったと思ってまううううう

    • 評価

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