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コスタリカの森の奥では、野生動物たちが同じ木を共同トイレとして使っていた

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Image credit: Michael metzger
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 中米コスタリカの高地にある雲や霧で覆われた深い森の中で、種の違った野生動物たちが、特定の木の枝を「共同トイレ」として利用しているという興味深い事実が明らかとなった。

 米北アリゾナ大学の研究チームの研究調査によると、ナマケモノやキンカジューなど17種類もの哺乳類が「絞め殺しの木」と呼ばれるイチジク属の樹木の同じ場所をトイレとして使用しているという。

 なぜ多種多様な動物たちが、同じ場所をトイレとして使用しているのか?今回の研究ではその謎に迫っている。

 この研究成果は『Ecology and Evolution』誌(2026年3月16日付)に掲載された。

参考文献:

コスタリカの雲霧林で見つかった野生動物たちの共同トイレ

 標高約1500mに位置する、コスタリカのモンテベルデ雲霧林は、ふもとから吹き上がる湿った空気が冷やされ、常に霧や雲が立ち込めている幻想的な世界が広がる森だ。

 この森で、北アリゾナ大学の研究チームは、高い木の枝の上に作られた、野生動物たちの共同トイレを発見した。

 本来、野生動物は自分の存在を隠すためトイレの場所は慎重になるが、この森では17種類もの異なる哺乳類たちが、同じ木の同じ場所で足していたのである。

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コスタリカの雲霧林 Image by Istock efenzi

絞め殺しの木が安定感のあるトイレに

 研究チームが169本の木を調査した結果、発見された11箇所の共同トイレは、すべてがクワ科イチジク属の広葉樹、「絞め殺しの木」の一種「フィクス・トゥエルクハイミイ」であることが分かった。

 「絞め殺しの木」という物騒な名前は、他の植物に巻き付き、締め付けるようにして成長する生態に由来している。

 日本では主に沖縄に生息する「ガジュマル」がその仲間として有名だ。 

 絞め殺しの木は他の木に巻き付いて成長する過程で、枝の上に土壌や落ち葉、コケが分厚く堆積する。

 これにより、樹上でありながら広く平らで安定した足場が形成されるのだ。

 実際に地面に触れることが滅多にない樹上生活をする動物にとって、不安定な枝の上で踏ん張る必要がなく、地面のように安心して用を足せる場所は、森の中でも極めて貴重な優良トイレだったのである。

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(A) 地上30mにある絞め殺しの木の共同トイレ。円は主枝の合流点にあるトイレの位置を示す。(B) 共同トイレに残された複数種のフン。1・2・3はホフマンナマケモノ、4は肉食の哺乳類のものと推測される。黄色の矢印は種不明のフン。(C) メキシコヤマアラシの新鮮なフン(カメラで排泄を確認)。(D) ホフマンナマケモノの古い糞 Image credit:Ecology and Evolution

ナマケモノは危険な地上に降りずに用を足すことができる

 この木をトイレとして利用していた哺乳類は、ホフマンナマケモノ、キンカジュー、ホエザル、ハナグマ、メキシコヤマアラシ、マーゲイなど、多彩な顔ぶれだ。

 この場所がいかに安全で利便性が高いかを示す良い例が、フタユビナマケモノ属のホフマンナマケモノである。

 彼らには排泄のために約1週間に1度だけ、わざわざ危険な地上へと降りてくる奇妙な習性がある。

 ジャガーなどの天敵から身を守る術を持たない彼らにとって、この地上への移動はまさに命がけであり、死因の半数以上がこの「トイレタイム中」に起きているとも言われている。

 しかし今回の自動撮影カメラは、少なくとも2匹のナマケモノが、地面まで降りるのを途中でやめ、この安全な枝の共同トイレで用を足す姿を記録していた。

 これはナマケモノにとって、極めて賢い選択といえる。

 死の危険が潜む地上へ降りることなく、樹上でありながらまるで地面のように安定した環境で排泄を済ませることができるからだ。

 特に子供を連れたお母さんナマケモノにとって、ジャガーなど地上の天敵の牙が届かないこの場所は、一族の命を守るための絶対的な聖域だったのである。

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共同トイレを訪れた哺乳類たちの動画静止画。 (A) コモンオポッサム (Didelphis marsupialis) (B) キタコアリクイ (Tamandua mexicana) (C) メキシコヤマアラシ (Coendou mexicanus) (D) ワトソンキヌゲネズミ (Tylomys watsoni) (E) ダービーウーリーオポッサム (Caluromys derbianus) (F) ベスパーラット(別名:ユウグレネズミ) (Nyctomys sumichrasti) (G) キンカジュー (Potos flavus) (H) マントホエザル (Alouatta palliata) (I) ホフマンナマケモノ (Choloepus hoffmanni) Image credit:Ecology and Evolution

周囲にいる動物を知るための情報交換の場としても機能

 これら共同トイレのある木は、すべての動物を合わせるとトータルで1日に平均数回の訪問が記録されており、偶然ではなく日常的な習慣であることが示されている。

 研究チームは、この場所がただのトイレではなく、残された排泄物の匂いを通じて、周辺にどんな個体がいて、どのような活動をしているかといった情報を探る役割を果たしている可能性を指摘している。

 だが、ネコ科の優れたハンターである肉食獣のマーゲイが、同じトイレにやってくる草食動物や小動物を襲うことはないのだろうか?

 カメラの記録によると、彼らが直接鉢合わせすることは滅多にないという。

 活動時間帯の異なる動物たちが、時間をずらして利用する棲み分けが行われているためだ。

 マーゲイにとってこのトイレは、直接待ち伏せをする狩場というよりも、排泄物の匂いから「どんな獲物が周辺にいるか」を探る場所になっている。

 一方で草食動物たちも、捕食者の新しい匂いが残っていれば危険を察知して避難するなど、匂いを通じた高度な情報戦が行われていると考えられる。

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共同トイレを訪れた哺乳類たちの動画静止画 (A) オナガイタチ (Mustela frenata) (B) アカハラリス (Sciurus granatensis) (C) オリンゴ (Bassaricyon gabbii) (D) タイラ (Eira barbara) (E) サルビントゲマウス (Liomys salvini) (F) シロハナグマ (Nasua narica) (G) ノドジロオマキザル (Cebus capucinus) (H) マーゲイ (Leopardus wiedii) Image credit:Ecology and Evolution

生態系を支えるキーストーン種としての重要な役割

 今回、野生動物たちの共同トイレとなった絞め殺しの木は、森の生態系において「キーストーン種」としての重大な役割を担っている。

 キーストーン種とは、生態系において、その存在が環境や他の生物に非常に大きな影響を与え、全体のバランスを維持するための要となる生物種のことだ。

 もしこの種が消失すれば生態系が連鎖的に崩壊する恐れがあるため、保全生態学においても極めて重要視されている。

 絞め殺しの木が生み出す果実は、他の植物が実をつけない時期にも鳥類、哺乳類、爬虫類、無脊椎動物など無数の熱帯生物に食料を提供する。

 研究者たちは、この木を「高速道路にあるサービスエリア」に例えている。移動の途中に立ち寄り、豊富な食料をつまみながら、安全に用を足し、同時に最新の情報を収集できる場所なのだ。

References: Multi-Species Canopy Latrines in Costa Rican Cloud Forests: A Mammal Interactions Hub in a Single Tree Species

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この記事へのコメント 4件

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  1. 遭難しても絞め殺しの木の下で休憩しようとしちゃいけないってことだな

    • +1
  2. コンコン!
    早く済ませてくださーい。
    後ろがつかえてますよ~

    ママぁ~~

    • 評価
  3. ナマケモノ、本当に奇妙な習性だな。
    その場で排泄すると、天敵に居場所がばれるとかなのかな。

    • 評価
  4. 砂漠におけるオアシスの如し
    確かにトイレは憩いの場でもある

    • 評価

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