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太陽10兆個分の明るさ、超大質量ブラックホールが恒星をのみ込み記録的フレアを放つ

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(著)

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Image by Istock Elen11
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 アメリカ、カリフォルニア工科大学を中心とする国際的な天文学者チームが、超大質量ブラックホールが恒星を飲み込む瞬間をこれまでにない規模でとらえた。

 観測されたフレア(突発的な光の放出)は太陽10兆個分に相当する明るさで、数か月にわたって輝き続けていた。

 研究チームは、このブラックホールが少なくとも太陽の30倍の質量を持つ恒星を破壊し、その物質を吸収しながら強烈なエネルギーを放っていると考えている。

未だかつてない激しい閃光をとらえる

 カリフォルニア工科大学の天文学研究教授マシュー・グラハム氏を中心とした、国際研究チームは、夜空の中で突然明るくなる天体を探す観測プロジェクト「Zwicky Transient Facility(ZTF)」を行っている。

 このプロジェクトは、カリフォルニア州サンディエゴ近郊にあるパロマー天文台で運用されており、広い範囲の夜空を高性能カメラで繰り返し撮影し、わずかな光の変化も検出できる。

 最初の発見は2018年、研究チームが観測を行っていた際、これまでに見たことのないほど激しく輝く光を目撃した。

 観測はその後も地上と宇宙の複数の望遠鏡を使って続けられ、この閃光が過去のどの同種の現象よりも明るいことが明らかになった。

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パロマー天文台 Image credit:commons.wikimedia CC BY 3.0

ブラックホールが巨大な恒星を飲み込んでいた

 これほどまでにまばゆい閃光の正体は何なのか?

 研究チームは、この出来事が「潮汐崩壊現象(TDE)」によって起きた可能性が高いと考えている。

 TDEとは、恒星が超大質量ブラックホールに近づきすぎたとき、その強い重力に引き伸ばされ、細長く引き裂かれることでスパゲッティ化する天文現象のことだ。

 破壊された恒星のガスはブラックホールの周囲を回りながら渦を作り、薄い円盤状の層になる。これを「降着円盤」と呼ぶ。

 円盤の中ではガスがこすれ合い、温度が何万度にも上昇する。その高温によって光やX線が放たれる。この強烈な閃光は、まさにこの過程で生まれたと考えられている。

 今回観測された潮汐崩壊現象(TDE)は「J2245+3743」と名付けられた。

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超大質量ブラックホールが、太陽の30倍以上の質量を持つ恒星を引き裂く様子を描いた想像図。2018年にJ2245+3743が起き、太陽10兆個分の光を放つ史上最も明るいフレアとして観測された。Image credit:Caltech/R. Hurt (IPAC)

太陽の30倍の質量をもつ恒星を吸収していた

 観測の結果、このブラックホールは太陽の5億倍以上の質量を持つことがわかった。これはブラックホールそのものの大きさを示す数値である。

 地球からの距離はおよそ100億光年。宇宙の年齢が約138億年であることを考えると、これは宇宙がまだ若かった時代に起きた出来事だ。

 研究チームは、このブラックホールが少なくとも太陽の30倍の重さを持つ恒星を引き裂き、その物質を吸収したと考えている。

 その結果、太陽10兆個分に相当するフレア(突発的な光)が生まれたのだ。

 このフレアは数か月にわたって輝き続け、これまでに観測されたどの現象よりも強力だった。

 この大質量ブラックホールは「活動銀河核」と呼ばれるタイプに分類される。

 活動銀河核とは、銀河の中心にある巨大なブラックホールが周囲の物質を取り込みながら光を放つ状態のことだ。

 通常の活動銀河核は明るさの変化が小さいが、今回のフレアはその何十倍もの明るさで、一時的に銀河全体を上回るほどだった。

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Image by Istock

フレアの明るさが何度も変化

 観測データによると、このフレアの明るさは観測期間中におよそ40倍もの幅で変動していた。

 研究チームは、ブラックホールの周囲を回る降着円盤の中で、流れ込むガスの量が一定ではなかったことが原因ではないかと考えている。

 ブラックホールの近くでは、引き裂かれた恒星のガスが円盤を作りながら回転している。この円盤の中でガスが一時的に滞留し、たまった物質が一気に内側へと流れ込むと、その瞬間に強い光が放たれる。

 ガスの流れに波のようなリズムがあり、それが明るさの変化として観測されたとみられる。

 グラハム教授は、「この天体は非常に遠く、そして非常に明るい。これまで観測したどの活動銀河核とも異なる」とコメントしている。

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Image by Istock

宇宙のどこかに、まだ眠る同じ現象

 これまでに確認された潮汐崩壊現象は約100件ほどしかない。

 多くのケースでは光がブラックホールの通常活動とほとんど区別がつかないため、発見が難しい。今回のように、太陽10兆個分もの明るさを放つケースは極めてまれだ。

 研究チームは今後、ZTFが蓄積した観測データをさらに詳しく分析し、同様の現象を探す予定だ。

 また、チリのアンデス山脈に完成したヴェラ・ルービン天文台が本格稼働すれば、夜空を広範囲に高感度で観測できるようになり、新たな潮汐崩壊現象の発見が期待されている。

 こうした研究は、超大質量ブラックホールがどのように成長してきたのか、そして銀河がどのように進化してきたのかを理解するうえで、重要な手がかりとなるだろう。

この研究成果は『Nature Astronomy』(2025年11月4日付)に掲載された。

【追記】(2025/11/09)タイトルに誤りがありました。太陽10兆個分を誤って1兆個分と記載した部分を訂正して再送いたします。

References: Nature / Caltech

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この記事へのコメント 15件

コメントを書く

  1. このとんでもないエネルギーを資源として活用できる地球外文明があったとしたら…

    • +1
    1. アルミ作り放題で地球上だとリサイクルアルミで無いと
      発電所が崩壊するマクロス艦級の大型宇宙艦も、適当な
      隕石拾ってきて数百隻だろうが作れるし、デススターも
      AIやサイボーグ使えばどーんと誕生可能だ
      なのでマクロス艦級の巨大宇宙戦艦が地球の上でステルス化し
      隠れてても不思議じゃない

      • -2
  2. 数字の桁がもう文字通り天文学的。

    それにしても一枚目の画像、ガミラスの戦艦とか飛び出してきそうだな。

    • +3
  3. 地球から100億光年離れたブラックホール…の光を、今地球で観測してるって事は、光の速さで100億年かけて地球に到達してるって事で、太陽の30倍の質量の恒星が飲み込まれる時、太陽の10兆個分のフレアを放出して…
    なんか、時間も規模もバグってて混乱するわ…
    結論・想像力にも限界がある。

    • +13
  4. 太陽の10兆個分の明るさだと銀河系内は凄く明るかっただろうね
    もしその銀河系に生命がいる星があったとしても死滅するかも
    それどころか隣の銀河系も凄くまぶしいかもしれない
    天の川銀河では起きませんように

    • -1
    1. たとえ同じ銀河系内でも、全く肉眼で見えないレベルの明るさらしいです。

      宇宙ぱねえ

      • -1
  5. 現在100億光年(光行距離)先で観測される事象は100億年前に14.6億光年(物理的距離)の所で発生し、44億光年の距離を100億年かけて進み、当の天体は現在は135億光年(共動距離)彼方にある。宇宙ややこしい。

    • -5
    1. だめだ。リセットして同じ質問を繰り返すと観測距離100億光年の天体は当時84億光年の距離にあり現在236億光年と出た。馬鹿と鋏になってしまった。

      • -5
  6. 居眠りしているあいつでも
    瞼を通して目が覚める明るさだ。

    • -1
  7. 膨張率3倍を間違えた。修正したら44.4億光年。Grokに質問したら当時の距離は35億光年。使っているハッブル定数で変わるらしい。

    • -4
  8. このエネルギーを飴玉サイズに凝縮して飲み込んでみたい
    筋肉モリモリになると思う

    • -1
  9. タイトルだけ「太陽1兆個分」になってるよ

    • 評価

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