
このほど標高7900メートルの地点で採取された土から、人間の細菌のDNAが発見された。それは過酷な高地では生きられないと思われていたものだ。
コロラド大学ボルダー校のスティーブ・シュミット氏によれば、それは鼻をかんだり、せきをしたりして飛び散ったものかもしれないという。
意外にもこのことは、今後宇宙探査を進めるうえでの大切な教訓であるようだ。
過酷な環境の中でも生き延びていた人体の細菌
せきやくしゃみをすれば、周囲には大量の飛沫が飛び散ることになる。だからエベレストでクシュンとやれば、そこに含まれる細菌が雪や氷の上に散らばったとしてもおかしくはない。だが専門家にも予想外だったのは、暖かく、適度に湿り気がある体内でぬくぬく生きているはずの細菌が、凍てつく雪山でも生き延びられるということだ。
研究チームは、標高7906メートルにあるベースキャンプ「サウスコル」から170メートル離れた場所で土のサンプルを採取。それを次世代遺伝子解析技術などで分析してみた。

すると、そのほとんどが過酷な高地に適応した「極限性微生物」だったが、中には人間の細菌のDNAもあったのだ。
それはたとえば、私たちの鼻や口に存在する「ブドウ球菌」や「レンサ球菌」といったもの。強い紫外線が強く、低温で、しかも乾燥しているエベレストの環境には耐えられないだろうと予想されるものだ。
そういった細菌は死に絶えることなく、凍った土の中で休眠状態で発見されたのだ。

photo by Pixabay
宇宙を汚染しないよう気を付けよう
こうした結果から、サウスコルなどは人間がいなければ持ち込まれなかった汚染物質の冷凍集積地となっている可能性があると、研究チームは結論づけている。ないはずのものがあったからといって、エベレストの環境に大きな影響が出るわけではなさそうだ。
だが、このことは今後人類が宇宙探査を進めるうえで大切な教訓であるようだ。
「地球以外の惑星や冷たい衛星にも生命がいるかもしれません。私たちは、自らの手でそれを汚染しないよう注意が必要でしょう」と、シュミット氏はプレスリリースで述べている。
この研究は『Arctic, Antarctic, and Alpine Research』(2023年2月16日付)に掲載された。
References:When someone sneezes on Everest, their germs can last for centuries | CU Boulder Today | University of Colorado Boulder / Sneezing On Everest Leaves Behind Germs That Could Survive For Centuries | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
エベレストの話ではないかもしれないけれど温暖化の懸念の一つがコレだったな
永久凍土で冬眠中の未知のウイルスや細菌が拡散される恐れというやつ
2. 匿名処理班
逆宇宙戦争も実際に起こりそうだねぇ
3. 匿名処理班
逆宇宙戦争みたいなことになりそうだ
4.
5. 匿名処理班
月と火星に関してはもう大分汚れちゃってる気がする
6. 匿名処理班
「影響」や「変化」と言うことはできると思うけど
それを「汚染」と呼ぶかどうかは、個々人の感じ方でしかない
人間の痕跡=汚い、と考えるのもまた
人間だけを特別視する傲慢な考え方が派生したものです
7. 匿名処理班
南極と違って消毒殺菌して行くとかしないんだな
8. 匿名処理班
よーし、ここの土をサンプルとして持ち帰るか。
へーっくしゅん!! あー寒い寒い。
9.
10. 匿名処理班
アポロ計画でも月面に設置されたカメラを4年間だったかの期間を経て回収され地球に持ち帰って調べたところ、カメラに付着していた細菌が4年間も月面で生き延びた事が判明したんだよね
11. 匿名処理班
>>6
この場合の汚染は汚されたという意味ではなく元々存在しないものによって細菌叢が塗り替えられたという意味だと思うよ
持ち込んだのが人間でなくても汚染と呼ばれると思う
12. 匿名処理班
>>6
お前を畜生と同じ扱いしてもええんか…?
13. 匿名処理班
これは最近の話ですな
14. 匿名処理班
エベレストの遺体とか数千年後に人類の貴重な資料になってるかと思うとロマンあるなあ
関係者には悪いけど
15. 匿名処理班
(;´・ω・) 「さいきんのこと?」
16. 匿名処理班
極限性微生物って聞くとメタルギア思い出しちゃう
17. 匿名処理班
私だけ?
エベレストをエレベストと言ってしまう。
18. 匿名処理班
無意識に環境の汚染をしてしまうのは確かに懸念点ではあるわけだけど、裏を返せば、今宇宙空間にある宇宙飛行士の糞便についた大腸菌等が途轍もなく長い年月を経て不毛の惑星に辿り着き、そこで新たな生命の始祖になり得るというパンスペルミア説の証明にもつながる可能性があるわけでとても興味深いね。糞便だけだと心許ないから運よく小惑星とかに付着して運ばれてくれれば確率は上がるかな。