この画像を大きなサイズで見る約1800年前の古代ローマ時代、現代の私たちと同じように愛する動物に名前をつけ、その姿を永遠に残そうとした人物がいた。
トルコのエーゲ海沿岸にある古代都市アドラミュッテイオンの遺跡で、名前が刻まれた愛猫「エメラルド」と愛犬「オケアノス」のモザイク画の床タイルが発見されたのだ。
トルコのミマール・スィナン芸術大学の研究チームによる発掘調査によると、このモザイク画が発見されたのは、裕福な人物の邸宅跡だという。
当時の人々が身近な動物に深い愛情を注いでいた事実を伝える歴史的な発見である。
この研究成果は 『Uludağ Üniversitesi Fen-Edebiyat Fakültesi Sosyal Bilimler Dergisi』誌(2026年5月1日付)に掲載された。
古代都市の邸宅跡から色鮮やかなモザイク画が発見される
トルコのエーゲ海沿岸に位置する古代都市アドラミュッテイオンの遺跡で、古代ローマ時代に建てられた邸宅跡から、色鮮やかな床のモザイク画が発見された。
発掘を指揮したトルコのミマール・スィナン芸術大学のヒュセイン・オズゲン氏によると、この邸宅は2世紀後半から3世紀ごろに建てられたという。
当時のアドラミュッテイオンは貿易の拠点として栄えた港町であり、邸宅の持ち主はかなり裕福な人物だったと考えられる。
モザイクで舗装された3つのホールや、トイレにつながっていたとみられる排水設備などが備わっていた。
この画像を大きなサイズで見るメドゥーサなどの幻獣とともに描かれた動物たち
邸宅のメインホールとみられる部屋の床には、約5×3.6mの巨大なモザイク画が一面に広がっていた。白や黒、赤、青、緑など、色とりどりのタイルを使って15のパネルが描かれている。
パネルの中心に配置されているのは、ギリシャ神話に登場する髪の毛が蛇の怪物メドゥーサとみられる姿である。
さらに翼の生えた馬のペガサスのような幻獣や、鳥、魚などが周囲を取り囲むようにデザインされていた。
翼の生えた馬は、紀元前4世紀のアドラミュッテイオンの貨幣に使われていた図柄と同じもので、都市の象徴だった。
この見事なモザイク画のなかでもひときわ目を引くのは、邸宅の住人が実際に可愛がっていたと思われる2匹の動物が描かれていることである。
この画像を大きなサイズで見る青緑のクッションに座る猫と走る犬
モザイクタイルの中には、青緑色のクッションの上にちょこんと座る猫が描かれている。
猫の頭上にはギリシャ文字で「ズマラグディン」と記されていた。これはエメラルドを意味する言葉である。
ふかふかのクッションでくつろぐ様子から、エメラルドが野良猫ではなく、大切に飼われていたペットであることがうかがえる。
エメラルドという名前から、飼い主は古代エジプトとつながりを持っていた可能性が高いという。
当時エメラルドの採掘の中心地はローマの支配下にあったエジプトで、この人物はエジプトと交易していた商人だったのかもしれない。
古代エジプトでは猫はとても愛されていた。
この画像を大きなサイズで見るいっぽう、部屋の右側のパネルには走っている犬の姿が描かれている。
犬の斜め上には、海を意味する「オケアノス」という名前が記されていた。海に面した港町ならではのネーミングである。
この画像を大きなサイズで見る古代ローマの人々も身近な動物に深い愛情を注いでいた
古代ローマのモザイク画に、動物の名前までわざわざ記されるケースはとても珍しい。
同じ床に描かれた15のパネルのうち、名前を持つ動物は、エメラルドとオケアノスだけである。
オズゲン氏は、2匹が邸宅の住人にとって特別な存在だったと考えている。
2匹は現代でいうペットのような存在であり、家を象徴する大切な存在だったのだろう。
約1800年前の人々も、現代の私たちと同じように身近な動物に名前を付け、愛情を注いで生活していたようだ。
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