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史上最大規模のブラックホールの合体を検出、太陽の225倍の質量を持つモンスターが誕生

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(著) (編集)

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合体するブラックホール/ Image credit: Caltech-LIGO
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 日本、アメリカ、イタリアの強力な重力波検出器によって、これまででもっとも質量の大きいブラックホール同士の合体の痕跡が観測された。

 アメリカの「LIGO(ライゴ)」、イタリアの「Virgo(ヴィルゴ)」、そして日本の「KAGRA(かぐら)」が観測したのは、太陽の約103倍と137倍という2つのブラックホールが激突し、太陽の225倍の質量を持つ1つの巨大ブラックホールへと進化した痕跡だ。

 これは、重力波によって合体の瞬間を直接捉えることができたブラックホールとしてはモンスター級であり、史上最大のものとなる。

歴史を塗り替える重力波の観測に成功

 アメリカのレーザー干渉計重力波天文台「LIGO(ライゴ)」は、アインシュタインが予言した時空の波紋「重力波」を検出するためにワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンに建設された大規模な施設だ。

 史上初めて重力波の検出に成功したのは2015年のこと。それ以来、イタリアの重力波検出機「Virgo」、日本の重力波望遠鏡「KAGRA」と連携し、300を超える重力波を観測してきた。

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米国ワシントン州ハンフォードのLIGO(左)とルイジアナ州リビングストンのLIGO(右)

 この時空の波紋は、ブラックホール同士の合体など、宇宙で起きた大規模な現象によって発生すると考えられている。

 中でも2021年に検出された、2つのブラックホールの合体によって発生した重力波信号「GW190521」により、太陽の140倍の質量を持つブラックホールが誕生したと推定されるている。

 今回の観測はLIGOにとって四度目となるもので、じつに200ものブラックホール合体の痕跡が検出されている。

 だがひときわ飛び抜けていたのが、「GW231123」と呼ばれる重力波だ。

 2023年11月23日に検出された重力波は、太陽質量のそれぞれ103倍と137倍のブラックホールが合体して発生したもので、その結果誕生したブラックホールの質量は太陽の225倍、それまでの記録を大きく凌駕する。

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Marius Stancu from Pixabay

常識をくつがえす高速スピンと質量

 この合体を引き起こしたブラックホールは、ただ重たいというだけでなく、きわめて高速で回転していることから、重力波検出技術と理論モデルの双方の限界を試すものでもある。

これらのブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論で許される自転速度の限界近くまで回転しているようです

信号の解析と解釈はきわめて難しく、理論モデルを発展させるうえで格好の研究対象となります(英国ポーツマス大学 チャーリー・ホイ氏)

 それゆえに予想外の事実が浮かび上がってくる可能性もある。

 GW231123を発生させたのはブラックホールの合体という説がもっとも有力だが、もっと複雑な現象であったとしてもおかしくはない。

このような大質量ブラックホールは、標準的な恒星の進化モデルでは説明がつきません

そのため、この2つのブラックホールは、それより以前に小さなブラックホール同士が合体したことで形成された可能性もあります(英国カーディフ大学のマーク・ハンナム氏)

 GW231123からはどんな宇宙の真実が明らかになるのか? その本当の意味が理解されるまでには数年がかかると見込まれている。

 今回の観測結果は、英国グラスゴーで2025年7月14日~18日に開催される『24th International Conference on General Relativity and Gravitation』および『16th Edoardo Amaldi Conference on Gravitational Waves』の合同イベントで発表される。

なぜこれが「モンスター級」なのか?

 今回の「太陽の225倍」という数字を見て、「いて座A*(太陽の約400万倍)」や「TON 618(太陽の約660億倍)」といった超大質量ブラックホールと比較して、全然モンスター級じゃないじゃないか、と思うかもしれない。

 確かに、宇宙には桁違いの質量を持つモンスターブラックホールたちが存在する。

 しかし、天文学の視点で見ると、この225倍がブラックホールが「モンスター級」と呼ばれているのには理由がある。

1. 宇宙の「ミッシングリンク」の発見

 天文学では、ブラックホールをその重さ(質量)によって大きく3つに分類している。

  • 恒星質量ブラックホール: 太陽の数倍〜数十倍。重い星が一生を終えて爆発した後にできる、宇宙では「一般的」なサイズ。
  • 中間質量ブラックホール: 太陽の100倍〜数万倍。今回の225倍はココ
  • 超大質量ブラックホール: 太陽の数十万倍〜数千億倍。銀河の中心に居座る別格の存在(いて座A*やTON 618はココ)。

 実は、宇宙では「普通のサイズ」と「超巨大サイズ」は見つかるのに、その中間にあたる「中間質量」は、なぜかほとんど見つからない「ミッシングリンク(失われた鎖)」だった。

 太陽の225倍という質量は、まさにこの空白の領域に踏み込んだ、極めて珍しく、かつ重要な発見なのである。

2. 「単なる星の死」では作れない大きさ

 もう一つの驚きは、このブラックホールが「どうやってできたか」という点だ。

 通常の星が一生を終えて崩壊する場合、物理的な理論上、太陽の100倍を超えるようなブラックホールがいきなり生まれることはないと考えられている。

 つまり、225倍という質量は、「小さなブラックホール同士が何度も合体を繰り返して、エリートのように勝ち上がってきた」証拠なのだ。

 重力波望遠鏡は、その「最強への進化の瞬間」を、世界で初めて生中継で捉えることに成功したのである。

3. 「重力波」という手段での史上最大

 「いて座A*」などは、周囲のガスが放つ「光や電波」を望遠鏡で見て質量を測定している。それに対し、今回の発見は「重力波」によるものだ。

 現在の重力波望遠鏡(LIGOやKAGRA)は、いわば「高い音を聞くのが得意な耳」のようなもので、超大質量ブラックホールが放つ「低すぎる重力波」を聞くことはできない。

 つまり、今回の225倍は「重力波という観測手段で、合体の瞬間をナマで捉えることができた記録としては、文句なしの史上最大」なのである。

 「ラスボス級」の超大質量ブラックホールに比べれば数字は小さく見えるかもしれない。

 しかし、これまで誰も見たことがなかった「中間階級の王」が誕生した瞬間を捉えたという意味で、今回の225倍はまさに規格外のモンスターなのだ。

References: Caltech

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この記事へのコメント 11件

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  1. >太陽質量のそれぞれ103倍と137倍のブラックホールが合体して発生したもので、その結果誕生したブラックホールの質量は太陽の225倍

    太陽15個分の質量は衝撃でどこかへ吹き飛ばされたんだろうか?

    • 評価
    1. その質量分のエネルギーが重力波になったんだよ

      • +8
      1. つまり質量がエネルギーに変換されれば
        ブラックホールから脱出できるわけか
        と言うか太陽15個分の質量エネルギーとかとんでもないね

        • 評価
  2. 御存じかもしれないが 日本の「KAGRA」は元日の能登地震で影響を受け、いまも調整中
    早く直さないと共同研究に遅れが出てしまう
    がんばれ KAGRA がんばれ 研究チーム がんばれ 工事の人

    • +28
  3. 宇宙の話なのに太陽の225倍って控えめな数字だな

    • +5
    1. 銀河中心のブラックホールが恒星ブラックホールを飲み込んでも池ポチャで重力波はとても弱いものになります
      だから、同じような質量の恒星ブラックホール同士をブンブン振り回す合体が検出されているわけです
      恒星ブラックホールになるには太陽の30倍以上の質量が必要らしく
      できたブラックホールは太陽の3倍以上の質量と小さくなる
      それに比べてとても大きいものが2つ近くにあるってのが不思議なんだよね
      小さな銀河中心のブラックホール同士の合体かもって考えても
      観測できる頻度で起こることとは思えない

      • +3
    2.  記事中の「太陽質量のそれぞれ103倍と137倍のブラックホールが合体」ってのもミソかも。 サイズに大きな差があると小さいほうが公転フライバイで弾き飛ばされちゃいそう。 ほぼ双子みたいな近いサイズだったから互いに引き合って収束みたいな感じでくっついちゃったんじゃないかなと。 角運動量を考えると最後の互いの公転速度とブラックホールの持つ自転速度からすごい遠心力が発生して、もしかすると事象の地平の位置が変わって、こちらの世界とあちらの世界を往復するみたいな地点が発生したのではないかと妄想します。 そうするとブラックホールからの脱出ができるかも?なんてね。 研究者はそれくらい計算してるでしょうけど……

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  4. 疲れてるからかサムネがアザラシの顔に空目した

    • +1
    1. 色は違うがどうしても豚の鼻にしか見えなかった

      • 評価

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