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ウクライナで発見された中世の石製円盤はバイキングの太陽コンパスだった可能性

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(著) (編集)

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バイキングの船をイメージした写真この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock
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 ウクライナで見つかった12~13世紀の物と思われる8枚の丸い石盤が、考古学の議論を再び熱くしている。

 これらの石盤はパイロフィライト(葉蝋石)という柔らかい鉱物で作られ、複雑な模様が彫られている。しかし、その用途については長年謎のままだ。

 暦として使われたのか、工芸品の道具だったのか、それとも何か神秘的な儀式に関わるものだったのか?

 最近の研究では、これらがバイキング(ヴァイキング)の航海に欠かせない「太陽コンパス」だった可能性が示唆されている。

中世ウクライナで発見された「謎の石盤」

 パイロフィライト(葉蝋石)は、ウクライナ、オヴルーチでたくさん見つかる柔らかな鉱物だ。この鉱物を使った円形石盤はウクライナのキーウ、リストヴェン、リュベチなど中世の主要な集落でこれまでも発見されている。

 石盤には同心円や放射状の線刻など、奇妙な彫刻が施されており、初めて発見されてからその用途について数々の仮説が立てられてきた。

 暦や針の研磨機、宝石を削る道具、さらには家具の装飾用など様々な用途が推測されたが、いずれも決定的な証拠はない。

 パイロフィライトは柔らかく、像や鋳型まであらゆるものに加工できる優れた素材であるがゆえに、この石盤の用途の特定が難しくなっているのだ。

 石盤の真の役割を突き止めることは、考古学者たちにとって長年の挑戦だった。

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ウクライナ、リストヴェンで見つかったパイロフィライト製の円形石盤 Credit: O. Veremeychyk

バイキングの太陽コンパス説が浮上

 最近の研究では、これらの石盤がバイキング(ヴァイキング)の航海用具「太陽コンパス」として使われた可能性が指摘されている。

 この研究は、ウクライナのタラス・シェフチェンコ記念チェルニーヒウ国立大学とポーランドのアダム・ミツキェヴィチ大学の共同プロジェクトであり、考古学者オレナ・ヴェレメイチク氏とオルガ・アントフスカ=ゴロンチニャク氏によって行われた。

 バイキングの航海技術は、9~11世紀頃のスカンジナビアから広がった。

 今回の研究で、「ヴァリャーグ(Varangians)」と呼ばれた交易商人や船乗りが、ギリシャまでの交易ルートを使って、この地域を広範囲に航海していたらしいことがわかった。

 太陽コンパスとは、太陽の影を利用して方角や緯度を測るための装置だ。グノモンと呼ばれる影をおとす長い棒を円盤の中央に立て、影の長さや方向から位置を割り出す仕組みである。

 ウクライナで発見された円形石盤のいくつかには中央に穴が開いており、放射状の線刻がその用途に適している可能性を示唆している。

 木や骨でできた同じような航海用具がグリーンラントやバルト海地方でも発見されていて、共通の技術遺産ではないかと考えられる。

 研究者たちは、「これらの石盤はバイキングの太陽コンパスのデザインを受け継ぎながらも、ウクライナで地元の材料を使って作られた可能性がある」と述べている。

 その形や機能はスカンジナビアの交易商や船乗りの影響を受けた可能性がうかがえ、交易ルートの流れ沿いからこれらの石盤が出土しているのだ。

 この説が正しければ、スカンジナビアとウクライナとの間で行われた文化的・技術的交流の証拠ともなり得る。

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ウクラナイナ、リュベチ産のパイロフィライト製円盤 Credit: O. Veremeychyk

 とくに石盤のうち3つは、バイキングの太陽コンパスの特徴が顕著だ。中央に穴が開けられ、放射状の模様が刻まれていて、チョークや木炭などこすって消すことができる材料で一時的に日時計の指針を描くことができたのかもしれない。

 こうした柔軟性は、ユーザーが場所を移動し、新たな緯度を観測して適応するのに不可欠な要素だったろう。

 しかし、バイキングの太陽コンパスには一般的な分点と至点の恒久的なマークがないことから、まだこの円盤が太陽コンパスだと完全に特定できるとは言えない。

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れまで確認されている似たような円盤。木製(a、c)、石製(b)、くじらの骨でできたもの(d)  Credit: O. Antowska-Gorączniak

残された疑問

 バイキングのコンパス説はかなり有力な説ではあるとはいえ、この説に異議を唱える意見も少なくない。

 ウクライナの石盤とこれまで見つかっている太陽コンパスの間には大きな違いがあるからだ。

 バイキングの太陽コンパスには通常、春分・秋分や夏至・冬至を示す線が刻まれているが、ウクライナの石盤にはそのような明確な痕跡がない。

 また、石盤の彫刻は浅く、実際に航海用具として使われたのか疑問を投げかける声もある。

 工芸ツールとか、シンボル的なオブジェクトなど、まったく違う用途の可能性も排除できない。

 歴史的に同じような例があることも、状況を複雑にしている。

 例えば、1984年にグリーンランドで発見された木製の円盤が復元されたとき、やはり航海用の太陽コンパスとして使用されたという説があったが、実際の機能については相変わらず議論が続いている。

 釣り用の浮きだとか、陶器のスタンプなどさまざまな可能性が出てきている。

 こうした不確実な議論に結論を出すため、研究者たちは詳細な測定、表面摩耗の研究、実験考古学などの面から、さらに進んだ分析、包括的な調査が必要だと主張している。

 この研究は 『Sprawozdania Archeologiczne』(2024年12月17日付)に掲載された。

References: Medieval stone disks found in Ukraine could be Viking solar compasses | Archaeology News Online Magazine

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この記事へのコメント 4件

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  1. 中心に穴が開いているから、石板だけでなく、ほかの付属品と一緒に使われたんでしょう

    • +3
  2. バイキングの航海技術とか造船技術はかなり高度で哲学的の領域に達してるとか昔聞いた。

    • +1
  3. 奪ったものを日時計にでも使おうと思ったのかもしれないね
    あまり素材に意味はないのかもしれない、手に入れたから使うみたいな?

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