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古代ローマのコンクリートが何千年も持ちこたえた理由がついに判明

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(著) (編集)

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 世界最大の無筋コンクリートのドーム「パンテオン」や、現在も一部が使用されている「ローマ水道」など、古代ローマの建造物の中には2000年たっても当時の姿のままのものがある。

 一方、現代のコンクリート建築は、数十年もすれば崩壊してしまう。なぜ古代ローマの建造物はこうも耐久性が高いのか?

 『Science Advances』(2023年1月6日付)に掲載された研究によって、これまでずっと謎とされてきた「古代コンクリート」の超耐久性能の秘密がついに解明された。

 それによると、古代ローマ人は特殊な方法でコンクリートに「自己修復能力」を与えていたのだそうだ。

古代ローマ時代のコンクリートに優れた耐久性の秘密

 「ローマン・コンクリート(古代コンクリート)」と呼ばれる古代ローマの建造素材が優れていることは、彼らの建造物を見ればわかることだ。

 世界最大の無筋コンクリートのドーム「パンテオン」や、現在も一部が使用されている「ローマ水道」など、古代ローマ建築の中には2000年たった今も崩れることなく当時の姿を残すものがある。

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photo by Pixabay

コンクリートに混ぜ入れた石灰岩の粒に自己修復能力

 これまで、古代コンクリートの耐久性の秘密は、その主原料である「ポッツォラーナ(ポッツォラン灰)」というポッツオーリ (Pozzuoli) の地層から得られる火山性の砂にあると考えられてきた。

 だが詳しく調べてみると、古代コンクリートには「ライムクラスト(lime clast)」というごく小さな石灰岩の白い粒が含まれていることもわかっている。

 これまで、ライムクラストは、原料の混合がずさんであるか、原料の質が悪い証拠とみなされることが多かった。

 だがMITやハーバード大学をはじめとする研究チームの今回の調査では、それが欠陥どころか、超耐久性能の秘密であることが明らかとなった。

 なんとこの小さな石灰の塊は、コンクリートに「自己修復能力」を与えているようなのだ。

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photo by Pixabay

高温でコンクリーを混ぜ合わせていた

 コンクリートの原料を混ぜるとき、そこに石灰を入れると水と結合して反応性の高いペースト状の物質になる。だがこれだけでは、ライムクラストを入れた理由を説明できない。

 そこで研究チームは、古代ローマ人は「生石灰」というより反応性の高い石灰をあえて使っていたのではないかと推測した。

 これを検証するために、高解像度マルチスケール撮像と化学マッピング技術で古代コンクリートの解析が試みられた。

 その結果、ライムクラストはさまざまな形態の炭酸カルシウムからできていることがわかったのだ。

 さらにライムクラストが形成されたとき、かなりの高温だったろうことも判明した。

 このような高温は、ただの石灰ではなく、生石灰の発熱反応でなければ生じないものだ。

 つまり古代コンクリートは、生石灰を使い、ポッツォラーナなどの原料を高温で混ぜ合わせることで作られていたと考えられるのだ。

 高温混合のメリットは2つある。1つは、コンクリート全体が高温になることで、普通の石灰ではありえない化学反応が起こること。

 もう1つは、高温で反応が促進されるため、コンクリートの養生と硬化の時間が大幅に短くなり、速やかな工事を行えることだ。

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古代ローマ人の知恵と工夫が驚異の自己修復コンクリートを生み出した

 こうして作られた古代コンクリートには、なんと自己修復能力があることも明らかになっている。

 高温で混合する過程で、ライムクラストはもろいナノ粒子構造を形成し、反応性の高いカルシウム源になる。

 またライムクラストは表面積が大きいので、古代コンクリートに入るヒビ割れは優先的にここを通過しようとする。

 するとヒビに進入してきた水がカルシウムと混ざり、再び結晶化する。これがヒビ割れを埋めたり、ポッツォラーナと反応したりして、古代コンクリートをさらに強化するのだ。

 この自己修復能力は実験でも確かめられている。

 研究チームが生石灰で作ったコンクリートにヒビを入れそこに水を流すと、2週間もしないうちに完全にふさがることが確認されたそうだ。

 一方、生石灰を使わないコンクリートでは、そのような自己修復機能はまったく見られなかった。

 まさに古代ローマ人の知恵と工夫が生み出した現代に通じる技術なのだ。

 現在研究チームは、この発見をもとに現代の自己修復コンクリートの開発を進めている。

 セメント(コンクリートの原料)の生産から排出される温室効果ガスは、全体の8%を占める。だから自己修復コンクリートは、ただ建物の耐久力を上げてくれるだけでなく、セメント生産を減らすことで温暖化対策にもなるのだそうだ。

References:Riddle solved: Why was Roman concrete so dura | EurekAlert! / Riddle solved: Why was Roman concrete so durable? — ScienceDaily / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 49件

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  1. 謎と言われ続けてた古代コンクリートの製法がとうとう解明されたのか
    鉄筋入れても大丈夫ならかなりの革命では

    • +27
  2. もちろん自分はコンクリートの専門家ではないのだが、ローマ時代のコンクリートがある点で現代より優れていたことは有名な話で、その秘密が生石灰とポッツオーリ (Pozzuoli)にあることを今日の今日まで解き明かせなかった理由は何だろう?
    生石灰を混ぜたコンクリートって、誰も想像できないような突飛なものじゃなくて、むしろ有り得る組み合わせと考えやすいと思うのだけれど。

    何事も不思議なものだ。。。

    • +7
    1. >>2
      学術ってのは流行があるから、流行に乗り遅れるなって一斉に飛びつくと周りは見えなくなるんじゃないかな。
      理由はわりと単純で評価を受けないと出世できないからね。
      だからたまに無名の学生やそれまでまったく評価されなかった研究者が著名な大先生が全く気づかなかった発見をしたりしてワッと沸くことがある。

      学術の世界が権威主義に陥っている良い例が、なんとか細胞の発表時に後ろ盾として、その分野では著名な大先生が太鼓判を押して発表した為にその分野活躍している研究者が全世界的にワッとその論文に飛びついて、凄い、素晴らしい、さすが○○先生のご指導だという感じで持ち上げまくっていたことがあったようですね。国内では批判的な事をいえた雰囲気では無かった様ですが海外では論文に書いてある通りにはいかないという声が発表のあった次の週には挙がっていたようです。この事案は、あの大先生が指導されているのだから間違いなどあるはず無いという権威に基づいた無批判、無検証といった権威の縋る姿が浮き出ていると思います。

      今回は合同研究チームであるようなので再検証の担保はされていると思います。

      • +5
      1. ※7
        昔日本の法学部を受験しようとして驚いたのが、学部の下にある〇〇科というのは「誰の憲法解釈を支持するか」というのがおおよその基になってることを知ったことだな。
        どうやら実証ではなく論証という形式を認める文系学部などでは特にその傾向が強く、入学後にはその解釈が支持されるようになった軌跡や誰彼の主張や主な勉強になると知ってひたすら呆れたものだが、日本以外でもその傾向は見られるようですね。

        • 評価
    2. ※2
      こういうのは何で出来てるか、どうやればそうなるかは判っていても、なぜそうなるかが判らなかったみたいなものだからね。
      そう言うのは進歩した新しい検査法や機材を導入して初めてわかるみたいなものが多いから、これもそういう類なんじゃないかな。
      他の物でも、遺伝子解析の技術が進歩した結果わかったとか、スパコンのシミュレーションが可能になって初めて判ったみたいな事があるように、これも書かれている検査法を使う事が出来て初めて分かったんだろう。

      • +4
      1. >>29
        今回の記事を読む限り、検査方法等は従来からある方法だし、スパコンは使ってないし、関係ないんじゃない。
        既知のものを根拠に実験してみたら実はこうこうこういうふうになりましたという研究結果の報告だよ。

        • -3
  3. 作ろうと思えば今より硬いコンクリは作れるけど
    取り壊せなくなるから使ってない
    住宅地にあるトーチカは今もそのまま

    • +15
  4. そのため、イタリアで遺跡を撤去するのは猛烈に大変なんだそうです、普通のコンクリートのように「ハツッテ」どうこうなる硬さじゃないらしく、一番簡単なのは「発破」なんですが場所柄その手段を多用するわけにも行かず長年の頭痛の種になっているそうですよ。
    まぁ、この話は20年位前にイタリアの観光案内に書いてあったんですがね。

    • +12
  5. 私も昨日別の配信会社で同じ記事を読みました。
    コンクリートを専門に研究していた人を知っていたので、これを読んで随分悔しがっていたのではないかとも思いました。
    こういう発見は、権威主義や出世欲の強い人には地団駄踏んでるだろうなぁと。

    • -7
    1. >>5
      コンクリート研究者って権威主義者や出世欲の強い人がそんなにいるのか?

      • +3
      1. >>23
        そういう、ボクノカンガエター妄想を根拠とした意味不明なコメントをする意味って何

        • -9
        1. ※30
          横からやが、池田先生、宮川先生、丹羽先生といった方々が権威主義者?
          まさか知りもしない人物を指してそんなコメントはしてないよね?

          「いずれも業界に大きな貢献をされた方々ですよ」ってのが根拠な

          • +1
          1. >>38
            こういうコメントを書いちゃう人が権威主義なんだよね
            書いてる本人気づいてないみたいだけどw

            • 評価
          2. >>38
            権威主義者ってこういう妄想を根拠に誰も言ってない事を決めつけて、上から目線で偉そうに他人の権威をたてに批判するからわかりやすいよね。

            • -2
          3. >>38
            典型的な妄想を根拠に批判してる権威主義者のコメントだね。

            • -3
          4. >>38
            先人を尊敬するのは各自が心の中で思っておけば良い話で、「どの論理が正しいか」ではなく「誰が」と言い出したらそれはもう権威主義なんよ。

            • +1
          5. >>45
            すごく納得できる。普段の生活でも使えそう

            • -1
  6. 今年初めての「おおっ!」と叫んでしまった記事
    今まで謎とされてきたコンクリートの製法を現代建築にも応用できると考えるだけで胸熱
    当時のローマ人は土木建築に長けていたエトルリア人にすべてを任せていたようだけど、このコンクリートの製法もエトルリア人が考案したものなのだろうか

    次はデリーの鉄柱の製法の解明が待たれるところだね

    • +13
  7. これは、なんとなく全ての効果を意図したというよりも、試行錯誤の過程で導き出された工法だと思うとなかなか興味深い。

    • +17
  8. 一度文明が滅びるとこのような酷いロスタイムが発生するんだなぁ

    • +15
  9. ロストテクノロジーと言われ続けた古代ローマのコンクリートの謎がついに。

    • +8
  10. 実際コンクリって近年の物程質落ちて劣化してる印象
    耐久年数上がる具体的な方法が見付かったのは良い事だ

    然しセメント関連の企業はデカい所が多いよね
    生産性下がる上にコストかかる事をしてくれるかが問題かな…

    • -1
    1. >>11
      現在のコンクリート建造物は、確か寿命50年で建造されているはず。
      つまり、最長でも50年後には建て直す事が前提。

      • +4
    2. >>11
      2000年持つ建造物よりも数十年毎に新しいデザイン建造物建てる方が都合がいい事が多いんじゃない

      • 評価
      1. ※17
        でしょうねえ。2000といわず100年後のことすら考えるだけムダって感じだもんな
        ただ、温暖化の件はそれじゃいけない時代がきているよ、本気で100年200年後のことまで見据えないとダメだよってことでもあると思う

        • +7
    3. ※11
      コンクリに限らず、今の建造物や、工業製品全般も
      品質の追求よりもコスパ重視で、
      「検査にパスできる性能をギリギリ確保した範囲内で
      いかに品質を下げて経費を浮かすか」に主眼を置いてる気がする。

      あと、高度成長期などの建設ラッシュ時期に建った物って
      浜辺で採取した砂利の塩抜き放置期間が不十分なまま投入して、
      劣化が進みやすい状態のものが結構あると聞いた。

      • +4
  11. 去年、日本の専門家が微生物でコンクリートを修復する研究をしているのを見たけど、古代ローマで2000年前にすでに別な方法でやってた事にびっくり。

    • +4
  12. この時代の日本は文字もなかったからな
    マジで先進すぎるわローマ帝国

    • +10
  13. 本来なら喜ぶべき発見だが
    日本の不動産利権関係者は喜ばなさそうだな

    • -5
    1. >>20
      東京は再開発進んで地型が綺麗になったし、
      碁盤の目状に町が綺麗になってる場所でなら採用してもいいと思う。

      大阪みたいなとこは権利関係がややこしい場所が多くて非効率な建て方しなきゃいけない地型の土地が多すぎるから使えない。

      • +1
  14. これら古代の英知をすべてなかったことにしたキリスト教って人類に対する罪があるね
    宗教に支配されなければ、ほどなく産業革命が起こってて
    今ごろ私たちは宇宙に住んでた

    • -2
    1. ※22
      ローマが培っていた技術の崩壊と離散はローマ帝国の崩壊とともにやってきた経済崩壊と人口崩壊(人口が1/2になったともいわれる)が原因であってキリスト教は関係ない
      ローマ帝国の崩壊も北方からの異民族流入(ゲルマン人)が大きな理由でキリスト教は関係ない
      むしろキリスト教はローマ技術の保存と保持に貢献していた割合が大きいと言われている

      • +6
      1. >>33
        そりゃあキリスト教は自身を悪くは言わないよなw
        ルネサンスでイスラム教圏からローマ帝国時代から受け継がれていた科学がヨーロッパに来て驚かれたという話もある

        • -6
        1. ※35
          そのイスラムから古代の知恵をせっせとヨーロッパに再導入したのも、他でもないキリスト教会の知識人なんだが、
          中途半端にしか歴史を知らないか、知っててわざとネガキャンしてるのか、どっち?

          キリスト教会は中世の写本制作などを通じて古代の知識を熱心に保存していたからこそ、
          欠けていた知識や科学がイスラム経由で入ってきた時も迅速に受容できたわけで、
          このへんの事情は何十年も前から世界史の常識なんだけどな

          • +4
          1. >>39
            ふぅ、だかーら、キリスト教が自身を悪く宣伝するわけ無いでしょう
            なんでそこの矛盾に気づかないのかなぁ

            • -6
          2. ※41
            キリスト教からの評価ではなくて、現代の歴史的観点からの評価なんで…

            ※46
            そこは複雑。完全否定していたら”ユリウス暦”や”グレゴリオ暦”は採用されない点も注目
            グレゴリオ暦なんてローマ教皇さんの名前なんだぜ?

            • +6
          3. >>39
            ならなんでキリスト教は地動説という、最も古代から知られていて最も証明しやすい理論に反対したの?
            論理的に反論できないから権力で弾圧までしてたよね。

            • -5
    2. ※22
      宗教による暗黒時代については私も同じ思いを持つけど、可能性として技術の進歩によって人類が滅亡していたり、環境破壊でもっと過酷な事になっていたかも。

      • -2
  15. 日本の気候でどのくらい持つのだろうか実験したいなあ

    • +3
  16. 古代コンクリートの原料はもう取れないから同じ者は作れないそうだけど自己修復ができる様になるのはいいね
    行政が扱うことができないぐらい高くするんだろうけどね

    • 評価
  17. ローマの建築技術ってある程度エトルリア由来だろうけどコンクリートはどうなんだろう

    • 評価
  18. 読む限りだとローマ人はコンクリートの寿命を伸ばすためにというよりは、硬化時間の短縮を目指した結果、長寿命とか自己修復とか想像外の効果を生み出したように見える。

    そして恐らく当時も、それからしばらく後もその想定外の効果には気付かず、単に硬化時間の短縮、工期の短縮だけのための便利な方法として使っていたためにアッサリ失伝してしまったのかも。数百年とか数千年単位の検証は無理ですからね。

    • +7
  19. 当時の建設現場では型枠に隙間があったりすると高温の流動物が噴出したりしてたのだろか?

    • 評価
  20. ここで過度なキリスト教害悪説を唱えているひとは、死語となった「中世暗黒時代」なんて言葉をいまだに使っていそう

    • 評価
  21. と言うか今のコンクリって消石灰をわざわざ冷ましてから混ぜてるのな
    知らんかった

    • +1

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