この画像を大きなサイズで見る トンボのオスは縄張りを守るため、空中で激しい追いかけ合いを繰り広げる。獲物を狩る時とは全く違う動きだ。
空中戦の様子を分析したイギリスの研究チームは、トンボのオスが人間の戦闘機パイロットとそっくりの戦術を使っていることを突き止めた。
相手の背後を取り合う駆け引きは、まさに空のドッグファイトだ。単純なルールから生まれる動きは、賢いドローンの開発にもヒントを与えるという。
この研究成果は『Journal of The Royal Society Interface』誌(2026年7月1日付)に掲載された。
狩りと縄張り争いで違う飛び方
トンボのオスは、繁殖のための縄張りを他のオスから守るために空中で激しい追いかけ合いを行うが、その飛び方は獲物を捕らえる時とは全く異なる。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのサミュエル・T・ファビアン氏らの研究チームは、縄張り争いの飛行を支配する仕組みを解明した。
獲物を追う場合と、オス同士が縄張りを巡って争う場合とでは、飛行の意味が根本的に違う。
獲物を追う時は、追う側と逃げる側の役割がはっきり分かれており、それぞれ異なる動きをする。しかしオス同士の争いでは、双方が対等に相手を追いかけ合う形になる。
研究チームは対等な追いかけ合いという特徴に着目し、昆虫や猛禽類の飛行軌跡を調べることで、飛行を支配するルールについて手がかりが得られると考えた。
この画像を大きなサイズで見るベニトンボのオスの飛行軌跡を立体カメラで再現
研究対象に選ばれたのは、ベニトンボ(Trithemis aurora)というトンボだ。トンボ目トンボ科ベニトンボ属に属し、成熟したオスは全身が赤紫色に染まるのが特徴だ。
もともと台湾以南や東南アジアなど南方に多く生息する種で、日本では1954年に鹿児島県で初めて記録された。
その後、温暖化の影響からか生息域が北へ広がり、現在は四国や本州の一部でも確認されている。
この画像を大きなサイズで見るオスは激しく縄張りを主張する性質を持ち、1つの池の周りに複数のオスが集まって、それぞれが選んだ止まり場を守ろうとする。
加えて研究チームにとっては体色が目立つため、飛行の様子を追跡しやすいという利点もあった。
これまでのトンボの行動研究の多くは、目で見た観察や1台のカメラによる撮影に頼っていた。
今回の研究チームは、2台のカメラをシャッターのタイミングまで同期させた携帯型の立体撮影装置を使い、野外でトンボ同士のやり取りをカラーと白黒の両方で記録した。
そのうえで、オス同士のペアによる飛行の軌跡を102件、立体的な動きとして再現した。
比較のため、獲物を捕らえる際の飛行軌跡も9件記録している。得られた膨大なデータをもとに、飛行行動を支配するルールをモデル化した。
この画像を大きなサイズで見る戦闘機と同じ「尻尾取り」の攻防
分析の結果、獲物を狩る時と縄張りを争う時とでは、飛び方に明確な違いがあることが分かった。
狩りの場面では、トンボは獲物の下方から近づいていく。
この画像を大きなサイズで見るそのため獲物は空を背景にシルエットとして見えることが多い。
一方、オス同士の争いでは、飛行の軌跡が複雑に入り組み、背景に植物や地面が写り込む状況で行われることが多かった。
さらに研究チームは、オストンボの空中戦の動きが、人間の戦闘機パイロットの戦術とかなり似ていることを見つけた。
この画像を大きなサイズで見るオストンボも戦闘機のパイロットも、相手の背後という有利な位置を奪い合っている。
パイロットが使う下向きの急旋回や、らせん状の高G(高い加速度がかかる)機動と、空中戦を行うトンボの飛び方はよく似ているという。
研究チームは、戦術が似る理由について、両者の感覚器官(センサー)の向きに注目している。
戦闘機は前方を向いたレーダーと武器システムを備えている。
トンボもまた、前方に偏った視覚を持ち、目の前にいる標的を検知するのに適した体のつくりをしており、そうした共通点から、似たような戦術を生み出すことになったのではないか、と考察する。
こうした戦術の共通点を踏まえると、オストンボの空中戦は、単なる追いかけっこではなく、有利な位置取りを競い合う駆け引きだといえる。
獲物を捕まえる時のように相手を捕捉しようとするのではなく、相手より優位な位置を保とうとする。その目的が、旋回やらせん状の飛行パターンを生み、「追う側」と「逃げる側」の役割を何度も入れ替える形になった。
この画像を大きなサイズで見る6Gの旋回と省エネな滑空術
研究では他にも興味深い発見があった。
実はトンボは、旋回時に重力の6倍の力(6G)がかかる急旋回を行える力を持っている。
一方、戦闘機の場合、宙返りなど基本的な機動でも6G前後の力がかかり、実際の空中戦ではこれを上回る9G以上の力がかかることもあるとされる。
つまり体長数cmのトンボは、戦闘機パイロットに匹敵する、あるいはそれに迫るGに耐えながら飛んでいることになる。
それほどの力があるにもかかわらず、普段のトンボは最高速度まで加速することを避け、機動性を優先していた。
最も激しい争いの最中でも、少なくとも3分の1の時間は羽ばたかずに滑空し、急な方向転換を行う時だけ、羽ばたきを使っていた。
この画像を大きなサイズで見るこうした動きはエネルギーを節約するためか、あるいは滑空している方が相手を目で追いやすいためではないかと研究チームは推測する。
高度の使い方に戦闘機との違い
とはいえ、トンボと戦闘機パイロットの飛び方には、大きく異なる点も1つ見つかっている。
戦闘機のパイロットは、高度を格闘戦の最中に急降下して速度に変えられる、いわば”エネルギーの蓄え”として扱う。同じ速度で飛んでいるなら、相手より高い位置にいる方が有利になる、という考え方だ。
しかしトンボは、高度をエネルギーの蓄えとしては使っていないようだ。むしろ相手よりわずかに低い位置を好んで取っていた。
たとえその位置を取っても、速度で優位に立てるわけではない。だが、相手より低い位置の方が、相手の姿を視覚的に捉えやすい可能性がある。
この画像を大きなサイズで見るこうした視覚に基づく単純なルールをもとに、研究チームは今後、複雑な計算を使わずに飛行できるドローンの開発につなげたいとしている。
いわゆる生物模倣技術(バイオミメティクス)の分野の一種となりそうだが、生き物の限られた感覚と単純な判断基準から生まれる高度な動きには私たち人間界の先進技術を高めるヒントがまだまだ眠っていそうだ。
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References: Dragonflies maneuver like fighter pilots - Ars Technica / doi.org/10.1098/rsif.2026.0131

















位置取りに関してトンボの後ろのやや下はおそらく見えない場所(死角)なんじゃないかなと想像します。 体重も推進力に比して軽いから高度はあまり意味をなさいせいではないかと愚考します。 微重力下、たいていは宇宙での視覚に頼った戦闘がこんな感じになるんじゃないかななどと妄想しました。 ってことは戦闘機が重力にたいして十分な推進力を持った時トンボみたいなドッグファイトになるかも? 今の飛行機が 9G とかに制限しているのは人が耐えられないからで部品として一番弱いからですね。 だから設計もそれくらいにしてあるはず。 記憶違いでなければエアレース(飛行機のジムカーナみたいなの)では 12G を超えると失格だったと思います
戦闘機パイロット…なんか急にトンボがかっこよく見えてきた…トゥンク
トンボの動き、スローで見たらこんなにカッコよかったのか・・・
まさに戦うために生まれた生き物って感じ
子供の頃ヤゴ取りしたことあるが、ヤゴの比率として
オニヤンマとギンヤンマの割合はそんなに違わないように感じたが、
成虫のトンボの割合は圧倒的にオニヤンマが多かった感じがする。
実際にギンヤンマは人生で一回した取ったことがない、、
学校の廊下に入り込んだやつを一回だけ。
オニヤンマは結構取れるのに、、住んでる場所の違い?
紅の蜻蛉
AWACS「モビウス1、エンゲージ」