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チンパンジーは人間のような軍事戦略を使っている。高台を利用して対立グループを偵察

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(著) (編集)

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 チンパンジーは我々人間に一番近い近縁種だとされている。最新の報告によると、彼らはまるで人間の軍隊のような高度な戦略まで用いることがわかったそうだ。

 高台にのぼって敵の群れの様子を偵察し、その縄張りを侵略するか、撤退するかを決めるのだという。

 「戦術的な戦争は、人類が進化するうえでの原動力になったと考えられています」と、ケンブリッジ大学の生物人類学者シルヴァン・ルモワーヌ氏は説明する。

 「こうした縄張りの防御や拡大につながるチンパンジーの行動は、複雑な認知能力が必要なもので、自然淘汰が好むものでもあります」

チンパンジーの軍事戦略にみられる偵察行為

 この研究は、コートジボワールにあるタイ国立公園で3年間(21000時間以上)にわたり、隣あった縄張りを持つ2つのチンパンジーの群れを観察したものだ。

 その結果、彼らは高台にのぼり、相手の群れの様子を偵察するらしいことがわかったのだ。

 そう言えるのは、縄張りが接する境界付近では、縄張りの内側に比べて、高台にのぼる頻度が2倍以上も高かったからだ。

 チンパンジーは時に血生臭い事件を起こすことでも知られる動物だ。そんな彼らは、高台にのぼると、騒いだり、餌を探したりすることなく、じっと静かにしている。

 それは相手の群れが立てる物音に聞き耳を立てるためだ。そうやって相手の居所を探り、前進するか後退するか戦略的に判断し、危険な対立を最小限に抑える。

 ミーアキャットのような哺乳類でも、身を守ったり、コミュニケーションするために高台を利用することがある。

 だが、チンパンジーのそれは、その背後に戦略的な意図であるという点で特別なものだ。

テリトリーを支配するために地形を利用することは、私たちの進化の歴史に深く根ざしています。

チンパンジーによる戦争を思わせる戦略には、先史時代の狩猟採集民が行っていただろう小規模で原始的な戦争の痕跡を見てとれるでしょう(ルモワーヌ氏)

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イ国立公園での研究では、高台にのぼり対立する群れの物音に聞き耳を立てるチンパンジーの様子が観察されている / image credit:Roman M. Wittig/Tai Chimpanzee Project

チンパンジーのスパイ大作戦。相手の縄張りを侵略

 ルモワーヌ氏によれば、特に興味深かったのは、チンパンジーの縄張り境界での偵察中の行動だったという。

 それは連携プレーの狩りを思わせるもので、チンパンジーは小さなグループに分かれ、物音を立てないように整然と移動する。

 また彼らは相手の群れの様子を探るために、境界近くにある高台をよく訪れる。レモワーヌ氏によれば、それは見張り台ではなく、“耳”張り台であるという。

 つまりチンパンジーは相手の姿を目で観察するのではなく、その物音に聞き耳を立てるのだ。

 そして相手が遠くにいると思えば、境界を越えて前進する。例えば、相手の群れが3キロ先にいる場合、60%の確率で敵の縄張りに進入した。

 そうやって自分たちの縄張りを広げることができれば、餌も交尾の相手も獲得しやすくなるし、仲間内での摩擦も減るだろう。そうしたことは、より多くの子供を残すことにつながる。

 こうした偵察によって、群れ同士の直接的な衝突は確かに減る。

 だが、それでも暴力的な揉め事が完全になくなることはなく、観察中には死者が出るような喧嘩や、誘拐事件が起きたりすることもあったという。

2、3頭のオスでなる襲撃部隊が敵の縄張りに侵入し、戦いになることもあります。

対立するチンパンジー同士の対決はとても騒々しいものです。激昂して威圧し、叫び声をあげ、排泄し、互いの性器を握ります

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photo by iStock

 こうした複雑な戦略的行動は、これまで人間特有のものと考えられていたが、必ずしもそうではないようだ。

 それは人間と動物の知能の境界が、それほど明確なものではないということなのかもしれない。

 この研究は『PLOS Biology』(2023年11月2日付)に掲載された。

References:Wild Chimpanzee Research | Tai Chimpanzee Project / Chimpanzees conduct military tactics when spying on other tribes / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 21件

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  1. 人間がチンパンに似てることは哀しいことだな、ゴリラに似ればよかったのに
    でもそれだと進化しなかったのかな

    • +4
    1. >>2
      マイケルクライトン小説の失われた黄金都市だと
      鉱山の警備員として使ってたゴリラがダイヤモンドの
      鉱脈を探していた調査隊を次々に襲ったぞ
      細かい話と結末は読んでのお楽しみだ

      • -5
      1. >>6
        チンパンジーにしとけばよかったのに。チンパンジーは過去の恨みを覚えていて、白人に襲われたら白人をと言ったように復讐する事があるから話も成り立つ。
        リアルなゴリラは超ビビりだから襲われでもしない限り危険を感じたらしっぽ(ないけど)巻いて一目散に逃げるよ。

        • +2
      2. >>6
        フィクションとの境界が曖昧になるってこれか

        • +4
    2. >>2
      ネアンデルタール人がゴリラ的な気質だったんではと言われてるね。でも攻撃的なホモサピエンスに滅ぼされたっぽいけど。

      • -1
      1. >>9
        「野蛮なネアンデルタール人」から華麗に「平和を愛するネアンデルタール人」になったよねw
        欧州事情は複雑怪奇!

        • -1
        1. >>18
          そんな単純な理由で学説が入れ替わったりはしないよ
          あなたの物の見方が単純だから相手もそうかのように見えてるだけ

          • +1
      2. >>9
        ネアンデルタール人は滅びたというより、クロマニヨン人と同化して消滅したと言った方が正しい。
        実際にネアンデルタール人の遺伝子が、現代人の中に残っている事も判明してるからね。

        • +2
    3. >>2
      おそらく温和な性格な人類は淘汰されやすかったんじゃないかな。

      いつこん棒を使って殴るヤツが出るかなぁ。月を見てるチンパンがいたら気をつけろ

      • 評価
  2. 程度の差はあれ、攻める対象を偵察することは
    割と多くの生物がやってるんじゃなかろうか。
    スズメバチもミツバチの巣を偵察したりするし。

    • +1
    1. >>3
      ライオンも他の群れとの縄張り争いとかでは戦略的だよ。
      わざと一匹だけ群れから引き離して、リンチにかけて見せしめにする。
      相手の群れが降参するまで殺さず生かしながら二度と助からない怪我を負わせて
      助けを求めさせて、相手の群れに見せつける行為が観察されてる。

      • +3
  3. ヒトのベースは、チンパンジーの時点である程度出来上がってたんだなって

    • +3
  4. チンパンジーだったかな?子犬を攫ってきて育てて
    用心棒にする話もある。

    • 評価
  5. 先日の記事にあった人類最古の戦争の御先祖みたいな物かもね

    • 評価
  6. 「あの丘の向こうになにがあるのか、それを考えるのが半生だった」
    は誰だったかな?航空偵察登場前に人だったとは思うが。
    チンパンもそういう悩みあんのかね。

    • 評価
  7. 争いは人間だけでなくあらゆる生物の宿痾だわね。
    ある程度狡賢く他の集団を出し抜く力は生存競争の一側面だし、進歩し他より抜きん出ることは間接的に他集団を圧迫するんだ。
    目に見える暴力だけが戦いではない。

    • +2
  8. チンパンジー「地の利を得たぞ!(I have the high ground.)」

    • 評価
  9. これは本で読んだ話だが、チンパンジーの群れでは若いオスが自分たちの縄張りを
    定期的にパトロールするんだそうだ。
    そして隣の縄張りのパトロール隊と鉢合わせすると、大多数はその場で戦闘を開始し、
    残りの少数が群れに戻って応援を呼ぶ、と言う事をしてたんだそうだ。
    これと同じような事を米軍がベトナム戦争でやってたんだよな、まぁ機動力は違うんだけどさ。

    • +1
  10. オラウータンも旅のオラウータンへ親切に接して騙し、誘い込んでから殺害する行動が知られてる

    • 評価

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