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物理学では説明できないほど宇宙は急速に膨張している、従来の宇宙論が覆される可能性

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(著) (編集)

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地球とかみのけ座銀河団の超正確な距離から導かれた宇宙の膨張スピードは、やはり従来の宇宙モデルの予測とは一致しなかったこの画像を大きなサイズで見る
ハッブル宇宙望遠鏡によるかみのけ座銀河団の画像 NASA, ESA, J. Mack (STScI) and J. Madrid (Australian Telescope National Facility
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宇宙は本当に急速に拡大しているようだ。従来の宇宙論よりもずっと速く、だ。

  その宇宙の膨張スピードを、米国の天文学者が観測結果をもとに改めて調べてみたところ、やはり定説通り、遠くの宇宙のスピードよりも近くの宇宙のスピードのほうが速いことが再確認できた。

 観測結果から導かれる、近くの宇宙と遠くの宇宙のスピードがなぜか一致しない問題は、「ハッブル・テンション(ハッブル定数の緊張)」と呼ばれ、天文学における未解決の謎の1つだ。

 今回、改めて食い違いが確認されたことで、「緊張は今や危機である」と研究者はニュースリリースで述べている。

宇宙膨張を示すハッブル定数とその矛盾

 1929年に天文学者エドウィン・ハッブル氏が、宇宙が膨張していることを発見して以来、宇宙の膨張速度を示す「ハッブル定数」の測定は、天文学の主要課題となってきた。

 この定数は、宇宙の膨張速度を数値化したもので、1メガパーセク(約326万光年)ごとにどれだけ速く天体が遠ざかるかを示すものだ。

 だが、その試みは居心地の悪いことになっている。近くの宇宙と遠くの宇宙の観測から導かれるハッブル定数は、なぜだか一致しないのだ。

 理論モデルに基づく膨張速度と実際の観測結果の間に生じる矛盾は「ハッブル・テンション(ハッブル定数の緊張)」と呼ばれている。

 宇宙の膨張スピードを求める方法は2つある。1つは近くの宇宙の距離をもとにして、直接計測する方法だ。

 もう1つは遠くの宇宙を観測し、そのデータを踏まえて、標準的な宇宙モデルで予測する方法だ。

宇宙の「成長曲線」のズレ

 米国デューク大学のダン・スコルニック氏は、天の川銀河やその付近にある近くの宇宙は「現在の宇宙」、遠くの銀河は「子供の頃の宇宙」だ、と説明する。

 ただ、成長スピードの算出にそうした区別は関係ないはずなのだ。対象が同じ宇宙である限り、子供の頃の宇宙を起点にしようと、現在の宇宙を起点にしようと、そこから導かれたスピードはピッタリ一致しなければおかしい。

 それなのに近くの宇宙と遠くの宇宙で結果が食い違ってしまう。これは観測方法が間違っているか、宇宙モデルが間違っているかのどちらかを意味している。

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Photo by:iStock

超新星を使った正確な距離測定

 近くの宇宙からハッブル定数を求めるには、「宇宙はしご(Cosmic Ladder)」が使われる。

 はっきりと距離がわかるものをつなぎ合わせて宇宙の距離を測るやり方が、はしごの段を思わせることからつけられた名だ。

 今回スコルニック氏が利用した宇宙はしごもまた、いくつかの研究チームが作成した段々で構成されている。

 その段々は、キットピーク国立天文台のダークエネルギー分光装置が毎晩10万もの銀河を観測して集められたデータに基づく超正確なものだ。

 とは言え、この宇宙はしごは、いわば一段目が欠けているような状態だった。そしてそれを目にしたスコルニック氏は、その一段目を補う方法を閃いたのだ。

 地球のもっとも近くにある銀河団の1つ「かみのけ座銀河団」の正確な距離がわかれば、これを一段目にできるだろう、と。それができれば、より正確なハッブル定数が導けるに違いなかった。

はしごの最初の段は欠けていました

私はそれを補う方法を知っており、それがあればもっとも正確なハッブル定数を示せるだろうと思いました。だから、すべてを中断して、この作業に集中することにしました(スコルニック氏)

 地球とかみのけ座銀河団との正確な距離を割り出すべく、スコルニック氏らが調べたのは、銀河団内にある12個のIa型超新星の光だ。

 このタイプの超新星は質量が均一であるために、明るさが決まっている。その一方で、光の明るさは距離によって変化する。だからIa型超新星の明るさを調べることで、そこまでの距離を正確に測定することができる。

 その結果、かみのけ座銀河団までの距離はおよそ3億2000万光年であると算出された。この数値は、過去40年間に報告されてきた距離とほぼ一致しており、信頼性の高いものだ。

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3億光年離れたところにある、1,000個以上の銀河を含む巨大なかみのけ座銀河団の一部 ハッブル宇宙望遠鏡の撮影した画像をつなぎ合わせたもの NASA, ESA, J. Mack (STScI) and J. Madrid (Australian Telescope National Facility

近い将来、宇宙の標準モデルがくつがえる?

 こうして作られた高精度の宇宙はしごから導かれたハッブル定数は、76.5キロメートル毎秒毎メガパーセク。すなわち、326万光年離れた天体は、1秒で76.5km遠ざかっていくということだ。

 この値は、これまでに報告されてきた近くの宇宙の測定から得られた膨張スピードと一致する。その正しさはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も確認している。

 同時に、これまでと同じく、遠方の宇宙の観測から理論的に予測されたハッブル定数とは食い違う。

 ならば測定がおかしいのか、理論がおかしいのかのどちらかだ。

 スコルニック氏らによる最新の計測結果は、ハッブル定数の緊張の原因は、宇宙の標準モデルの誤りにあるという見解を強く支持するものだ。

 なぜなら、彼をはじめとする天文学者たちは、測定による結果が正しいのかどうか、中身を変えながら繰り返し試してきた。

 それでもなお、おおむね同じ結果が得られてきた。ならばやはり宇宙の理論がどこかおかしいと考えるのが自然だろう。

 スコルニック氏は、今宇宙のモデルは本格的な挑戦を受けていると語る。

およそ25年間使用されてきたモデルですが、今これに対して本格的な反論が行われているところです

宇宙についての考え方が見直されるかもしれないのですから、ドキドキですね! 宇宙論はまだ驚きで満ちており、次にどんな発見があるかは誰にもわかません(スコルニック氏)

 この研究は『Astrophysical Journal Letters』(2025年1月15日付)に掲載された。

References: Dan Scolnic Shows that the Universe Is Still Full of Surprises | Trinity College of Arts & Sciences

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この記事へのコメント 29件

コメントを書く

  1. 人類は宇宙のことをまだほとんどわかってない

    • +11
      1. 近代的な観測や理論が出てきたのがここ百年の話で、それでこの成果なんだから十分わかってる方なんだけどね。

        みんなせっかち過ぎるのよ。

        • 評価
  2. 子供の頃から続く宇宙のその先の謎の話も未だに更新されていない

    • +7
    1. 宇宙の外側は人間の果てしない妄想を受け入れるエリアだ

      • +7
    2. 「宇宙の果て」がどの辺にあるかも皆目わからん、て状態だもんね。
      「10の10乗の10乗の122乗」みたいな推定もあるけど
      桁が大きすぎて単位がミクロンでも光年でも誤差の内という始末。

      • +3
  3. 観測技術が向上したおかげでかえってカオスになってきたな

    • +11
  4. 再び産み落とされたくはないが宇宙の解明をこの目で見届けたいな

    • +4
  5. 今の宇宙拡張理論は宇宙が無限に広がっている前提での理論だけど、例えばコップの上から水滴を垂らしていき水の広がり方を(スピードを)観測すると水滴の落ちたあたりとコップの内壁付近だと拡張スピードが違うから
    現実の宇宙も壁が近い場所は拡張スピードが遅くなっているのかもしれない。コップの形も不規則だったりするから計算は難しいと思うが、実際宇宙のモデルが何らかの制限の中で行われている拡張だとすると壁にぶち当たった宇宙はどの様になるのか興味深いね。
    いろいろな仮説が出て来て科学が発展する度に仮説が絞られてくるのも興味深いが、結論なんていつ出るか分からないから一般人は気が向いた時にチェックするくらいで良い気がする。

    • +6
    1. 「コップの水」の例えは面白いし、実際ありそう
      コップの水(膨張エネルギー)がなくなったら広がる速度は落ちるし
      最終的に水が乾いて消えていく(熱的死)ってのも説明できそう

      • +5
  6.  いいですねぇ。 こういう従来の説では説明できないという状況を繰り返して科学は発展してきたので胸が躍ります。 どんな説があるいはどんな観測で、新しい説を繰り出すのか、はたまた従来の説を支持できるのか、ワクワクします。

    • +7
  7. 最近の記事で銀河団と超空洞では重力によって時間の進み方が違うため超空洞の方がより速く膨張しているかもってあったけど似たようなことになるんだろうか?
    過去の方が密度が高くて重力強そうだもんね

    • +4
  8. 宇宙は膨張してるっていうけど
    地球ー月ー太陽間は一定のまま
    これはどういうことなの?

    • +1
    1. その程度の「近距離」ではほぼ影響が出ないのと重力があるからね。

      • +6
    2. 星の間では重力が勝ってるから、重力が宇宙の膨張スピードに勝ったらビッグクランチということになる

      • +1
  9. ここで言ってる「距離」がそもそも実際の距離を測定したものではなく、赤方偏移度合いによる推定だからなあ
    本当はどの程度正しい距離推定法なのやら

    • +3
  10. >すなわち、326万光年離れた天体は、1秒で76.5km遠ざかっていくということだ。

    光速よりはるかに遅いんだ。仮に遠方の宇宙でも同じだとすると、宇宙の最外端の恒星から放たれた光は宇宙の果てにぶつかってしまうんだろうか。
    わからないけど、こういうことを考えるとかなり楽しい。

    • +1
    1. 宇宙がトーラス状の閉じた構造だとすると(ドーナツみたいな形)
      宇宙に「果て」は無いことになるから
      光は反対側にループするだけってことになるね

      • +3
  11. どうもおかしい・・
    銀河の数だってほぼ無限に近いんでしょ?
    宇宙の果ては光より速く、いや今回では身近な宇宙の方がもっと速いんでしょ?
    それなのに太陽系の距離は変わってないって
    太陽の重力では太陽系の惑星を止めておくのは不可能らしいじゃない? 宇宙が膨張してるなら今この場所も膨張してるのにさ・・・・
    何かがおかしいよ

    • -6
    1. >太陽の重力では太陽系の惑星を止めておくのは不可能らしいじゃない?

      初耳だけどどこの情報?
      通常、物質が密にある場所では重力が強いから膨張は起こらない。
      太陽系どころか銀河系レベルで見ても特に膨張は起きてない。
      広がってるのは主に銀河と銀河の間の空間だよ。

      • +6
  12. どっちが幸せなんだろうなあ
    発展段階の今が幸せなのか、多くのことがわかってる数百年~数千年後が幸せなのか
    研究者にとっては新たな発見が次々と生まれる今が議論しがいもあって幸せそう
    答えをまず知りたい自分は先取りで答えを知りたい

    • -2
    1. 全部を知るなんて100%無理
      問題が解決した次の世代では次の疑問でてんやわんやになるだけだろうから
      「答え」なんて永久に出てこないと思う

      • +2
      1. そうよね。仮に宇宙が解明されてもその外は?という疑問が出てくるし
        それらを受け入れる器ってなんだ?
        有限も無限も理解不能なのよ

        • +1
    2. 動物は栄養を得るため頭と足を使って彷徨ってるわけで
      色々問題を解決してゆくと結局は植物のような存在に行き着くような気がする

      • +1
  13. 真空の中で太陽よりも何倍も大きな星とか出てきたらその影響で、膨張速度が加速したり、星の爆発で更に速度が増加したり…宇宙と宇宙の外との摩擦で星が生まれる?それか、星は宇宙の外にあって真空がそれを飲み込む?どこから湧き出てくるんやろねー

    • -1
  14. 宇宙の外ってどうなってんだろ
    時間も空間も無い「無」説を見たことあるけど
    膨張っていうと風船やパンを思い浮かべるけど時間空間がある中での出来事なわけで、じゃあ宇宙が膨張=無を押す?ってどういうことなんだろう

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