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闇を身にまとう。光の99.87%を吸収する「超黒」の布が開発される

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超黒の布は水色を囲んでいる部分に使用されている Image credit:Ryan Young/Cornell University
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 もしあなたが真の闇と同化し、その気配を完全に消し去りたいと願うなら、ただの黒い服で満足してはいけない。究極の「超黒」を身にまとうのが正解だ。

 アメリカ、コーネル大学の研究者たちが、記録上最も黒い布地を作り出した。この素材は、表面を照らそうとする光の99.87%を吸収してしまう驚異的な性質を持っている。

 これまでにも光を極限まで吸収する素材塗料は存在したが、今回は扱いやすい「布」であることが大きな特徴だ。

 オオウロコフウチョウという鳥の羽の構造をヒントに生まれたこの布地は、ファッションの世界に新たな漆黒の衝撃を与えるかもしれない。

 この研究は『Nature Communications』誌(2025年11月26日付)に掲載された。

光を罠にかけるナノ構造

 何かを「超黒」にするには、単に染料に浸して「はい、終わり」というわけにはいかない。可能な限り多くの光を捕らえるために、ナノスケール(10億分の1m単位)で素材の構造そのものを操作する必要があるからだ。

 ちなみに以前、ベンタブラックという超黒塗料で塗られた芸術作品の穴を、ただの床の絵だと勘違いした観光客が転落してしまうという事故も起きている。

 今回、コーネル大学の研究チームが使ったのは、白いメリノウールのニット生地だ。これをまず「ポリドーパミン」という物質で染め上げた。

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Image credit:Ryan Young/Cornell University

 ポリドーパミンはアミノ酸誘導体であるドーパミンを重合させた高分子材料で、簡単に言えば、人間の髪や肌を黒くしている「メラニン色素」の人工バージョンだ。

 次に、この生地を「プラズマチャンバー」というガスにエネルギーを与えてプラズマを発生させる特殊な装置に入れ、生地の表面を細かく削り、「ナノフィブリル」という、髪の毛よりもはるかに細い極小の毛羽立った繊維構造を作り出した。

 この微細な毛羽立ちが光を捕まえる罠になる。

 コーネル大学の繊維科学者でありデザイナーのハンサディ・ジャヤマハ氏は、「光は外側に反射するのではなく、基本的に微細な繊維の間を行ったり来たりし続けます。これが超黒の効果を生み出すのです」と述べている。

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未処理の白いメリノウール(e1)と、染色後にプラズマ処理を施したウール(e5〜e8)の微細構造を示した画像 Image credit:Jayamaha et al., Nat. Commun., 2025

自然の超黒保持者、オオウロコフウチョウに学ぶ

 この構造は、フウチョウ科(極楽鳥)の仲間、オオウロコフウチョウ(学名:Ptiloris magnificus)にインスピレーションを得たものだ。

 ニューギニアやオーストラリア北部に生息するこの鳥のオスは、求愛ダンスの際に玉虫色に輝く青緑色の胸を見せつけることで知られている。

 その輝く胸とは対照的に、体の他の部分は超黒の羽で覆われており、色がより際立つようになっているのだ。

 実は、コーネル大学の素材は、いくつかの点でこの鳥が持つ天然の超黒を上回っている。

 オオウロコフウチョウの羽は、正面から見たときに最も黒く見えるが、角度を変えて見ると光を反射してしまう弱点がある。

 一方で今回開発された素材は、左右60度の角度から見ても、その光吸収能力を維持している。

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オオウロコフウチョウのオス 画像クレジット:Paul Maury/Cornell Lab of Ornithology

光の吸収率は99.87%、ベンタブラックに迫る黒さと実用性

 この印象的な布地は、すでに研究室を飛び出し、ファッションの世界で実用化され始めている。

 コーネル大学でファッションデザインを専攻するゾーイ・アルバレス氏は、実際にこの素材を使って、色が徐々に濃くなっていくドレスを制作した。

そのドレスは、モデルとなったオオウロコフウチョウへの敬意を表し、鮮やかな青緑色の中心部を超黒の布地が取り囲むデザインとなっている。

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中央の水色を囲んだ部分が超黒生地。ほかの部分よりいかに黒いかがわかる Image credit:Ryan Young/Cornell University

 今回記録された「99.87%」という数値は、人類がこれまでに作り出した「最も黒い物質」の記録にはわずかに届かない。

 かつて世間を驚かせた「ベンタブラック」は、当たる光の最大99.96%を吸収すると言われている。

 また、その後にマサチューセッツ工科大学(MIT)がカーボンナノチューブを使って作った素材は、99.995%という光吸収率を記録し、ベンタブラックを上回った。

 しかし、それらトップクラスの素材は非常に高価であり、製造も難しい。

 99.87%という数値はそれらに肉薄する黒さでありながら、比較的簡単かつ低コストで大量生産が可能という点で、実用性は圧倒的に高いのだ。

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References: Cornell.edu / Eurekalert / Nature

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この記事へのコメント 31件

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    1. 染みた汗が乾いて塩が白く析出するからくっそ目立つぞ

      • +32
  1. これで衣装を作りたい人世界ナンバーワンはAdoで間違いないな

    • +2
  2. や、闇を纏いし羽…? これに逆十字が加わったらローゼ●メイデ●の水銀とu……

    • +2
  3. めっちゃ熱くなりそうだけど
    そういえば軍事利用とかはどうなんだろうね
    レーダーとかを反射しないなら強そうだけど

    • +5
    1. 過酷な環境でも安定していて剥がれないならば利用できるけどどうなんだろね?
      そうでないと、米軍のF-22とかB-2が抱えている問題と同じになる
      ただ、こういう話もあるので将来的には絶対利用されるとは思う
      https://karapaia.com/archives/519772.html

      • +2
  4. 洗ったら終わりそうw
    超高級ドレスの世界は全然分かんないけど数回着たらオワリみたいなもんなのかな

    • +12
  5. 一般装飾より先に軍関係の需要がありそう

    • +11
  6. そこまで真っ黒な服ってどんな用途があるんだろ?黒子とか?

    • +3
  7. 夜だけ透明になれる常闇マントとかできそう!

    • +5
  8. 映画館とか舞台の幕とか黒子に需要ありそう
    というか他で使うと危ないともいう

    • +6
  9. 赤外線で見るとどう見えるのかなに?
    光を屈折させ続け、たくし込んで吸収してるわけで 
    つまりほぼ全エネルギーを受け取ったと同じ
    温度が上がるわけだよね(質量にならない限りは)

    そうなると赤外線放射してるはず
    だよね

    • +9
    1. ペンギンとかカラスみたいに赤外線で虹色に光ってるやつになりそう

      • +3
  10. これを着て夜道を歩いてはいけません。
    クルマに轢かれるし
    クマにも出っくわします。

    • +4
  11. ダメだな

    AIによると 反射率が1%を超えると、人間の目には「存在が消えたような黒」には見えないらしい

    • -5
  12. 真っ黒は少しでも光のある所では意外と目立つよ
    ニンジャの装束も煤色ではなくあえて深い藍色や柿色にしていたという

    • +3
  13. 面白い素材が出来たら
    繊維業界に革命が起きるかな

    • +1
  14. この素材で全身スーツを作って街灯のない畑のあぜ道を歩けば、顔と手足だけ見えて、新しい妖怪として後世に語り継がれる…。

    なんだろ、見てみたい。

    • 評価
    1.  かつてオースマンサンコンさん(ギニア大使館の大使館員だった人、のちにタレントとしてテレビにでていた)が、闇夜でのかくれんぼの話で「僕らは暗い中で立ってるだけで、口をつむって目を閉じてれば見えないんだよ」のようなことを述べてました。 「口あけたり目あけたりすると見えるでしょ」と白い歯を見せて笑ってました

      • 評価
      1. 懐かしいなぁ…
        イッコン、ニコン、サンコーン!

        • 評価
  15. アン◯カもびっくり、黒の種類増えたんやでー!

    • -1
  16. 特級暗黒布 太黒門っていう光吸収率99.9%の布がすでにあるんですが…

    • +1
  17. アニッシュ・カプーア「これも使用権独占したろ!」

    • 評価

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