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捕食者に襲われたタコの腕が再生して9本に!すべての腕を使い分けていた

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(著)

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失われた腕が再生し9本になったタコ image credit:HIDDE JUIJN
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 とても賢く、驚異的再生能力をもつタコだが、時には予想外のことが起きる。

 スペイン・イビサ島近くの海で、過去に捕食者の攻撃を受けて腕を失ったマダコが発見された。3本の腕を完全に失い、さらに2本の先端部分が欠損していた。

 本来なら再生され8本に戻るはずの腕が、右前方の1本だけが途中で二股に分かれ、なんと9本腕になったのである。

 更に驚くべきことに、研究者たちが半年以上に渡ってこのタコの行動を観察したところ、再生された分岐の腕を含め、9本すべてを使い分けながら行動していることが明らかになった。

9本の腕を持つタコを発見

 このスペシャルなマダコの観察は、スペイン国立研究会議(CSIC)傘下のバレアレス海洋センター(COB-IEO-CSIC)、および海洋研究所エコバイオマール研究グループ(IIM-CSIC, ECOBIOMAR)によって行われた。

 観察期間は2021年12月から2022年5月までで、イビサ島の入り江で繰り返し水中調査が行われた。

 このマダコは、3本の腕を完全に失い、さらに2本の先端も損傷していた。

 そのうち、右前方にあった完全に失われた腕の1本が再生の途中で二股に分かれたことにより、合計で9本の腕を持つという非常に珍しい状態となっていた。

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右前方の腕が分岐し、9本の腕を持つようになったマダコの個体。各腕には位置に応じた名称(L=左、R=右)が付けられており、分岐した腕はR1aとR1bと名付けられている image credit:Soule, SE et al., Animals 2025 ( 
CC BY 4.0 )

9本の腕の使い方を観察

 研究チームは、このマダコが9本の腕をどのように使い分けているかを明らかにするため、水中での行動をすべて記録し、腕の使われ方を分析した。

 観察された行動は大きく2つに分類された。

 1つは「安全な行動」で、腕を体の近くに保ち、あまり動かさないような姿勢や静止状態を指す。外敵と接触する可能性が低く、防御的な態勢とされる。

 もう1つは「リスクを伴う行動」で、腕を体から大きく伸ばしたり、積極的に移動したり、環境に触れて探索するような動きが含まれる。

 これらの行動では、腕が捕食者にさらされる危険があると考えられている。

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再生の過程で分岐した腕(split arm) image credit:HIDDE JUIJN

傷を負った腕をかばう、タコに「痛みの記憶」がある可能性

 観察の結果、最も頻繁に使われていたのは左前方の「L1」と、分岐して再生された右前方の腕「R1a」だった。

 移動には後方の「L4」や「R4」が多く使われ、探索や採食の際には分岐した「R1b」も活発に使われていた。

 一方で、過去に深刻な損傷を受けた腕は、「リスクを伴う行動」では使用頻度が著しく低かった。

 これは、タコがかつて負った傷を記憶しており、その部位を無意識にかばっている可能性がある。

 研究チームは、この行動の偏りを「痛みの記憶」によるものと推測している。

 過去に危険な経験をした場所を避けるという空間記憶が報告されているように、タコは特定の部位にも「危険だった」という感覚を記憶し、それを基に行動を調整している可能性があるというのだ。

 2021年のサンフランシスコ州立大学の研究でも、頭足類のタコにも痛覚があり、痛みを避けるための逃避行動をとることが明らかとなっている。

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9本の腕の使われ方を観察 image credit:HIDDE JUIJN

分岐した腕も徐々に使用、再生された腕に新たな役割

 再生によって生まれた分岐腕「R1a」「R1b」は、最初は使用頻度が低かったものの、観察期間中に徐々に行動に組み込まれるようになった。

 特に「R1b」は探索時の使用率が「R1a」よりも高くなる場面もあった。

 この変化は、タコが自らの身体構造の変化に適応し、再生された腕にも機能的な役割を割り当てる柔軟性を持っていることを示唆している。

 また、各腕は独立した神経制御を受けているとされ、触覚や反応が局所的に処理されることが知られている。

 今回の観察は、そうした神経系の柔軟性と適応性が、再生腕にも働いている可能性を裏付ける一例といえる。

自らの身体を記憶し、調整するタコの知性

 今回の研究では、タコの驚異的な再生能力だけでなく、それを行動にどう組み込んでいるかという適応的な知性にも光が当てられた。

 再生された腕も使われ方に変化が現れ、また過去に傷ついた部位は無意識のうちに避けられていた。

 こうした行動の背景には、タコが「自分の体の状態」を記憶し、それに応じて行動を調整しているという、高度な神経機能があると考えられる。

 タコのような無脊椎動物にも、過去の経験を基に自己の身体を管理し、危険を回避しながら新しい構造に適応する力があることは、動物の再生や行動の研究において新たな視点をもたらすだろう。

 この研究は『Animals』誌(2025年3月)に掲載された。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

かつて96本の腕を持つタコが日本で捕獲されたことがあるが、タコの再生能力はすごいね。分岐して数が増えてもそれをすべて使いこなせるのもすごい。タコの腕はそれぞれの腕は独立して機能し、脳を経由することなく、腕同士で情報を交換することができることもわかっている。もしタコが長生きする進化を遂げたら、海を支配できる日も近いのかもしれないな。

References: The Persistence of Memory: Behavioral Analysis and Arm Usage of a Nine-Armed Octopus vulgaris / Octopus Survives Suspected Predator Attack And Regrows Limbs – But Ends Up With 9, Not 8

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この記事へのコメント 11件

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  1. タコが長寿を手にしたら生来の知能に親の教育が合わさって、更に生き延びるほど大きく腕も増えて
    いあ!いあ!

    • +3
    1. スペインの研究所の人たちみたいだから、スペインの文化では腕なのかもね
      米国のある友人も腕、仕事先のスウェーデンの人は英語の会話では「legs」と言ってた

      • +3
  2. タコや魚などには痛覚は無いって誰が言い始めたんだろ
    神経締めの動画とか見たらギャアアァァーってなる

    • +5
  3. タコって腕にも神経中枢があるそうだけど、それも増えたのかな

    • +3
  4. 以前と今回の記事で
    頭は良いし手足は増えるし
    ますますタコってスゴイと思った

    • +4
  5. 人間なんか3本目の足も自分の自由にならないのに

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  6. タコが宇宙人なのは
    あながちはずれてはいない。

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