
つまり確率を踏まえたうえで、できるだけお得な行動をとれるのだ。
これまでもカラスは知能が高いことで知られていたが、これほどまでに賢いとはびっくりだ。この驚きの事実は、ドイツ、テュービンゲン大学の研究により明らかになったものだ。
カラスとうまく共存することができれば、人類のよき仲間となってくれるかもしれない。
なぜカラスは頭が良いのか?
カラス科(一般的なカラスやワタリカラス、カササギなど)は、とても身近な鳥だが、それでいて特別な生き物だ。とびきり頭が良いのである。なにしろ当然のように道具を使いこなし、人間のための清掃要員として採用されたり、良くしてくれた人間に対してはカラスの恩返し的な行動をしたりと、その頭の良さはそこかしこで観察されている。
さらに足し算や引き算のような基本的な算数だってやってのける。一説によると、その知能は7歳児に匹敵するという。
なぜカラスはそんなにも頭がいいのか?
その秘密の1つは、体の大きさの割に脳が大きいことだ。しかも、そうした特徴は「前脳」にはっきり表れている。ここは人間なら統計的・分析的推論に関連するとされる領域だ。

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ならば彼らはデータを読み、統計的推測すら可能なのだろうか? ドイツ、テュービンゲン大学の研究チームは今回、この疑問を探っている。
カラスは統計を理解し確率を推測することができるのか?
いくら賢いとはいえ、カラスに算数のテストを解かせるわけにはいかないから、彼らの数的能力を調べるにはちょっとした工夫が必要になる。言葉や文字を使わず、行動で計算能力を示せるように訓練するのだ。
例えば今回の実験では、まず2羽のカラスに、タッチスクリーンに映っている絵をつつくと、おやつがもらえることを教えた。
カラスがこれを習得したら、さらに難易度を上げる。今度は絵をつついても、おやつが出るときと出ないときがある。つまり「確率」の要素が導入されたのだ。
実際の実験では、2羽のカラスに、おやつが出る確率が異なる2枚の絵を見せて、つつかせた。
おやつをできるだけたくさん食べるためには、確率が高い方の絵をつつき続ければいい。だがそれをするには、確率を踏まえた抽象的な数を理解していなければならない。

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カラスは統計的推測ができることが判明、しかもずっと覚えていた!
2羽のカラスを10日間訓練して、5000回ほど絵を選ばせてみたところ、彼らはおやつが出る確率が高い絵をつつき続けたという。「統計的推測(統計的推論)」を見事にやってのけたのだ。統計的推論とは、ある状況についての限られた情報をもとに推測して、どう行動するべきか決定することだ。小難しく聞こえるが、こうしたことを私たちは普段からやっている。
例えば、近くにあるカフェに行くとしよう。
候補のお店は2つ。どちらも同じランクの人気店だが、自分が利用したい時間の混み具合が違う。どちらもそれなりに混んでいるのだが、経験上片方は席につけないことが多かった。
そんなとき、いつもその時間に空いている方の店を選べば、席につける可能性が高い。それは絶対確実ではないが、良い選択肢と言える。
これと同じように、カラスはタッチスクリーン上の絵とおやつをもらえる確率との関係を理解し、より良い選択肢を選んだのだ。
しかもカラスはそれをずっと憶えていられる。
この実験から1ヶ月後、今度は訓練なしで同じテストが行われた。
するとカラスはぶっつけ本番だったというのに、おやつが出てくる確率を憶えており、やはりたくさんもらえると期待できる絵をつついたのだ。

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高い知能で都会の環境に順応していった
カラスは都市の環境にうまく適応した数少ない動物だ。それができたのが、その高い知能のおかげであることに疑いの余地はないという。例えば、冬になれば、比較的暖かいトンネルなどの人工物を利用する。つまりカラスはしたたかにも人間をすら利用しているのである。
研究チームのメリッサ・ジョンストン氏の考えでは、こうしたことができるも、カラスの統計的推論のおかげだろうという。
「カラスにカフェはないでしょうが、エサを食べられる確率が異なるさまざまな場所を訪れているのでしょう」
この研究論文は『Current Biology』(2023年6月26日付)で見ることができる。
追記:(2023/09/20)本文を一部訂正して再送します。
References:For the first time, research reveals crows use statistical logic | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ゴミの日とか朝イチで待ってるからな、カラス
2. 匿名処理班
>>1
カラス父「今日はゴミの日や! 稼いでくるでー!」
カラス母「大物期待してるわ」
カラス子「パパ〜 頑張ってー!」
カラスって数を理解し計算する能力もあるって過去記事でも紹介されてましたよね
賢すぎるぜカラスさん。カラスは点の集合を理解し、数神経細胞を使って人間のように計算ができることが判明 : カラパイア
https://karapaia.com/archives/52194391.html#entry
3. 匿名処理班
あいつら燃えないゴミの日の曜日とか知ってるぞ
年末年始とか長期休暇中休みだと上空で戸惑いの声があがるから面白いぞ
4. 匿名処理班
>>1
この話だと「出し方が悪い奴がいる場所」も覚えていそう
5. 匿名処理班
人間目線で動物を馬鹿にしすぎ
少なくともすべての哺乳類は統計的推測(統計的推論)を持っているだろうに
記憶の能力があるのだから
6. 匿名処理班
射幸性煽ったら確率1/10で10個出るボタンと1/100で100個出るボタンなら後者を押すようになるんだろうか?
7. 匿名処理班
単純に見た目が可愛いからカラスが好き。真っ黒の生き物って素敵だよね
8. 匿名処理班
>カラスは都市の環境にうまく適応した数少ない動物だ。それができたのが、その高い知能のおかげであることに疑いの余地はないという。
ネズミとハクビシンとある種の昆虫は・・・
9.
10. 匿名処理班
>>4
当たりのゴミを捨てに来る人間もマークしていそう
11. 匿名処理班
例えば夏にスーパーや本屋なんかの駐車場でカラスを観察してるとよく車に張り付いた虫の死骸をついばんでるんだが、あいつらまずSUVとかクロカン車から物色し始めるからな。
虫が衝突しやすい場所に行きがちな車をよく分かってる。
12. 匿名処理班
>>4
狙われるゴミ捨て場は限られているから
荒らしやすい・食料が得られやすい場所は覚えているんだろう
逆に言えば一回でも食料が得られた経験があると
金網で堅牢に守られたゴミ捨て場であっても無駄に待ち続けてしまう
13.
14. 匿名処理班
>>1
俺はしょっちゅうゴミの日忘れるのになぁ…
15.
16. 匿名処理班
>>5 けしてバカにしてる訳じゃなくて、いくらニンゲンが感覚で確信したとしても科学的に証明するのが難しいんじゃない?
17. 匿名処理班
>>12
優良物件に関する情報をカラス同士で共有し合うのか?
それとも独占しようとするのか?
そのあたりが気になるところです
18.
19. 匿名処理班
>>8
ネズミの知能をなめちゃいけない迷路実験とかで垣間見える記憶力と学習能力には舌を巻くぞ
20. 匿名処理班
今日偶然、アメリカズ・ゴット・タレントでキーボードを弾くメンドリを見たよ。たっぷり20秒以上は旋律を弾いてたから、たいしたもんだ。
21. 匿名処理班
>>5
カラスの話をしてる
哺乳類が頭がよくても鳥類がそうとはかぎらないでしょ
22. 匿名処理班
カラス以外の動物では試したんだろうか?
餌が手に入る可能性が高い場所を覚えるくらいは
大抵の動物がやってそうだけども。
23. 匿名処理班
>>3
だな。少なくともウチの周辺のカラスは生ゴミ日とプラゴミ日は確実に覚えて区別してる。生ゴミ日は朝のカラスが露骨に多い。そてスキのある?袋が解体されてる。プラゴミ日は同じような袋が出てくるが他の日と変わらん。勿論解体される袋はまず無い。
恐らくは地区別に覚えてて巡回してるんだと思うわ。
24. 匿名処理班
>>22
野良犬野良猫あたりは普通にやりそうよね。
25. 匿名処理班
>>16
文章を理解してない
できないことを前提にできることの証明をしているから、人間の上から目線だと言っている
人間も動物と同じだという謙虚な意識があるのなら、できることを前提にできないことを証明をするべき
26. 匿名処理班
>>25
それは科学的態度ではない。
何かが証明されるまでは、それはそうではないものとして扱わねばならない。
27. 匿名処理班
>>25
「できること」「できないこと」を前提なんて全く意味がない
どちらも「証明」するなんて単語の時点で人間の上から目線である点も何も変わらない。確かにわかっているならば証明しなくても万人が納得しているだろう
ただ「証明しなくても万人が納得する」は単なる共通認識であって科学的態度でもないし、証明すらされてない
例えるならば「太陽が明かる」理由は誰もが証明しなくても明るいけど、何故明るいかを科学的根拠を元に説明できるようになるまで長い年月がかかってる