
一方でイタリアのように、培養肉の生産や販売を禁止する動きもある。
環境にやさしいはずの培養肉だが、新しい研究によると、今の技術で作る培養肉が市場供給の規模にまで拡大した場合、現在の畜産による二酸化炭素排出量の4倍から25倍を生み出すという。
従来の畜産業よりも、環境に悪影響を及ぼす可能性があるというのだ。ただし『journal bioxriv』に掲載されたこの研究は専門家による査読はされていない。
広告
培養肉の二酸化炭素の排出量は従来の肉よりも大きくなる
「生きている動物を飼育して得られる肉よりも、環境に優しいという論理のもと、数十億ドルが培養肉に投資されている」とこの研究では説明されている。確かに、研究室の培養肉なら、家畜を育てるための土地、水、抗生物質はいらない。しかし、本研究にたずさわる研究者たちは、培養肉の市場が拡大するにつれ、二酸化炭素(CO2)の排出が増えるという欠点があることに気が付いたという。
CO2レベルの増加は、精製プロセス中に、培養細胞に栄養を与えるのに必要な化石燃料と関係しているという。

現在の培養肉の精製法に問題点
培養肉を作る際、その環境にいるグラム陰性菌がエンドトキシンという内毒素を放出するが、これの除去が不可欠になる。増殖培地内にこれらの毒素が少しでもあると、細胞の再生が妨げられてしまうのだ。「動物細胞の培養は、従来、エンドトキシンを除去、低減するために精製された成長培地成分を使用して行われてきた」と研究著者は書いている。
「こうした精製方法の利用は、エネルギーと資源の両方を大量に消費するため、医薬品に関連する経済的、環境的コストに大きな影響を与える」
高度に精製された成長培地を継続的に使用すると仮定して、培養肉1kgあたり246kgから1508kgの二酸化炭素を排出すると見積もった。
これらの数字に基づいて、培養肉の地球温暖化係数は、小売り用の牛肉の4倍から25倍と算出された。

photo by iStock
培養肉産業の持続可能性の再評価
本研究によると、もうひとつの問題は、培養肉の気候への影響に関するいくつかの報告が、存在しないか、機能しない可能性が低い非現実的な技術に依存していることだという。こうした例として、シアノバクテリア加水分解を利用することによる、培養肉生産の二酸化炭素排出量を計算した研究がある。
しかし、現在の分析では、動物細胞増殖のための技術や原料として、現在、あるいは実現可能なものではないと指摘されている。
研究著者たちは、その解決策を提案して、より多くのエンドトキシンに耐えることができる細胞株を作ることを進めている。
これによって、エネルギーを大量に使う精製手順の必要性が減り、最終的に、培養肉による環境負荷を軽減することができるという。
これらの研究は、培養肉産業の持続可能性について再評価するきっかけを提供している。
一方で、この研究がまだ査読を受けていないことから、その結果がどの程度信頼できるのかは不明だ。
これからの研究でこの疑問を解明し、培養肉が本当に環境にとってより良い選択肢なのかを明らかになることが期待されている。
追記:(2023/05/19)タイトルを一部訂正して再送します。
References:New study finds lab-grown meat produces up to 25 times more CO2 / written by konohazuku / edited by / parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
そらその培養に使う機器の電力はどうやって作ってるんですかってことよね
それでも将来自然の肉が汚染されて食えなくなる未来がありえるので、
技術を生み出していかなければいけない。
2. 匿名処理班
生物の肝臓の機能を完全再現しようとすると、建物一個分になるって話みたいに、もともと自然の機能として存在してるものを人工的に行おうとするとコストがバカ高くつくし全然環境に良くないって教訓がまたひとつ増えそう。
3. 匿名処理班
培養肉も電気自動車も環境のためと言いつつ逆にco2増やしてるパターン多いな
4. 匿名処理班
メタンは?
5. 匿名処理班
25%じゃなくて25倍!?
6. 匿名処理班
まーた、マーガリンVSバターみたいな情報合戦するのかね。
叩かれたマーガリンは改良の結果、
トランス脂肪酸がバターよりも低くなったって話を聞いて笑ったわ。
-----
>100gのバターには1.9gのトランス脂肪酸が入っていますが、
>同じ量のマーガリンには0.99gしか入っていません。
7. 匿名処理班
鶏や豚はそこまで多くの温室効果ガス排出してないんだし、牛からのメタン排出の削減も開発進んでるし肉食べればいいじゃん。
8. 匿名処理班
「〜食材は地球を救う」系の環境ビジネスも科学的に批判してやってくれ。こうした研究者への予算配分も慎重にな。
9. 匿名処理班
ガンダムのスペースコロニーは培養肉工場だったのかもしれん
10. 匿名処理班
まあそれが本当でもまだ黎明期レベルの技術だしこれからかなと
11.
12. 匿名処理班
やってみなくちゃ分からない、と言うのは無責任か
でも実際培養細胞の耐性向上は生産コストを押し下げてくれそう。前向きな提案もあると後ろ向きな報告も受け入れやすいね
13. 匿名処理班
実験室ベースだからね
商用になるころには改善されてるでしょ。そうでないと利益出せないから
14. 匿名処理班
査読すらされていない信頼度の研究結果に何の価値もない
一喜一憂している人が滑稽
15. 匿名処理班
広大な放牧地が必要なくなるんだし、トータルで考えたらやはり普通に動物育てるより環境にやさしそう
16. 匿名処理班
培養肉に限らず昆虫食、再生可能エネルギー、EV、プラスチック削減なんかの環境保護を建前としたビジネスにおいて
推進派と否定派の双方でそれの根拠を示す論文やデータは必ず提示されるけど
両者それぞれに利害関係のバイアスがかかっているものだから
数学や物理のように数式で証明できないデータはいくらでも誤魔化せる
何が真実で何が捏造かなんて当事者にしか真相はわからないよね
17. 匿名処理班
コストはエネルギーや資源の消費量に相関する。
ホンモノより安くならないと、CO2削減なんてできないという事。
ブレークスルーがない限り、補助金(税金)で穴埋めするビジネスでしかない。
18. 匿名処理班
個人的に培養肉に期待してるのは安心して生食できる無菌肉だから多少コストが増える点はあんま気にならない
19. 匿名処理班
30年前ですが かなりのCO2吹き込ませて培地のpH調整してたしなあ。 がん細胞でこの成長速度なら 食べれる量作るの大変よね〜とはゆってたのよ。、、、まだ 希望持ってていいんですよね、、、食肉培養技術が成熟するまでは しもじもの わたくしどもは 屋根やベランダに 大豆でも植えときましょうね。
20. 匿名処理班
>>10
>>12
実際やってみないとわからないヤツだからやればいいのよ
培養肉の技術を医療系にフィードバックすることも可能だろうし
「いまが○○」も将来的な技術進歩で変わっていくしね
その時にベース技術に持続的に投資していた企業だけが生き残る
※なお投資に失敗することもある模様
21. 匿名処理班
まあ、肉そのものの二酸化炭素排出量がどんだけ影響あるのかって話もあるが。
その辺、記事では触れられていないね。
22. 匿名処理班
技術の発展としては必要なもんだけど常用かは別だしな
23.
24. 匿名処理班
>>7
現在の畜産・魚介類の養殖、更には農業もなんだけど、環境汚染とかいろいろ問題はあるけど、1番の問題は大量に抗生物質を使うことなんだよね。農業なんて普通にバイコマイシン(かつては抗生物質の切り札と言われていた)を散布したりしていて仰天した。
殺菌剤は家庭の園芸でもバンバン撒く人がいて、こんなことをしていたら薬剤耐性菌なんて生まれないはずがないし、わざわざ増やしてるぐらいの行為なんだけど、全く自覚がない。この状況は非常に脅威だと思う。
25. 匿名処理班
>>3
すくなくともこれは化石燃料換算で過大な最大値出してるだけにしか思えん
逆に自然肉で同量の肉を得る場合の家畜の出すメタンガスや管理環境にかかる電力はろくに見積もってないんじゃないのかと邪推しちゃう
だから専門家の査読も無しに拡散すべきじゃないんだよな
26. 匿名処理班
知ってた
おおん?動物に残虐な事をしなくなるんだから環境破壊ぐらいがまんしろ。
って言う活動家が出るまでがセット
27. 匿名処理班
これってようするに自然なプロセスで
生成した肉が一番環境にやさしく自然だったって事か
そりゃ急激に培養して増やすんだからな
その分エネルギー消費量はかかるだろう
28. 匿名処理班
>>26
いちいち知ったかぶるな
29. 匿名処理班
「現在の」という注釈があって、未来のはなしではない
そもそも査読がない時点で参考程度でしかない
30. 匿名処理班
免疫系や消化器系を備え自分で餌を食って成長するブロブみたいな肉を作れば解決
31. 匿名処理班
まあ"改善すればいい"の一言だけど
現状に問題があるなら改善してしまえばいい
途中経過に過ぎないからな
味が不味いと言っているのと一緒
不味ければ美味しくしろが今後の流れ
32. 匿名処理班
行き着くところは「ソイレント・グリーン」が究極のエコシステム
33. 匿名処理班
>>18
そういうちょっと贅沢嗜好品としてお高めでも買ってくれる人向けで販売を始めて
一層の研究費用を作りながら回せれば理想だよね
34. 匿名処理班
培養肉って発想が気持ち悪いな
もう色々なバランスを全部壊しておかしくしていく人間はそろそろ一回滅んだほうがいい気がしてきた。
35. 匿名処理班
査読もされてないから内容については何も言えないけど、この視点は重要だと思うな。
一見エコに見えれば実際がなんであれ推進、みたいなことも多いから。
この視点での研究が進めば、自然にもっと負担の少ない方法にシフトしていくだろうし。
36. 匿名処理班
矢っ張りなぁ
完全に自然より綺麗な人工物って中々難しいと思うよ
電気とかに御世話に成らない方法が見付かってからだよね
若しくはクリーンで安定した電気供給の方法が見付かるか、だな
37. 匿名処理班
俺は謎肉でいい
38. 匿名処理班
錬金術じゃあるまいし無から有は作り出せないわけで
どこかにひずみは生じるもの。
そのひずみが許容範囲であればよいのだけれども
現在よりも悪い結果をもたらすものであれば方針転換も必要。
悪い結果が解っていたのに政治的な思惑でごり押しされてしまったり
科学者のプライドや見栄の為に研究成果が歪められて報告されることが
何よりも懸念されること。
もうソイレントグリーンでよくないかと諦めている(地球にとって最も不要で有害でたんぱく質をたくさん持った動物がうじゃうじゃいるやん)
39.
40. 匿名処理班
本当にCO2排出量が劇的に多くても欧米が生産する培養肉は特別扱いされるさ
そして各国に培養肉の使用を義務化させるまでがセットでもある
41.
42. 匿名処理班
>>1
まぁ最初はどんな技術でも従来の方法よりハイコストになるなんて当たり前だしね
そこからどれだけコスト落とせるかが本領よね
43. 匿名処理班
>>25
家畜のためのヒーター等環境管理や家畜の餌の生産、それを家畜の元に運んだりする電力やガスは計算されてるのか気になりますね
44.
45. 匿名処理班
>>38
将来的な食肉として細胞培養による培養肉の研究開発が盛んに行われていますが
大きな課題とされているのが動物から採取した細胞にはテロメアの劣化により分裂回数の制限から培養で増やせる量にも限界があります(ヘイフリック限界)
そこでウシ幹細胞のDNAを操作し分裂回数に制限がない「不死化細胞」を作り出すことに成功したことで無限に増殖ができる人造肉が注目されています
これについて際限なく増殖するという特性から「食べられるガン細胞」とも揶揄されて安全性を疑問視する声もあがっている一方
この技術を応用して人間の「不老不死」への活用も期待されています
個人的にはどちらの技術も人間が踏み込んではならない領域に手を出そうとしているように思えてならないのですけどね
そこまでするなら「もうソイレントグリーンでよくないか?」というのは私も賛同します
46. 匿名処理班
>>14
そもそも論文の9割は研究者の願望が強く働いた仮説とも言われますから
47. 匿名処理班
なぜそこまでして肉を食いたいのか不思議
肉がなければ魚を食べればいいじゃない
自分は魚があまり好きではないので大豆などを食べるだろうけど
48.
49.
50. ペンちゃん
まずは査読通ってからだなぁ
51. 匿名処理班
培養肉は人類の宇宙進出に必要不可欠なので頑張って欲しい
52. 匿名処理班
>>32
あれもそのまま食肉にしてないだけマシだなって思ったわ。
53.
54. 匿名処理班
恐竜時代並みに地球を温暖化したメタンガスが減るなら良い事で
肉にこだわらなくても人工で作るなら大豆を加工して謎肉から本物ぽい肉で十分そう
55.
56.
57. 匿名処理班
>>7
農業を営んでいるからわかるけど有機物の分解ってめちゃくちゃ時間かかる
干し草を畑に撒けるような堆肥にするには1年とか平気でかかる
餌食って一晩で有機分解してくれる家畜の存在って全体的なエネルギー循環で見ればかなり重要なんだよね
どれだけ化学肥料がいいとしてもその効果を持続的に効かせるためにはやっぱり有機物を畑に入れて土質を維持していかなければならない
畜産失くして農業は成り立たない、世界的に畑作と畜産はほぼセットの歴史がある
エネルギー問題や環境問題はもっとマクロに見てほしいですね
58. 匿名処理班
機能しない可能性が高い、では
59. 匿名処理班
>>54
大豆加工の肉、あまり美味くないしこれなら普通に豆腐として食べた方が満足感ある
60. 匿名処理班
ビヨンドミートはどうなの?