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パタゴニアの巨人伝説、パタゴンの真実

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(著)

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1840年代に描かれた戦闘服をまとったパタゴンの族長とパタゴン族 public domain / Wikimedia
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 16世紀から18世紀にかけて、南米大陸の南端には人間の2倍もの大きさの巨人が住んでいるという伝説がヨーロッパで広く信じられていた。

 1519年にスペインを出発し、人類史上初めて世界一周を果たしたマゼラン探検隊が現地で出会った先住民を「パタゴン(パタゴニアの巨人)」と呼び、土産話としてほうぼうで話して回ったのが発端だ。

 猛烈な風が吹き荒れる果てしない平原に住むというパタゴンの物語は、ヨーロッパの人々を熱狂させた。

 探検家たちが巨人と語るパタゴンの正体は何だったのだろうか。

マゼラン探検隊が遭遇した巨人「パタゴン」は先住民

1519年、スペイン王の信任を得てスペイン船5隻の艦隊を率いてスペイン・セビリアを出発した、ポルトガル出身のフェルディナンド・マゼランが率いる探検隊は、1520年、南アメリカ大陸の現在のアルゼンチン沿岸に錨を下ろした。

 マゼラン探検隊に同行していたイタリア人の記録係であるアントニオ・ピガフェッタは、ヨーロッパ人が驚くほど背が高い地元の先住民との出会いを書き残している。

 ピガフェッタの記録によれば、スペイン人の中で最も背の高い男でさえ、その先住民の腰にようやく届く程度だったという。

 マゼランの部下たちは、この途方もなく大きな体をした人々を「パタゴン(パタゴニアの巨人)」と呼んだ。

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パタゴニアの「巨人女性」にパンを差し出すイギリス人船員。ジョン・バイロンの航海記イタリア語版(1768年)の口絵

ヨーロッパ中に広まったパタゴニアの巨人伝説

 「パタゴン」という言葉の起源ははっきりとはわかっていない。

 ピガフェッタの時代には、「足」を意味する「pata」に由来すると推測され、そこから「パタゴニア」は「大きな足を持つ人々の土地」を意味すると解釈されていた。

 また、当時スペインで流行していた小説に登場する巨人のキャラクター「パタゴン」から名付けられたという説もある。

 年月が経つにつれて「パタゴン」という名前は人々だけでなくその広大な地域全体に付けられるようになり、この地は「パタゴニア」として知られるようになった。

 普通の人間をはるかに見下ろすほどの巨人の物語はヨーロッパの人々の想像力を掻き立て、瞬く間に広まっていった。

 猛烈な風が吹き荒れる果てしない平原には巨人が住んでいるという、歴史上最も長く語り継がれる地理的な神話が誕生したのだ。

実際にはそこまで大きくなかった

 その後パタゴニアを訪れた探検家たちによって、巨人の身長は徐々に下方修正されていく。

 1628年、イギリスの探検家フランシス・ドレーク卿の甥が、叔父の世界周航について詳細に記した書物を出版した。

 甥のドレークは、パタゴニアの先住民は乗組員が見たどのヨーロッパ人よりもはるかに背が高かったものの、マゼランの乗組員が大きさを誇張していたと指摘した。

 そしてドレークは巨人の身長を10フィート(約304cm)から7.5フィート(約228cm)へと引き下げている。

 それでも巨人に関する噂は18世紀まで続いた。

 1766年、世界周航から帰還したイギリスのジョン・バイロン艦長の船員たちが、パタゴニアで身長9フィート(約274cm)の先住民を見たという噂を広めた。

 だが1773年にこの航海の公式記録が出版された際、バイロン艦長はこの神話をきっぱりと否定した。

 バイロン艦長はパタゴンたちの大きな身長について言及しつつも、実際の身長は6フィート6インチ(約198cm)であったと記録している。

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1840年代にフランスのデュモンデュルビルの船隊がパタゴニアを訪れたときに描かれたパタゴンたちの姿を描いた絵 public domain / Wikimedia

パタゴンの正体は先住民「テウェルチェ族」

 学者たちはヨーロッパの探検家たちが遭遇した巨人の正体について、古くからパタゴニア地方に住んでいた「テウェルチェ族」という先住民族だったと考えている。

 テウェルチェ族は実際に、16世紀の平均的なヨーロッパ人よりも背が高かった。

 当時の多くのヨーロッパ人の身長が約167cmであったのに対し、テウェルチェ族の男性は身長が182cmを超えることもあった。

 先住民の頑強な体つきや動物の皮で作られた分厚いマント、そして船乗りたちが自分たちの冒険を大げさに語る傾向が相まって、外国の訪問者たちには驚くほど巨大に見えたのである。

 250年もの間ヨーロッパで信じられてきたパタゴニアの巨人伝説は、少し背の高い先住民の姿を探検家たちが誇張して伝えたものだったという歴史の真実として幕を閉じた。

 話が人から人へ伝わるときに。尾びれ背びれがついたりして、どんどん誇張されていくものだけど、昔から人間の本質は変わっていないようだね。

 ネットがない時代だから、一度広まっちゃうと、後から修正されても全員に浸透するまで時間もかかるだろうしね。

References: Patagonian Giants / Patagons / Patagonian Giants and Baroness Hyde de Neuville's Iroquois Drawings | JSTOR

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