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霊長類の母親が死んだ子供の遺体を数か月間持ち運ぶ理由は、深い悲しみからきている

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(著) (編集)

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 家族の死はいつも辛いものだが、子供に先立たれた母親の悲しみはひときわ深い。

 それは人間ばかりでなく、サルなどの霊長類も同じであるようだ。だから彼女らは、その悲しみの深さを、我が子の遺体をいつまでも連れ歩くことで表現する。

 『Proceedings of the Royal Society B』(21年9月15日)に掲載された研究では、霊長類の母親が行う「赤子の遺体運び」と呼ばれる行動を分析し、彼女らが死を意識している可能性について示唆している。

子を失った母ザルたちが見せる悲しみの表現

 英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンや京都大学などのグループによるこの研究では、霊長類の行動に関する126の文献に記載されている50種409件の事例を分析している。

 そして判明したのは、霊長類の8割の母親に、我が子の死体を運ぶという行動が見られるということだ。特によく行うのは類人猿とオナガザル科で、この仲間は死体を連れて歩く期間ももっとも長かったという。

 一方、キツネザルのような、はるか以前に分岐した種では、こうした行動は観察されていない。

 とは言っても、この仲間が子供の死を悲しまないということではない。

 彼女らは彼女らで、我が子の遺体に戻ったり、「母と子のコンタクトコール」(連絡を取り合うための音声)を上げたりといった形でその悲しみを表現する。

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我が子の遺体を持ち運ぶ母ザル / image credit:Alecia Carter/Tsaobis Baboon Project

霊長類は死を学び、悲しみに対処する

 アレシア・カーター博士は今回の研究について、「霊長類が人間と同じように死を学んでいる可能性」を示していると述べている。

死が、人間が理解しているように永遠の”機能停止”であるとわかるまでには、経験が必要かもしれません。

ただし霊長類が、死はあらゆる動物に普遍的なものであり、自分もまた死ぬのだと理解しているのかどうかわかりませんし、今後もわからないでしょう

 また今回の研究は、人間以外の霊長類が、悲しみにどう対処するのかという点についても示唆しているという。

死産を経験した人間の母親の場合、赤ちゃんを抱くことができれば、重度のうつを発症する可能性が低くなることが知られています。というのも、絆を表現する機会がえられるからです。

霊長類の母親も、喪失感と向き合うために、そうした時間が必要なのかもしれません。このことは霊長類や一般的な哺乳類にとって、母と子の絆がいかに強く重要であるかを示しているでしょう

母親の遺体運びにおける傾向

 母親が子供の遺体を運ぶかどうかは、親の年齢や死んだときの状況が関係しているようだ。

 たとえば母親が若いほど子供の遺体を運ぶ傾向にある。しかし死因が事故や子殺しのような外傷によるものである場合は、病気で亡くなった場合に比べると、遺体を運ぶことが少ない。

 また遺体を運ぶ期間は、母と子の絆の強さに左右される。幼い子供ほど母親は長く運び続けるが、乳離れをする年齢の半分に達していると、急激に短くなる。

 こうした観察結果について、エリサ・フェルナンデス・フエージョ氏は、「死亡時に子供との絆が強かった母親ほど長く遺体を運んでおり、感情が重要な役割をはたしている可能性」があると説明する。

 「ただし今回の研究では、それまでに経験した死や外部の手がかりといったものによって、死についての認識が深まれば、喪失感などの感情を抱えながらも、子供を手放そうと決意する母親がいるだろうことも示されています。」

死んだ我が子を持ち運ぶ母ザル[日本語字幕版]

霊長類の遺体運びは人間の葬儀に似ている

 フエージョス氏によると、霊長類が見せる死への反応は、特に母子の絆によってうながされている可能性がうかがえるという。そして、それは人間の習慣とも関係しているかもしれない。

私たち人間は彼らと進化の歴史を共有しているために、人間の社会的絆もまた霊長類のものと似ています。それゆえに、人間の葬儀や悲しみは、社会的な絆に由来するものである可能性が高いでしょう

 今日、人間以外の霊長類で見られる死に関する行動は、初期の人類もやっていた可能性がある。それが進化を経て変化したものが、今私たちが行っているさまざまな葬儀や習慣なのかもしれない。

 なお今回のグループは、こうした死に関する行動を究明するために、「ThanatoBase」というサイトを立ち上げ、データの提供を呼びかけている。それは人間以外の霊長類の死を扱う”生きたデータベース”だ。

References:Primate mothers may carry infants after death | EurekAlert! / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 24件

コメントを書く

  1. 忘れるのか諦めるのか乗り越えるのか
    聞くことは出来ないけれど悲しい気持ちはきっと同じだよね

    • +17
  2. 母猿が子猿の足を持って引きずってる動画があったけど痛くないのかな

    • +1
  3. これ、クジラでも確認されてるね…実は、霊長類に限った話でもないのでは?

    • +14
  4. 以前公共放送で動物には愛情も悲しみもないという学者が
    逝っていたが、どう見ても愛も悲しみもあるような行動だぞ
    一体何を研究して結果出したのだ

    • +15
    1. ※6
      それって鳥が卵を温めるのは卵が冷たくて気持ちよく感じ結果的に卵を温めることになるから〜みたいなやつかな?
      その先生の理屈だと親の子供に対する愛情は子育てするよう放出されたホルモンによるものだけど、子供を失った哀しみはまた別の理屈で哀しいと感じるようになってるんだろうね

      • +1
  5. 猿の思考を検証出来ないのならば、なんとでも言えるわな

    霊長類の母親が死んだ子供の遺体を数か月間持ち運ぶ理由は、深い悲しみからきているのならば、人間も同じ行動をするはず

    よって、深い悲しみではなく、死を認知できないからと解釈もできる

    • -23
    1. >>7
      深い悲しみの気持ちの現れが、たった一種類しかないと思ってんのか…?
      それこそ人だけでも、時代年齢国人種で概念からして違ってくるのに

      あと、日本でも持ち歩きこそしなかったけど、遺体が完全に骨になるまで近親者が見守る殯という風習はあった
      国外でも先祖の遺体と普通に同居する風習のある部族とかあるし…まあこれらは悲しみからのものとはまた違うけど
      死を認知出来ないからという解釈や思考を検証しないと何とも言えないってとこは大いに同意できるけど、
      流石に猿と人間が同じ行動しないからダウトってのは短絡的すぎる

      • +20
    2. ※7
      墓を建てたり遺影を飾るのは当然として遺品だの遺筆だの最近ならSNSのアカウントだのをいつまでも残しておいたりするやん

      • +6
    3. ※7
      人間の思考(感情)も科学的には証明できていません。脳内のニューロンや神経伝達物質・電気信号などはハードウェアとしての人間の構造に過ぎず、それらがどうやって意識や思考・記憶を処理しているのかは、いまだかつて誰一人として説明できた研究者はいません。又、人間の思考など、はるかに進化した知的生物から見れば、アリと同等レベルに見える原始的なものです。思い上がりは種の存続を危うくしますよ。

      • -1
      1. >>25
        えっ、人間より遥かに進化した知的生物が発見されてたの!?いつどこで?何ていう生き物?
        正式に認められた論文や発見報告はどこに行ったら見られるの?
        アリと同等レベルと証明された信頼に足る比較実験結果はどこにあるの???

        • 評価
        1. >>26
          亀なら上に横からで申し訳ないけど
          要するに「現時点の人間の科学で全ての森羅万象を解明出来ると考えるのが烏滸がましい」ってことでしょ
          それこそ人間ご自慢の医学だってわずか120年くらい前まで伝染病の原因が細菌だってことすらわかってなかったんだし
          それこそ人間より知能が高いとされるもの…存在する動物ならイルカとか、存在を物質的に証明できない神様とかには「人間って馬鹿だなー」って思われてても不思議ではないって話じゃね

          • +2
    4. >>7
      そもそも人間は一定期間後に葬式→埋葬→死亡届を出すって常識や法律の括りがあるじゃろ
      人間基準にして動物の感情測ろうってのが無理あるんじゃないの

      • +1
  6. わかる。すごく解る。涙

    ほかの種でも哺乳類は愛情が深いよね
    進化の過程や環境やオキシトシンとかどうとかあるのだろうが
    愛が深いほど、悲しみも深いよね

    困ったことに、
    深すぎて大きすぎて、時間かかっての少しづつでは、
    ちっとも薄まらないんだよ。

    もし輪廻があって、生まれなければならないなら、
    次は植物になりたい。

    • +6
  7. かたや、育児放棄したりする個体が有ったりとか、不可思議だよね

    • +7
  8. ヒトの感情も進化の過程で取得してきた物、その証明にもなる研究ですね
    進化によってヒトは複雑で多様な感情を得てきた
    当たり前に感じるかもしれませんが研究で証明されるのは良い事

    • +6
  9. 猫は死産するとその子を食べるよ。
    頭だけは硬いので残して…
    小さな子供が死んでもやはり食べる。

    悲しまないわけじゃない。
    子猫がいなくなると大鳴きして探し回るからね。

    象は子供が死ぬとそこから数日離れないそうだ。
    その間、子供を突いたり、持ち上げて支えて歩かそうとしたりする
    そして死を理解すると、わが子をそのままにして立ち去るそうだ。

    何がいいたいかというと、猿に関してはこれが悲しみであることがわかる。
    ほかの動物にも悲しみの感情はあり、これ以外の他の形で現れているという話。

    • +17
  10. 以前、動物番組で見たわ。
    群れで暮らしてるから他のメスたちには子供がいる。
    でも自分の子は死んでしまって動かない。それを受け入れたくないのか、いつまでも抱っこして毛づくろいもしていた。
    でも木々を飛び回ると子供の死体が落っこちてしまう。
    (猿は赤ちゃんが自力で親にしがみつき、親は木に掴まるため移動時は手ぶら)
    それでも大事にしていたが、次第に死体が腐り始めてボロボロになると、やっと諦めがついたのか死体から離れていった…。

    • +13
  11. 子供を育てる為に母性があるんじゃなくて、母性があるから子供を育てる

    • +8
  12. マカクやイルカの他、象もやるよね鼻で引き摺って少々荒っぽいが
    悲しみは否定しないけどオキシトシンとかの作用な気がする
    やり場の無くなってしまった保護欲の対象が欲しいとか‥
    マカクとかが仔猫を攫って来たりとか

    • +5
  13. まあ子供に関連する感情を紐解いていくとホルモンに由来する感じはある
    だって、すごくエネルギーを奪われるものだし
    哺乳類以下では繁殖=死の生物も多い
    だからこういう話は感情に訴えかけてくる反面、虐待のニュースはホルモンの合成が上手くいかなかったんだねって思ったりもする

    • +2
  14. 動物園で飼われてる猿なら、獣医もいるし設備も整ってるし、風邪をこじらせたくらいで死ぬような事はなかっただろうが、

    野生の猿に人間が介入して獣医に手当てをさせたりしたら、元気になったとしても、再び群れに戻る事は出来ないだろうな。

    野生の掟はかくも厳しいのか……

    • +2
  15. 母猿が小猿がもう亡くなってるって気づいた瞬間の動画みたことあるけど、多分ビックリしすぎて母猿おしっこ漏らしちゃってた
    何回も起こそうと頑張るんだけど駄目で、それでもずっと抱きしめてた

    • +4
  16. 人間には死体でなくても、その子が居たという証を目に見えるもので残して置けるもんね。
    自然界ではそうはいかないから、その子自身が無くなったら、その子が居たという証すら残らない……そう考えると、深く共感してしまうのは私だけかな。

    • +4

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