
ハワイの神話にちなんで「Ho’oleilana(ホオレイラナ)」と名付けられたその泡状構造は、宇宙誕生からまもない頃に発生した波紋「バリオン音響振動」によって作られたものだという。
この波紋が作り出した単一の構造としては、初めて見つかったものかもしれない。
それはビッグバン理論によって予測されていたものではある。
だが、想像以上に大きいことから、宇宙の膨張するスピードがこれまで考えられていた以上に速いものである可能性を示しているそうだ。
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初期の宇宙に広がる波紋
まだ生まれてまもない宇宙は、液体のように振る舞う高温のプラズマでみっしりと満たされていた。だが少しでも密度が高いところでは、その重力で内側へ向けて崩壊し始める。その一方、放射線は外側へと広がろうとする。この2つの力のせめぎ合いによって生じたのが、プラズマを伝わる波紋だ。
水面の波紋はただ環のように広がっていく。だがプラズマを伝わる波紋は、3次元空間を球状に広がっていく。これが「バリオン音響振動」と呼ばれるものだ。
やがて誕生から38万年が経過すると、宇宙は十分に冷えて、それまで自由に跳ね回っていた粒子から原子が形成されるようになった。
すると宇宙の波紋もまた止まる。その後に残されたのが、物質(銀河)が高密度で存在する領域と、ほとんど存在しない領域でできた泡のような構造である。
その1つらしきものが、今回地球から8億2000万光年先に見つかったのだ。

超巨大な泡状構造
ハワイの創世神話「クムリポ」で述べられている出来事にちなみ「Ho’oleilana(ホオレイラナ)」と名付けられた泡状構造は、ハワイ大学をはじめとする研究チームによって発見された。ブレント・タリー氏らは、自身らが集めた「Cosmicflows-4」という宇宙のカタログに基づき、5万5877個の銀河同士の距離を測定して分析した。そうすることで広大な宇宙に銀河がどのように分布しているのか見えてくる。
そして浮かび上がってきたのが、直径10億光年の泡と、その中心に銀河団が密集したような構造だ。
その構造を細かく見てみると、これまでに発見された宇宙の巨大構造もこの泡の一部であることがわかる。
たとえば、ほとんど何も存在しない領域「うしかい座ボイド」や、宇宙の巨大な壁「グレートウォール」や「スローン・グレートウォール」などで、泡のほぼ中心には「うしかい座超銀河団」もある。

宇宙の膨張は想像以上に速い?
このような構造があること自体は、従来のビッグバン理論から予測されていた。だがタリー氏によると、10億光年という直径は、理論から予想されるものよりも大きいのだという。仮にこの泡状構造の形成と進化が従来の理論通りのものであれば、このバリオン音響振動は想像以上に大きく広がっており、宇宙の膨張がこれまで考えられていた以上に速いだろうことを意味する。
これまで宇宙の膨張スピードは推定67〜74 km/s/Mpc。すなわち天体の距離が1メガパーセク(約326万光年)離れるごとに、遠ざかる速度が秒速67〜74キロ速くなるとされてきた。
だがホオレイラナは、76.9キkm/s/Mpcであることを告げている(昨年には75 km/s/Mpcとする研究も発表されている)。
Vast bubble of galaxies discovered, given Hawaiian name
はたして本当のところはどうなのか? それを解明するには、さらなる観測と分析が必要であるそうだ。
この研究は『The Astrophysical Journal』(2023年9月5日付)に掲載された。
References:Vast bubble of galaxies discovered, given Hawaiian name / This Ginormous Bubble of Nearby Galaxies Could Be a Relic of The Big Bang : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
「よどみにうかぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
(-_-)宇宙の寿命も本当は一瞬なのかもしれません
2. 匿名処理班
今の技術でぎりぎりセウト状態なんだからビッグバン前提の理論はもう信用できんだろ
また技術が発展したら何かしら覆るぞ
3. 匿名処理班
宇宙!スペースナンバーワン!
4. 匿名処理班
ビッグバン直後から10億年ほどの間、時間の流れは現在より5倍ほど遅かったという最近の研究結果や宇宙の年齢は推定されていた137億年の2倍近い267億年ほどであるという説も発表されているけどそれとの関係性はどうなんだろう?
宇宙はこれまでの推定より2倍古い可能性。宇宙年齢を再定義、137億年ではなく267億年 : カラパイア
https://karapaia.com/archives/52324141.html#entry
5. 匿名処理班
そう遠くない宇宙(8億2000万光年先)
まあ宇宙全体の広さから見ればね・・・
6.
7. 匿名処理班
ビックバンって点から生じたのではく、いくつかの点の集合体からはじまった?
宇宙が生まれる前にプラズマの池?
無の状態ですでにプラズマがあるんですが?w
それにプラズマの池に中性子がすでにあるってことは物質が存在してるんじゃ?w
8. 匿名処理班
バリオン音響振動というカッコイイ単語にひかれた。宇宙の誕生間もなくでも物理法則はきちんと仕事してたんだなあ。
9. 匿名処理班
>>2
いままでの最適解が「ビックバン理論」だっただけで、「理論」なのだから別に変っても何ら問題ないっすよ
10. 匿名処理班
ハワイ神話の方の「ホオレイラナ」について知りたくなったのだが、このバリオン音響振動に関するニュースに埋もれて情報を拾えない。クムリポの叙述ではなにがあったんだろう?
11. 匿名処理班
ハッブルの後継カメラが稼働してから、こういう遠いところの情報がどんどん更新されて気持ちいいな
ちゃんとソース出してこういう話題を取り上げてくれるカラパイアさん応援しております。
12. 匿名処理班
ビッグバンが起きる前の状態はどこからやってきたのか問題。
13. 匿名処理班
ホレハラヒレ ┐(´д`)┌
14. 匿名処理班
>>7 ん?ビッグバンの前は関係無いよ。
ビッグバンの爆発から38万年間、宇宙は高温高圧のプラズマで一杯だった。爆発の衝撃でプラズマ内部には沢山の波が生じた。プラズマが冷えて物質になった時、波の形状が銀河の分布になって残った。という話だから。
15. 匿名処理班
ビッグバンの前がどうなっていたのか納得がいく説明をしてもらうまで私はビッグバン理論を信じない。
精密な計算と理論で宇宙を解明したいのに「むかしむかし、ビッグバンがありましたとさ」って根底がざっくり感で世の科学者は気持ち悪くないのかしら?まぁ、ビッグバンって事なら説明付くんで。みたいな都合のいい解釈は断じて受け入れなれない。なんでも「ビッグバンありき」で、ビッグバンに寄せて理論を組み立ててる。
「実はビッグバンとかなかったんで」ってなったら今までの研究も全てパーでしょうに、その恐怖はないのかしら?
…以上、おばちゃんの戯れ言でした。
16. 匿名処理班
>>15
「ビッグバンが起きたか否か」と
「ビッグバンの前はどうなっていたか」というのば別問題だよ。
「ビッグバンが起きた」という説は
宇宙の膨張や銀河の分布、軽元素の存在比率など
いくつもの観測証拠が根拠になっている。
別にビッグバン以前のことが分からなくても
ビッグバンが起きたことが否定されるわけではない。
17. 匿名処理班
>>15
ビッグバンはどちらかというと結果みたいなもんなんよ。
ビッグバンで宇宙が出来たんじゃなくて、宇宙が出来たからビッグバンが起こった。
宇宙の始まりは書き出すと長くなるけど、とりあえず四つの力が影響しない場所は宇宙にはないじゃん。
そんで四つの力は元々一つだったはず、って仮定から始まって、
めちゃめちゃ小さい点にでもしないと一つにならなくね、ってなって、
実際内二つの力は一つに統合出来ることが証明されて、
なんか宇宙膨張してるじゃんって観察されて、
膨張してるなら時間巻き戻したらやっぱ点じゃん、ってなって、
なにもない無の状態でもどこからか粒子飛び出るじゃんって発見されて、
どうにか粒子が消滅しなければ点が相転移してエネルギー爆発して今の宇宙になるじゃん、ってのがめっちゃざっくりしたまとめ。
ビッグバンはエネルギー爆発の部分だけね。詳しく知りたければインフレーション理論でググろう。
18. 匿名処理班
>>15
ついでに加えると、残念ながら宇宙が出来る前を計算と理論で解明はできない。
何故なら物理法則が違うから、計算も理論もやりようがない。
仮に再現出来て観察しようとしても再現した瞬間今の宇宙消えて無くなっちゃうし。