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タコは腕で恋をする。オスは吸盤でメスのホルモンを感じ取り、好みの相手に愛を届ける

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(著)

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Image credit:Dear Sunflower
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 何から何まで興味深いタコの世界だが、また一つ、新たな面白い事実が判明した。

 ハーバード大学や日本の沖縄科学技術大学院大学などによる国際共同研究チームによると、タコのオスは8本の腕のうち1本を子孫をはぐくむために使うが、その際、吸盤でメスのホルモンを直接「味わう」ように感じ取り、自分に合う「好み」の相手を判別して精子を届けていた。

 この腕は「交接腕」と呼ばれ、メスに精子を渡す行動は「交接」と呼ばれる。

 また、交接腕は、脳から切り離されても自律的に好みのパートナーを判別して動く「独自の知能」を持つ仕組みを持っていることもわかった。

 この研究成果は学術誌『Science』(2026年4月2日付)に掲載された。

タコは交尾ではなく腕を使って交接する

直接の交尾とは違い、腕を差し込んで行う「交接」の仕組み

一般的な動物が行う、生殖器を直接つなぎ合わせる「交尾」とは違い、タコなどの頭足類の生殖行動は腕を使って行われる。

 そのため、この行動を「交接(こうせつ)」と呼び、そのために特化したオスの腕を「交接腕」という。

 タコのオスは、自分の体内で精子をひとまとめに包んだ「精包(せいほう)」という細長い袋状の塊を作る。

 オスは精包を、自分の交接腕の付け根から先端まで走る「精莢溝(せいきょうこう)」という細長い溝に沿って滑らせて移動させる。

 精包が腕の先端にあるスプーンのような形をした「舌状片(ぜつじょうへん)」まで届いたら準備完了だ。

 オスはそのまま交接腕をメスの「外套膜」という袋状の胴体の中へ深く差し込み、卵の通り道である「卵管」の入り口に精包を直接送り届けるのだ。 

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タコの交接 Image by Istock DiveIvanov

腕がパートナーを探し出す。交接腕の知能

 タコの知能は非常に高く、5億個ものニューロン(神経細胞)を持っているが、その大半は脳ではなく「腕」に分散している。

 そのため、タコの腕は脳からの指令がなくても、まるで独立した生き物のように自律的に動くことができる。

 ハーバード大学を中心に、カリフォルニア大学サンディエゴ校、沖縄科学技術大学院大学、スウェーデンの複数大学の国際研究チームは、切り離された交接腕にメスの性ホルモンである「プロゲステロン」を近づけたところ、腕は激しく動き、メスを探し求めるような動作を見せた。

 さらに、水槽内に黒い仕切りを置いて視覚を完全に遮った実験でも、オスは仕切りの小さな穴から交接腕を伸ばし、反対側にいるメスの外套腔を正確に探し当てることができた。

 これは、交接腕に備わった神経系が化学的な手掛かりを直接処理し、愛を届ける場所を自ら判断している証拠である。

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カリフォルニア・ツースポットタコ(Octopus bimaculoides)のオスが交接腕と呼ばれる特殊な腕を仕切りの隙間から伸ばし、メスの卵管に到達して交接している様子 Image credit:© Anik Grearson, Harvard University

吸盤で「味わう」ことで相性のいいパートナーを選び出す

 タコにとってのパートナー選びは、吸盤で触れて相手を認識するプロセスが重要だ。

 交接腕の先端にある小さな吸盤には、他の腕と同様に神経と感覚細胞が高密度に分布している。

 特に、性ホルモンを検出する「CRT1」という受容体(タンパク質)が重要な役割を担っており、これがメスの体から放出されるわずかなプロゲステロンなどの成分を、直接触れることで瞬時に判別する。

 この受容体は進化のスピードが非常に速く、種によって形が異なるため、「どの相手の成分に反応するか」という個別の相性、すなわち「好み」を生み出す原因になっている。

 受容体がメスの出すサインと一致したとき、タコは姿を見ることなく「この相手こそがふさわしい」と判断し、1時間以上に及ぶ精包の受け渡しを行うのだ。 

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野生採取のカリフォルニア・ツースポットタコ。オス(左)は交接腕を伸ばし、メス(右)に触れあって交流する Image credit:© Pablo Villar, Harvard University

もともとは獲物用だった受容体を生殖用に進化させた

 実は、このホルモンを感じ取る受容体「CRT1」は、もともと獲物の表面にいる細菌を検知するために使われていたものだった。

 タコは長い進化の過程で、獲物を探し出すための機能を、パートナーを選別するための高度な仕組みへと変化させたのである。

 沖縄科学技術大学院大学のサム・ライター准教授らは、沖縄に生息するウデナガカクレダコでも視覚なしの交接を確認しており、世界各地の多様なタコがこのシステムを利用している可能性を示した。

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沖縄に生息するタコの一種「ウデナガカクレダコ(Abdopus aculeatus)」の交接様子。仕切り板の左側にいるオスは、仕切り板の隙間を通して右側にいるメスに交接腕を伸ばしている。

 暗い海の中で「自分と同じ種類の、相性の良い相手」を厳密に見極める能力は、他の種類と混ざり合うのを防ぎ、自分たちのグループ独自の進化を守る役割を果たしている。

 餌探しには使われない交接腕が、実は高度な感覚器官として機能することで、タコは自分たちの系統を維持しながら生き抜いてきたのである。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

タコには9つの脳があると言われている。1つが中心にある脳で、残りが各腕に分散した8つの神経節だ。非常に知能が高く、宇宙から卵の状態で地球に飛来したとする説まで登場しているが、知れば知るほどその興味深い生態には驚かされる。もしタコの寿命が人間並みに伸びたら、水中の覇者になっているかもしれないな。

References: Science

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この記事へのコメント 8件

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  1. おい、お前こないだの子どうだったんだよ
    いやあなんか違うっていうか触手が動かんかったわ

    • +8

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