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タコの驚くべき能力がまた新たに。脳内で迅速にRNAを書き換え水温の変化に適応していた

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(著) (編集)

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 宇宙からやってきたエイリアン説があるほど賢いことで知られるタコに、驚くべき能力が備わっていることが新たな研究で明らかとなった。

 タコには体温を調節する機能が備わっていない。にもかかわらず、タコは水温の急激な変化から体を守ることができる。

 なんとタコは自身の脳内でRNA(生物の細胞内で情報を伝達し、タンパク質の作製に関与する分子)を迅速に書き換える能力を持っており、様々な温度変化に対応できるのだそうだ。

DNAから情報を受け取りタンパク質を合成するRNA

 DNAは(デオキシリボ核酸)は、生物の遺伝情報を含んだ分子であり、生き物の設計図のようなものだ。細胞の中に存在し、突然変異によって少しずつ書き換えられていく。だが、それは何世代にもわたるゆっくりとした変化だ。

 一方、RNA(リボ核酸)は生物の細胞内で情報を伝達し、タンパク質の作製に関与する分子だ。RNAも遺伝情報を保持しているが、DNAとは異なる役割を果たしている。

 RNAはDNAの情報を受け取り、それをタンパク質合成機構に伝える働きを持つ。つまり、RNAはDNAからコピーを作り出し、そのコピーを基にタンパク質を合成する。この過程は「遺伝情報の転写」と呼ばれている。

 RNAはDNAよりも柔軟なため、すばやく書き換えることができる。

 DNAの設計図の情報は一度、メッセンジャーRNA(mRNA)に写し取られる。こうしてタンパク質の設計図を受け取ったmRNAは、これを工場(リボソーム)に運び込んで、そこでタンパク質が作られる。

 だからRNAを書き換えれば、作られるタンパク質を変えることができる。

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photo by iStock

頻繁にRNAを書き換えるタコやイカ

 「RNAを書き換えることで、生物は多様なタンパク質をいつでもどこでも発現させられるようになります」と、ウッズホール海洋生物学研究所のジョシュア・ローゼンタール氏は説明する。

 だが一般に、一度作られたRNAが再び書き換えられることは珍しい。ところがタコやイカなどでは、このRNAの書き換えがしょっちゅう行われているようなのだ。

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photo by Unsplash

水温に応じて迅速にRNAを書き換えるタコ

 ローゼンタール氏らは、このことをすでに全遺伝情報が解明されているタコ(カリフォルニア・ツースポットタコ)で確かめてみることにした。

 実験では、タコを数週間ほど暖かい水(22℃)と冷たい水(13℃)のどちらかで飼育して、そのRNAをDNAと比較してみた。

 すると2万か所(分析対象の3分の1)でRNAが書き換えられていることが判明したのだ。つまり、RNAの書き換えは部分的なものではなく、全体で大規模に起きていたのだ。

 そうした書き換えは「神経のタンパク質に関係するRNA」で起きやすく、また暖かさよりも「寒さに対応するため」のものだったという。

 書き換えスピードも迅速だ。水温が大きく変化すると、1日もしないうちにRNAが大幅に書き換えられるのだ。書き換えは4日もするとかなり安定し、1か月経ってもその状態が維持されている。

 こうしたRNAの書き換えによって、実際に作られるタンパク質の構造や働きが変わってくることも確認されている。

 この仕組みが水温の変化に対応するだけでなく、タコの圧倒的な知能を支えている可能性すらあるという。

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photo by iStock

酸素や社会環境の変化でもRNAの書き換えは起きるのか?

 タコには体温を調節する機能がない。だが海の中で生きる野生のタコは、季節による気温の変化にこうしたRNAの書き換えで対応しているようだ。

 それを裏付けるように、夏に捕獲したタコと冬に捕獲したタコには、今回の実験で確認されたものと同じようなRNAの変化が起きていたそうだ。

 こうしたRNAの編集はカリフォルニア・ツースポットタコだけでなく、ほかのタコやイカでも起きていると考えられている。

 だが、具体的にどうやってそれをやっているのか、なぜ寒いほうが書き換えられやすいのかといった点は、まだよくわかっていない。

 研究チームは今後、水温の変化だけでなく、酸素や社会環境の変化などについてもRNAの書き換えを行なっているのか調べる予定であるとのことだ。

 この研究は『Cell』(2023年6月8日付)に掲載された。

References:Octopuses rewire their brains to adapt to sea | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 12件

コメントを書く

  1. イカタコがすごいと思うか、そんなことしなくてもいい恒温動物がチートだと思うのかで意見が分かれそうだね

    • +7
  2. >RNAの書き換えによって、実際に作られるタンパク質の構造や働きが変わってくる
    冬と夏とで、タコの味が変わるのかどうか、が気になってきた

    • +10
  3. 小笠原には陸(海岸の岩場)を走るタコが居るそうだな

    • +1
  4. 勢いあまってDNAも書き換えたら何か楽しそう

    • +2
  5. クトゥルフ神話じゃねえか。窓に!窓に!!

    • 評価
  6. タコイカだけなのか
    適応能力の高い生物が持ってる能力って訳でもないんだ

    • +2
  7. タコのRNAを獲得した人間が街中に突然現れ
    周囲の風景に馴染むように瞬時に肌の色が変化し擬態したら
    そりゃもう腰が抜けるほど驚くだろうなぁ

    • +1
  8. つまり「(自然との)戦いの中で進化している……!」という奴か

    • 評価
  9. >なぜ寒いほうが書き換えられやすいのか
    原著論文まだ全部は読んでないけど、脱アミノ化によるアデニン→イノシンが低温で起こりやすくてその逆は起こりにくいようだから、基本は一方通行の変化で温度が高くなるとmRNA作り直してるから時間がかかるような気がする。
    原著は後でちゃんと読みますね。

    • +3
  10. 自分の浅い知識で考えるとすると
    単純に酵素の活性を向上させるため、ですかね?
    寒いなら反応性を上げる必要がありますからね
    体が冷えると筋肉や内臓の働きが鈍るのは、酵素の反応性が下がってエネルギーや物質のやり取りが遅くなるからなので。
    アミノ酸の配列が一つ変わるだけでも構造が変わり、基質との反応部位の構造が変われば反応速度の向上、あるいは不活化まで、幅広く酵素の性質が変わりますからね。
    かと言って、大元のDNAを変異させると、書き換えミスがあったときに致命的になるので
    DNAをマスターデータとすると、出力した設計図であるRNAにト書きしてアレンジを加える、といった感じですね。

    • +1
  11. 想像を絶するわ…
    RNAの書き換えを何が判断してるの…?
    脳みそで考えることしかできない
    人間の認識の狭さよ…

    • +1
  12. 地球外生命体みたいな見た目して能力までワケ分かんないの最高だなあ
    この生き物が深海や北極じゃなくてそこら辺の海に普通にいるのがロマン
    まだまだ解明されてないこと山程あるんだろうな

    • 評価

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