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太陽の360億倍の質量をもつ、史上最大級のブラックホールを発見

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(著) (編集)

公開: (更新: )

しし座のコズミック・ホースシューで発見されたこれまでで最大級の大きさを持つブラックホールこの画像を大きなサイズで見る
史上最大級の大きさを持つブラックホール/Credit: NASA/ESA
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  イギリスのポーツマス大学の天体物理学者たちが、太陽の約360億倍という驚異的な質量を持つブラックホールを発見した。

 このブラックホールは、地球から約56億光年離れたしし座に位置する「コズミック・ホースシュー(宇宙の蹄鉄:Cosmic Horseshoe)」と呼ばれる重力レンズ系の中心にある。2つの銀河から成るこの系は、その形が馬蹄に似ていることでも知られる。

 今回の天体は、これまで知られている中でも最大級の可能性があり、宇宙で存在し得る理論的な質量の上限に迫っている。

 研究者によれば、この超巨大ブラックホールとコズミック・ホースシューは、ともに進化の最終段階に到達した姿だという。

 この研究は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2025年8月7日付)に掲載された。

宇宙最大級、360億太陽質量の怪物ブラックホール

 太陽の約360億倍という途方もない質量を持つブラックホールが、地球から約56億光年離れた銀河の中心で発見された。

 発見したのは、ポーツマス大学の天体物理学者トーマス・コレット氏らの研究チームで、このブラックホールは既知の中でも質量が上位10位に入り、史上最大である可能性もあるという。

 この巨大ブラックホールがあるのは、「コズミック・ホースシュー(Cosmic Horseshoe)」と呼ばれる天体だ。

 馬の蹄鉄のような形をしていることからその名が付いたが、実際には2つの銀河が並んだ「重力レンズ系」である。

 地球から見て手前にある銀河は非常に質量が大きく、その重力が背後の遠方銀河から届く光を曲げてしまう。

 このとき、光が銀河の周囲を回り込むように進むため、背後の天体が輪のように映し出されることがある。この現象が「アインシュタインリング」である。

 銀河や銀河団などの強い重力がレンズのように働き、背後の天体からの光の進む道を曲げることで生じる。

 時空が歪むため、光は手前の天体の周囲を回り込むように届き、結果として背後の天体がリング状の像として映し出されるのだ。

 コズミック・ホースシューの場合、完全な輪ではなく馬蹄形に見えるため、この名前が付けられた。そして今回の怪物ブラックホールは、この重力レンズを生み出している手前の銀河の中心に存在している。

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コズミック・ホースシュー。ブラックホールの近くに淡く映る中央像があり、これが今回の新発見を可能にした。 / Image credit:NASA/ESA/Tian Li(University of Portsmouth)

新たな手法で超巨大ブラックホールの測定が可能に

 今回の発見は、「重力レンズ」と「恒星運動解析(stellar kinematics)」を組み合わせた新手法の成果だ。

 恒星運動解析とは、ブラックホール周囲の恒星の速度や軌道から質量を推定する方法のこと。そのメリットは、完全に沈黙しているブラックホールでも検出できることだ。

 実は今回のブラックホールは、巨大である一方、周囲から物質を取り込んでいない休眠ブラックホールであることが確認されている。

 周囲の物質を吸い込んで強烈に輝く「クエーサー」ではないのだ。したがって、これを見つけるには、純粋にその重力の影響を手がかりにするしかなかった。

 そしてその測定によるなら、コズミック・ホースシューのブラックホールは、銀河の星々を秒速約400km、つまり光速の0.1%という驚異的な速度で動かしている。

 しかもその質量は、天の川銀河中心にある「いて座A*」の約1万倍だ。

 多くの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在するが、中でもひときわ大きい太陽の50億倍以上の質量を持つブラックホールを「ウルトラマッシブ・ブラックホール」という。

 コズミック・ホースシューはまさに「ウルトラマッシブ・ブラックホール」だ。

 「これはこれまでに発見されたブラックホールの中でも質量がトップ10に入る存在で、おそらく史上最大かもしれません」(コレット氏)

 単純な大きさだけなら、太陽の約660億倍とコズミック・ホースシューの倍の質量があるブラックホール「TON 618」がすでに見つかっている。

 距離は地球から約108億光年だが、宇宙の膨張を考慮すると現在の位置は約168億光年離れていると推定される。

 こうした距離の違いは、光の旅の時間と宇宙膨張の影響を分けて考える必要があるためだ。

 ただし、TON 618 の質量は間接的な推定に基づいており、観測データやモデルには大きな不確定要素がある。したがって、これが本当に宇宙最大のブラックホールかどうかは断定できない。

 一方で、コズミック・ホースシューのブラックホールは、重力レンズ効果と恒星運動学を組み合わせた観測により、より高い確度で質量が測定されている。

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このハッブル望遠鏡の画像は、コズミック・ホースシュー重力レンズ(中央から右側)を映している。今回発見された極超大質量ブラックホールは、オレンジ色の銀河の中心に存在する。そのはるか後方には青い銀河があり、手前のオレンジ色の銀河の巨大な質量が生み出す時空のゆがみによって、馬蹄形のリングへと歪められている Image credit: NASA / ESA / Hubble

銀河とブラックホールの最終形態

 そんな怪物ブラックホールを宿すコズミック・ホースシューも、ただの銀河ではない。銀河が進化の果てにたどり着く最終形態「化石銀河群」と呼ばれるカテゴリーに属しているのだ。

 つまり、それは重力で縛られた複数の小さな銀河が1つに融合することで形成されたと考えられている。

おそらく、元々の伴銀河にあったすべての超大質量ブラックホールが合体し、今回検出されたウルトラマッシブ・ブラックホールを形成したのでしょう

つまり私たちは銀河形成の最終形態、ならびにブラックホール形成の最終形態を目の当たりにしているのです(コレット氏)

 今回のコズミック・ホースシューのブラックホール発見につながった重力レンズ効果と恒星運動解析を使えば、宇宙のどこかにはきっとあるだろう他の沈黙したウルトラマッシブ・ブラックホールも見つけらられると期待できるそうだ。

追記(2025/08/10):一部の誤りを訂正して、補足をくわえて再送します。

References: Is this the biggest black hole ever discovered? / Astronomers Discover Most Massive Black Hole Yet / SCI

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この記事へのコメント 28件

コメントを書く

  1. うーむ。 弥勒菩薩が降臨しそうな数字ですなw

    >>コズコズミック・ホースシュー
    これって何? コズ・コズミック? それでも何のことなんですか?
    このコメント消すなら コズコズミック・ホースシューの解説もよろしく

    • -30
    1. 打ち間違えることだってあるだろ。まずオマエはその嫌味な性格を直した方がいいな。くだらんヤツだ。

      • +14
      1. この管理人打ち間違いとか多いからw upする前に読み直して確認しろよ
        って意味でカキコしたんですよw
        前も6億kmを6万kmとかw そういう打ち間違いも読み返せば訂正できると思うんですが・・。←これ割と最近
        そういう背景知らないで嫌味な性格ってwwww
        まあ 普段カラパイアに来ない人又はコメント残さないひとなんでしょうな(ㇷ゚
        ま、個人の自由なのでかまわないんやでw

        今回に限りおつむに来たんだろーし

        • -9
        1. 打ち間違いが多いと知ってるなら、単なる打ち間違いだと貴方も理解できるはずですが、必死になって長文で言い訳とは、まさに貴方こそ「普段カラパイアに来ない人又はコメント残さないひと(プ」なのでは?となりますよ。
          品性の無さを露呈するコメントはなさらないほうがよろしいかと。

          • +7
        2. 昔の2ちゃんねらーを装うなイタいクソガキが

          • +1
  2. こんなにはっきりと見えるんですね
    この像の意味するところを理解している人類すごい

    • +6
  3. 宇宙関連で56億年という数字が出てくるとすーぐ弥勒菩薩を連想してしまう
    諸星大二郎の責任です

    • +4
  4. デカぁぁぁぁぁぁい説明不要ッッッ!!!
    嘘ですごめんなさい説明は下さい!

    • +5
  5. もう取り上げられてたか、一時期銀河系より大きい惑星か?常識を打ち破った!と言われてたけど休眠状態のBHだから強い重力変動有ったのね、納得
    それにしても360億倍は想像出来ない、太陽系外縁部の宇宙フィラメントも発見されたし今年は宇宙史にとって吉報多いね

    • +8
  6. 最終形態と言われているこの銀河とブラックホールも、未来の新手法による新たな発見で鼻で笑う程の小物になりかねないんだろうな、と妄想。

    • +4
  7. 食べるのを止めたブラックホールか。
    それでも近づいたら重力でパスタ状になるんかな?

    • +4
    1. 食べるのを止めたって言うのは単に吸い込める範囲内の物質がなくなった状態というだけだから、範囲内に物質が入ってくれば何だろうと吸い込むよ。

      • +12
  8. 自分を中心に光の速度分だけ周囲が遅れているのって地味にヤバいな
    今この時を認識しているのは自分だけってな

    • +4
  9. 1000億倍のフェニックスAさんがいるから…!

    • +1
  10.  『銀河が進化の果てにたどり着く最終形態「化石銀河群」』ってのがピンとこないです。 遠くの銀河は過去に放った光が見えてるわけですよね。 つまり、宇宙全体の年齢が 138 億年として、 56 億光年かなたならそれは宇宙ができて 82 億年当時の姿でもあるといえます。 私らの周辺の銀河よりもかなり早く進化して最終形態にたどり着いちゃってるってことなのかな? この辺、コメントする人の中に詳しい人が潜んでいそうで解説期待しちゃいます 😊
     しかし、理論上の上限に迫っているというのもすごいことできっとその上限を超えるブラックホールが発見されて理論がひっくり返り、また新しい理論ができるのかなと……

    • 評価
    1. 銀河は合体を繰り返すことで渦巻銀河から楕円銀河へ進化するとされてるけど
      これは銀河群の中心部など銀河の密度が高い領域で早く進むので
      最終形態にもより早く到達してしまう
      もちろん「最終形態」というのも現在見つかってる中では、という話で
      観測が進めば更に先の形態も発見されるかも知れない

      なお「化石銀河群」という名前は、銀河の合体の過程で
      銀河を包むように分布する低密度の領域「ハロー」が取り残されて
      合体前の銀河の名残りを留めていることから来ているそう
      (合体は引力の強い高密度領域で早く進み、引力の弱い低密度領域は遅れる為)

      • +4
      1. ありがてぇ!!
        こうして巨視的な視点で見ると銀河ってスライムみたいな感じで動くんだなあと想像できて面白い

        • 評価
  11. 毎度この手の話はスケールが大きすぎるのと、遠い宇宙空間でのことなのでSF映画みたいで現実感がないというかなんというか・・・・

    • +1
  12. >だがTON 618の現在の位置は地球から約182億光年も離れており、
     
    もしかして108億光年の間違いではないかな?
    182億光年だと人類の未知の世界へ行ってしまう

    • -1
  13. 吸い込める範囲内のものを全部吸い込み尽くした結果、こんなにでかくなっちゃったのかねえ…

    • +3
  14. 「単純な大きさだけなら、太陽の約660億倍とコズミック・ホースシューの倍の質量があるブラックホール「TON 618」がすでに見つかっている。

     既知のブラックホールには、太陽の約660億倍の質量を持つとされる「TON 618」がある。」

    なんか、ほぼ同じ事を、続けて繰り返し書いてる?
    どちらの表現にするか検討していて、消し忘れたのかな。

    • 評価
  15. 休眠状態かならインターステラーみたいに
    観測には最適なブラックホールだな

    • 評価
  16. あ……やめて!脳のキャパオーバーで狂乱します!

    • 評価

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