メインコンテンツにスキップ

初期宇宙に孤立した超大質量ブラックホールを発見(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)

記事の本文にスキップ

15件のコメントを見る

(著)

公開:

頂戴質量ブラックホールのイメージこの画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock
Advertisement

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で130億年前の宇宙を覗き込んだ天文学者たちは、驚くべきことに空っぽの空間で孤立したクエーサーを発見したそうだ。

 クエーサーは超大質量ブラックホールを中心に宿した活動銀河核だと考えられているが、問題はそんな怪物のような存在が誕生まもない宇宙に存在していることだ。しかもその周辺に成長をうながすエサが見当たらないのだ。

 成長までに時間がかかるはずの超大質量ブラックホールが、なぜ初期宇宙に存在するのか?

 この謎を解明するヒントを期待していた天文学者たちだが、最新の観測結果のおかげでいっそう難解な謎を突きつけられてしまったようだ。

初期宇宙に超大質量ブラックホールが存在する謎

 マサチューセッツ工科大学をはじめとする国際的チームによる今回の研究では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)により、誕生から6~7億年しか経っていない古い宇宙で形成された複数の「クエーサー」が観察された。

 宇宙最初期のものと思われるクエーサーは全部で5つ。それらの観察から明らかになったのは、そうしたクエーサー周囲の環境が驚くほど多種多様だったということだ。

 あるものの周囲は想像していた通り物質が密集した空間だったが、またあるものは何もない空っぽの空間に孤立して存在していた。

 問題は、そうした空っぽの環境で、どうやって怪物のような超大質量ブラックホールが誕生できたのかということだ。エサなどどこにもないのに、怪物はどうやって成長できたのだろう?

この画像を大きなサイズで見る
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した宇宙初期に存在するクエーサー。その中心には超大質量ブラックホールがあるとされる/Image credit: Christina Eilers/EIGER team

天文学者を悩ませる謎がさらに難解なものに

 クエーサーとは、あまりにも明るくて星のように見える遠方の天体のことだ。

 星のようには見えるが、その正体は中心に「超大質量ブラックホール」が鎮座する活動銀河の核(活動銀河核)だと考えられている。

 一般にブラックホールと呼ばれるものは、太陽の5~数十倍の重さの星が崩壊することで誕生する天体のことだ。

 一方、超大質量ブラックホールは太陽の数百万倍から数十億倍もの質量がある。

 崩壊してこれほどのブラックホールになれる恒星など存在しないため、この怪物のようなブラックホールはまた別の方法で誕生しているはずだ。

 では別の方法とはどのようなものなのか?

  もっとも有力な仮説は、ブラックホール同士の合体を通じてだんだんと大きくなったものが超大質量ブラックホールであるとするものだ。

 だが、このプロセスには10億年以上かかるとされている。

 それならば、なぜビッグバンから6~7億というごく初期の宇宙に超大質量ブラックホールが存在するのか? これは天文学者にも説明できない宇宙の大きな謎だ。

この画像を大きなサイズで見る
超大質量ブラックホールのエネルギーで輝くクエーサーのイメージ/Image credit: NASA/JPL–Caltech

 しかも今回のクエーサー(とその中にあるだろう超大質量ブラックホール)の中には、周囲にほとんど何もない空っぽの空間で孤立したものまである。

 超大質量ブラックホールが合体によって成長するのならば、それすらできない環境にあるものはどうやって巨大化できたのだろうか?

 つまり、今回の研究によって、天文学者を悩ませてきた問題はますます難問になってしまったのだ。

銀河全体の形成理論すらくつがえす可能性

 今回の研究チームは2022年8月から2023年6月にかけてJWSTが観測した画像をつなぎ合わせて、5つのクエーサーの周辺環境を調査した。

 その際には、画像に映る多様な波長の光を処理することでクエーサーの近隣銀河からやってきた光を特定し、その銀河とクエーサーとの距離が測定された。

 マサチューセッツ工科大学の物理学者アンナ・クリスティーナ・アイラーズ氏は、「5つのクエーサーの唯一の違いは、その環境がバラバラであること」だったとプレスリリースで述べている。

 たとえば、周囲に50もの銀河が存在するクエーサーがあるかと思えば、わずか2つしか銀河がないクエーサーもあった。

 その一方、大きさ・ボリューム・明るさ・宇宙の年齢といった点は、どちらのクエーサーも同じなのだ。

 この発見は、超大質量ブラックホールの成長理論どころか、銀河全体の形成についての従来の理論をくつがえす可能性があるものだ。

 現在の理解によれば、すべての銀河を俯瞰して見ると、その進化は「ダークマター」(全物質の約85%を占めるが、目に見えないとされる仮説上の物質)が織りなす巨大な網の目構造「コズミック・ウェブ」に沿って進むとされている。

この画像を大きなサイズで見る
コズミック・ウェブのイメージ imege by adobe firefly

 生まれてまもない宇宙をただようガスや塵は、この網の目の沿うように集められる。すると、コズミック・ウェブの糸が交差するところでは、物質が濃密に集まった空間が形成されるようになる。宇宙初期の銀河が形成されたのがこの場所だ。

 このことは、宇宙最初のクエーサーや超大質量ブラックホールについても言うことができる。

 それらはコズミック・ウェブから供給されるガスや塵をエサにして成長し、やがてとんでもない輝きを放つようになる…はずなのだが、先述したように、天文学者はそれがなぜごく初期の宇宙に存在しているのかうまく説明できていない。

私たちが解明したい主な謎は、ごく若い宇宙に、どうやって太陽10億個分の質量を持つブラックホールが形成されるのかということです(アイラーズ氏)

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

 そして今回の発見は、かねてから天文学者を悩ませきていたこの問題をいっそう難問にしてしまった。

 空っぽな空間にあるクエーサーは、ダークマターもコズミック・ウェブの過密空間もないことを示している可能性がある。

 だとするなら、現在の超大質量ブラックホールの成長理論では、それらの存在を説明することができない。

 もしかしたら、こうしたクエーサーは実際には塵に囲まれているのに、ただ観測できていないだけという可能性もある。

 研究チームは今後、この可能性を追求し、一見空っぽに思われる空間に隠れた銀河ないかどうか探すつもりであるそうだ。

 この研究は、『The Astrophysical Journal』(2024年10月17日付)に掲載された。

References: Astronomers detect ancient lonely quasars with murky origins | MIT News | Massachusetts Institute of Technology / James Webb Space Telescope sees lonely supermassive black hole-powered quasars in the early universe | Live Science

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 15件

コメントを書く

  1. 「ご飯が無いのにおにぎりができたみたいな…」
    この話を聞いたMCタレントのコメント

    • +3
  2. ひとつ前の宇宙の情報が受け継がれているということではないのかな?
    ペンローズもそんなこと言ってたし、「宇宙に始まりはなく、過去が無限に続いていたと判明!?」という記事もありますよ。

    • -2
    1. 宇宙の始まりもそうだけど、宇宙の終わり方もわかっていないので、「前の宇宙」なんて論がですね…
      また、複数宇宙が存在するという”マルチバース仮説”も所詮仮説でしかないので、とりあえず手に届く範囲から考えてもろうて

      • 評価
  3. 重力視差の影響を正しく考慮できていないから、だな。

    • -1
  4. 質量がいつ発生したかによるが、インフレーション直後の狭い宇宙の段階でBHが急成長したんじゃないか?
    一気に拡大したから周辺部の物質を一掃させるほどの超質量BHが多数生まれたのでは

    • -1
    1. 少し前の原始ブラックホールの話もそうだけど、原始宇宙で今の宇宙では考えられない小さいサイズのブラックホールができる仮説はある
      ただし、超巨大なブラックホールは原始宇宙では生まれないと思われていたし、成長して巨大化するにも時間が足りないから
      仮説的には存在しないサイズのブラックホールが存在しているから、「こいつは何者?」ってのが記事の話

      よーするに仮説がぶっ壊れたんで、学者さんがお喜びになられている

      • +5
  5. まあ「ダイエットしているのに痩せられない!」という奴に限って、見えないところで何か食べてるものだから

    • +5
  6. 三次元の我々が紙を曲げたら紙の上の二次元観測者からは直線距離が近くなったり遠くなったりする
    この次元は時間軸を動く四次元の干渉前提に生まれて絶えず干渉されてるんだろう
    紙の上に開いた穴がブラックホールで流出した質量が溜まり新たな三次元宇宙が作られるとみてる

    • -3
  7. 昔はエサになるものが沢山あったけれど、全て呑み込んでしまった後とか?

    • -1
  8. 出来るのに10億年以上かかる超大質量ブラックホールが、ビッグバンから6~7億年しか経ってない宇宙に存在する理由は…

    その頃の宇宙では超大質量ブラックホールが数億年で出来る条件になってたから。
    のような気がする。
    年表見たら星がポツポツ出来上がり始める時期みたいだし。

    • +1
    1. 仮説としてはアリだと思うが、証明するのは難解だな。インフレーション期の図による説明も『計算上はこうなる』を描いただけで、本当に図の流れ通りに宇宙が形成されたのかは完全には証明できてない。

      というかこの一連の流れを計算以外で証明できたのなら、その生命体は新しい宇宙を作り出すことができると言えるし、もはやソレは神なんよ

      • +1
    2. それを証明する説得力のある、且つ、現在の状態と矛盾しない仮説が無いのがネックというお話

      • +1
  9. ビッグバンがある一点から始まったこととブラックホールの特異点は無限小のある一点であることは繋がってると思うんだ!
    つまり合体に合体を繰り返して宇宙一個分程度の質量に到達したブラックホールが弾けてビッグバンが起こるのさ!
    ビッグバンの奔流に流されても残るようなやべーのが残ってたってワケよ
    …でもそれならその痕跡は宇宙背景放射やらに残ってそうでは?ブラックホールがビッグバンの奔流の障害物になったなら波紋の形に影響あるはずだもんね…ぐぬぬ…

    • 評価
    1. 宇宙背景放射はビッグバンの後の超熱かった宇宙が冷えて水素原子が生成され出した頃の痕跡だってことだから、宇宙背景放射を観測してもビッグバン自体の直接的な痕跡は見つからないんじゃないかと。(たまにニュートンとか立ち読みするレベルの個人の考えです)

      • +1
    2. 宇宙一個分程度の質量に到達したブラックホールが弾けてビッグバンが起こる
      この直前はどうなっているのか
      多分宇宙半個分ずつのブラックホール連星が宇宙の片隅にあり
      その周りの空間はぎゅうぎゅうに詰まっていると思う
      時間もなかなか進まない
      そして限界を超えて爆発したときブラックホールの重力が
      なくなって中から見ると空間が広がってインフレーションを
      起こしたように見える(外から見たら違う)
      と思います
      そうすると宇宙背景放射はすごく一様になると思います
      (中から見ると)

      • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。