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目に見えない無数のワームホールが、時空を歪めて宇宙を広げているとする新理論

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(著)

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Image by Istock imaginima
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  我々の身の回りには、目に見えない無数のワームホールが存在しているかもしれない。ギリシャの研究チームは、これらの極めて微細なワームホールが時空の構造そのものを変えているという、新たな理論を発表した。

 もしこの仮説が正しければ、私たちの現実は常に“穴だらけ”の状態にあり、その無数の穴こそが、宇宙を押し広げる原動力になっていることになる。

物理学を悩ませてきた宇宙の膨張のズレ

 研究者たちは長いあいだ、ある難問に頭を悩ませてきた。それは、私たちが暮らす宇宙がどのように広がっているのか、その計算がまったく合わないという問題だ。

 宇宙は約138億年前、ビッグバンと呼ばれる大爆発によって誕生し、今も膨張を続けている。

 しかし、アインシュタインの「一般相対性理論」に基づく計算式と、実際に観測された宇宙の姿のあいだには、埋めようのない深い溝がある。

 専門的には「宇宙定数」問題と呼ばれるこの謎は、量子論による理論上の予測値が、観測で得られる値よりもおよそ120桁も大きくなるというものだ。

 120桁という数字は、単なる120倍という意味ではない。1の後に0が120個も続く、想像を絶する差である。

 たとえば、雷に打たれる確率が約1万5300分の1だとすれば、このズレは「外に出れば確実に雷に当たる」と言ってよいほどの誤差だ。

 この矛盾を解き明かそうと、科学者たちは「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」という未知の力が宇宙を押し広げていると考えたり、重力の理論そのものを見直したりしてきた。しかし、いずれの説も決定的な答えには至っていない。

時空を満たす無数の泡とワームホール

 ギリシャ・アリストテレス大学などの研究チームは、この問題を解く手がかりとして、宇宙のごく小さな領域で起きている“時空の揺らぎ”に注目した。

 宇宙の背景は一枚の滑らかな布のようなものではなく、もっとデコボコとした複雑な構造をしているのではないかと考えたのである。

 研究チームが着目したのは「量子泡(りょうしほう)」と呼ばれる極微小な領域だ。

 原子よりもはるかに小さなミクロの世界では、物理法則が一時的に崩れ、空間が泡のように沸き立っていると考えられている。この泡の中では、時空がわずかにねじれ、穴が開くことがあるという。

 もしこの泡の中で、無数の“微細なワームホール”が生まれては消えているとしたらどうだろう。

 これらのワームホールは、まるで水を吸って膨らむゲル状のビーズのように、時空のすき間を埋めているのかもしれない。

 ワームホールというと、宇宙船が通り抜けるトンネルを想像する人も多い。しかし、ここで言うのはもっと数学的で、私たちが直接見ることのできない高次元の世界へと続く、ごく小さな穴のような存在だ。

 こうした無数のワームホールが、私たちの宇宙を形づくる見えない基盤になっている可能性があるというのだ。

ワームホールがダークエネルギーの正体か

 そこで研究チームは、宇宙の膨張速度をめぐる120桁のズレを解消するため、ワームホールの密度を計算式に組み込む新しい手法を試みた。

 数学には、空間の曲がり方や形の性質を記述する「ガウス・ボンネ定理」という法則がある。

 位相幾何学(トポロジー)と呼ばれる分野で使われるこの定理は、ドーナツの穴の数のように、物体の形が根本的に変わる性質を扱うものだ。

 研究チームはこの定理を応用し、時空に開いたワームホールの穴が数式の中で「有効なダークエネルギー」として働くことを示した。

 つまり、宇宙を押し広げているのは正体不明のエネルギーではなく、無数の微細なワームホールが生まれては消える“かき混ぜ(撹拌)”のような動きそのものだという。

 この仮説を取り入れることで、アインシュタインの一般相対性理論に基づく計算値と、観測によって得られた宇宙膨張の実測値のあいだにあった120桁もの食い違いが埋められ、理論と現実の整合性が取れるようになる。

1立方mに1京個の穴が生まれている可能性

 では、この理論が成り立つためには、どのくらいのワームホールが必要なのだろうか。

 研究チームの試算によると、1立方mの空間の中で、毎秒およそ10の16乗個、つまり1京個の微細なワームホールが発生している必要があるという。

 とてつもない数のように思えるが、量子レベルのミクロな世界では、それほど異常な数値ではないとチームは結論づけている。

 この理論が正しければ、私たちの周囲の空間でも、今この瞬間、無数のワームホールが生まれては消えていることになる。

 今この瞬間にも、我々のいる世界で無数のワームホールが生まれては消え、目に見えない穴が、広大な宇宙の運命を握っていると考えると不思議な気分になる。

 この研究成果は、アメリカ物理学会の査読付き専門誌『Physical Review D』(2024年発表)に掲載された。

References: Journals.aps.org / You’re Living Alongside Invisible Wormholes, Scientists Say—and They May Be Warping Your Reality

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この記事へのコメント 17件

コメントを書く

  1. 宇宙が膨張する理由がワームホールだったとしても、宇宙定数の解決につながるように見えないのだけど詳しい人教えて。絶妙なバランスで膨張加速している現在の宇宙をワームホールが絶妙なバランスでコントロールできるっていってるのかな?

    • +5
  2. ワームホールがダークアレルギーでユニヴァースだわ!

    • -6
  3. エアインチョコのようなスキマだらけの空間なのだろうとは思える
    しぼんだ空間と何か違いがあるのだろうか

    • +4
  4. …ホント?とか思っちゃうけど。
    でもワームホールがある世界とない世界だったら、
    ワームホールがある世界の方が魅力的に思えるんですよね。

    • +5
  5. まあ可能性はあるよね
    ワームホール(空間に空いた虫食い穴 宇宙の違う場所に繋がっている)だとは思わないけれど
    泡立って空間を広げてる可能性は十分にある

    >1立方mの空間の中で、毎秒およそ10の16乗個、つまり1京個の微細なワームホールが発生している必要がある
    素粒子レベルだから少なすぎでは?

    • +5
  6. 素粒子の正体が微細なブラックホールのようにも思える
    ブラックホールの正体はでかい素粒子っぽい

    • +2
  7. 観測できないブラックホールだけど存在は確認できると…
    でも、ワームホールは存在さえ確認できないからなあ。

    そもそも、ワームホールが存在すると仮定して、この理論は成り立つのかどうかもよくわかんねえw

    • +1
  8. 宇宙が広がってんのは最初のビッグバンがそもそも酸素など無い場所で起こったため相対性理論で速度も衰えないのでそのまま広がってるだけ
    ワームホールなんてブラックホールとかと同じで無限に広がる分どこかにマイナスの症状が現れるって現象の一つなだけで広がりとは無関係

    • -12
    1. ギリシャ・アリストテレス大学などの研究チームより優秀な人がいるコメント欄
      どこの大学ですか?

      • +7
    2. この記事は「宇宙の広がり方が観測と計算で合わない、そのギャップを埋める何かがあるとしたらこういうもの」という仮説で。
      ちゃんと記事を読んでください。

      • +8
  9. ケンシロウ「あるのかないのかどっちなんだ」
    修羅「アイヤ~ないある~ひょんげ~!!」

    • -1
  10. タンスの衣類に無数のワームホールが(;゚Д゚)

    • +6
  11. 油膜の張った水面に洗剤液を一滴落とす
    すると、表面張力で一気に油膜が押し出される…みたいなイメージかな?
    三次元だったらボイド構造みたいな感じでさ

    • +5
    1. そう考えると斥力があるね
      意図的にバブルを大量発生させると浮くような感じで

      • +3
  12. 人が認知出来ないところに世界はまだまだ広がっているっていうニュースを聞くたびに楽しくなる 心がちょっと緩むよ

    • +8
  13. >量子論による理論上の予測値が、観測で得られる値よりもおよそ120桁も大きくなる

    あれ?予測値より実際の観測値の方が大きいんじゃなくて?少なくとも宇宙の膨張率は予測より実際の方が確か大きいよね?
    私が理論なぞそもそも知らないせいで理解が半可なのか?

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