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仮説の天体「ブラックホール星」を初めて単独で観測。巨大な水素ガスが包み込んでいた

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Image credit:Jose-Luis Olivares, MIT
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 初期宇宙でジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた謎の赤い点が、仮説上の天体「ブラックホール星」である可能性が高いことがわかった。

 ブラックホール星は、中心にあるブラックホールを巨大なガスが包み込み、恒星のように輝く天体だ。

 2025年に存在が提唱されたものの、これまで単独で観測された例はなかったが、アメリカのマサチューセッツ工科大学などの天文学者チームが、シミュレーションを用いて観測データを分析し、この赤い点(Little Red Dots:LRD)の正体に迫った。

 この研究は、学術誌『Nature』(2026年8月12日付)で掲載された。

参考文献:

初期宇宙で発見された謎の赤い点

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影する深宇宙の画像には、謎の「小さな赤い点(Little Red Dots:LRD)」がいくつも写り込んでいる。

 初期宇宙のあちこちに存在するのに、現代の宇宙では姿を消している天体だ。天文学者たちは長い間、その正体をめぐって議論を続けてきた。

 マサチューセッツ工科大学などの天文学者チームは、2023年に撮影された観測画像の中から、ひときわ明るく輝くLRDのひとつに注目した。

 チームが2024年12月にこの天体の光を詳しく分析すると、ビッグバンから6億6000万年後の初期宇宙から届いた光であることがわかった。

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による小さな赤い点(Little Red Dots)Image credit: adim Rusakov/CEERS/PRIMER

LRDは高密度な水素の繭に包まれていた

 宇宙で非常に赤い天体が観測された場合、通常はすすや灰のような塵に囲まれていると推測される。塵のベールを通すことで、天体が本来の色よりも赤く見えるためだ。

 だがこのLRDの光は違った。全体としては極めて明るいのに、ある波長より短い光だけが完全に消えていた。

 さらにこの光を調べると、含まれている元素はほぼ水素とヘリウムだけだった。

 研究チームがシミュレーションを行った結果、塵がなくても、極めて高密度の水素の幕があれば赤い色を再現できることが判明した。

 薄く漂う星間ガスではなく、巨大な星の表面のように分厚い水素の繭(まゆ)が、中心にあるエネルギー源を覆い隠している状態である。

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した謎の赤い点(LRD) Image credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Dale Kocevski (Colby College)

星ではありえないエネルギーを放つ未知の天体

 水素の繭に包まれた姿から、この天体は巨大な星と思われた。だが光を詳しく調べると、星ではありえない特徴が二つ見つかった。

 一つは、光が急に消える段差だ。これはバルマー不連続(バルマーブレイク)と呼ばれ、星の表面をおおうガスが光を吸収することで生まれる。

 夜空で明るく輝くこと座のベガにも同じ段差が見られる。しかし星がどれだけ集まっても、この段差の強さは3を超えられない。

 特殊な星ばかりを集めても5には届かない。観測された値は7.7で、星では説明のつかない深さだった。

 もう一つは明るさである。この天体は知られているどんな星よりもはるかに明る

 く、研究者はその差を1000億倍と表現している。星の原動力である核融合反応では、これほど莫大なエネルギーを作り出せない。星の形をしていながら、星の仕組みでは光ることができない天体だった。

仮説の天体「ブラックホール星」である可能性

 核融合以外で、これほどのエネルギーを生み出せるものはブラックホールしかない。

 研究チームは、この天体の中心に物質を飲み込む活発なブラックホールが存在するというシナリオでシミュレーションを実行した。

 すると、太陽の100万倍から1000万倍の質量を持つブラックホールを中心に置いた場合に、観測データとよく一致した。

 この姿は、2025年に提唱されたブラックホール星という仮説の天体そのものだった。中心の超大質量ブラックホールが周囲のガスを飲み込みながらエネルギー

 を放ち、それを包む巨大なガスが恒星のように輝く。核融合で光る通常の恒星とは、まったく異なる仕組みである。

 これまでブラックホール星は、銀河の光に埋もれた状態でしか観測されていなかった。

 今回の天体は周囲の銀河の光をかき消すほど明るかったため、混じり気のないブラックホール星の光だけを観測できた。研究チームはこの天体「にMoM-BH*-1」という名前を与えている。ブラックホール星の第1号を意味する記号だ。

無数のLRDもブラックホール星かもしれない

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した無数のLRDも、銀河の中に埋め込まれたブラックホール星として矛盾なく説明できると研究チームは考えている。

 ただし研究チーム自身が、今回のモデルはきわめて単純化したものだと注意をうながしている。

 とくにブラックホールの質量は、光の読み取り方しだいで実際より大きく見積もられている可能性がある。

 初期宇宙には、太陽の何十億倍もの質量を持つ巨大なブラックホールが存在している。それがどうやって短期間で成長したのかは、いまだ解明されていない。

 ブラックホール星は、その成長過程の初期段階を示す存在かもしれない。

References: DOI 10.1038/s41586-026-10846-4

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