
既存の薬からコロナの治療に使える薬21種を特定/iStock
新しく薬を開発するためには、膨大な量のお金と時間をかけなければならない。ワクチンを開発するには、最低でも12〜18ヶ月はかかるものだし、さらに新薬の承認を得るとなると10年を超えるのが普通だ。だから新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの開発は、すでに流通しているものを流用した方がずっと効率がいい。
そこでサンフォード・バーナム・ブレビーズ医学的発見研究所(アメリカ)や香港大学をはじめとする研究グループは、既存の薬を集めた世界最大級のコレクションの中から、実際に新型コロナウイルスに効果がありそうなものをピックアップしてみることにした。
その結果、既存の薬の中に、新型コロナに対して有効なものは21種あることが明らかになったそうだ。
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1万1987種の中から21種に治療効果があることを確認
調査されたのは「ReFRAMEライブラリ(eFRAME Drug Repurposing Library)」という、すでに米食品医薬品局(FDA)から承認を得ているか、臨床試験が行われた1万1987種の薬剤コレクションだ。それらの薬を使って、新型コロナに感染した「ベロ細胞」(アフリカミドリザルの腎臓から培養した細胞)に治療効果があるかどうか試された。
すると事前の予想どおり、ほとんどの薬には効果がなかったが、100種はベロ細胞内で新型コロナの複製を阻害することが判明。
さらにそのうち21種では「用量反応関係」が確認された。つまり患者に治療効果が得られる量を投与したとしても、人体に有害な副作用はない可能性が高いということだ。

Pixabay
うち13種は安全性も確認済み
そのひとつが、元々はエボラ出血熱やマールブルグウイルス感染症の治療薬として開発された「レムデシビル」だ。これは日本では、特例承認制度によってすでに新型コロナの治療薬として承認されている。また21種の薬のうち13種は、人体に安全であろう濃度であっても、新型コロナに有効であることが確認されているもので、これまでに治験も行われている。
「新型コロナ感染症の患者にとって、見込みのある治療の選択肢が大幅に広まるでしょう。何しろ、こうした分子の多くは、もう人体における臨床安全性データがあるわけですから」と、研究グループのスミット・チャンダ氏(サンフォード・バーナム・ブレビーズ医学的発見研究所)は話す。
「この報告によって、科学コミュニティはパンデミック収束を支援してくれる武器を拡充することができました。」

iStock
現在、治験が進行中
今回特定された21種の薬は、小さな実験動物や人間の組織を模したミニ肺を使って検査が進められているところだ。そのうち3種は肺組織から培養されたヒト幹細胞の内部でも作用することが確認されており、しかも1種は抗ウイルス効果まで示しているという。
こうした結果は大いに期待させてくれるもので、現在の状況を鑑みれば、すぐにでも医療の現場に導入してもらいたくなる。
だが、焦ってはいけない。有望であることが判明した薬であっても、すべてが実際に新型コロナに対して治療効果を発揮するわけではないからだ。
「こうした薬のいくつかは、今まさに新型コロナを対象とする治験が行われていますが、もっと候補を探すことが重要だと思います。そうすることで、治療の選択肢を複数手にできるからです」と、チャンダ氏は述べている。
この研究は『Nature』(7月24日付)に掲載された。
Discovery of SARS-CoV-2 antiviral drugs through large-scale compound repurposing | NatureReferences:sbpdiscovery./ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2577-1
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コメント
1. 匿名処理班
永い闘いに成りそう。しかし、「そんなぁ〜 時代も〜 ああ〜たねあ、とぉ〜♪」言える日は必ず来るのじゃ
2. 匿名処理班
日本でも2つ目の認可薬が通っている。
日本の重症者が増えないのは検査が以前より多くて、実際には4月ほど流行していないというのもあるが、治療方針が明確になってきている可能性がある。
これは世界的にも同じ傾向。検査の精度が上がって感染者は増えているが、死者は比例しては増えていない。(遅れている南米の分と第1波を強烈に抑えて続編が今さらきたオーストラリア等の分が来ているので急速には下がってはいないが)
もう、普通の病気になっているのに、いまだに2〜3月の情報からアップデートできてない人が多すぎる。
3.
4. 匿名処理班
今回のコロナ騒動で本当にすごいと思うのは、パンデミック発生から半年程度でウイルスの特定が済んで、対処法すらも確立しつつあるということ。
そう、わずか半年程度で。
未知の病原体に対するこの対応の早さは人類史上でも稀なことだし、何よりこれは、人類が積み上げてきた試行錯誤が、着実に実を結んできたことの証明だと思う。
マスクに香草を詰めた中世のペスト医者がこの有様を見たら、感激のあまり卒倒するんと違うかな。
駄目な点ばかりがクローズアップされているけれど、ワイは今の時代に生まれて良かったと思う。
そして今この時もラボや現場で戦っている皆に、心からの感謝を言いたい。
それぞれがそれぞれの立場で、できることを考えようや。
5. 匿名処理班
朗報ですね
此の調子でワクチンも頑張ってください
所で脱毛の後遺症と言う気に成る情報が最近聞こえて来てるんですが…
クスリの副作用なのかコロナの後遺症なのか未だ発表されてないのが非常に気に成る
抜けた後、再び生えるのかも気に成る…
6. 匿名処理班
薬剤の利権とか理由はいろいろあるかもしれないけど、とある巨大国家同士による発生した責任の擦り付け合いをせずに、映画「インデペンデンスデイ」のように世界が一つになって戦うことを夢見る今日この頃であります。
7.
8. 匿名処理班
今後、状況が劇的に改善するかもしれないし、しないかもしれない。
ワクチンの実用化もまだ未定、実用レベルになってもそれで万事解決とは限らない。
必要以上に悲観も楽観もするべきではないと思うけどね。
ただの風邪だとか消毒剤を注射しろとか抗マラリア薬で治るとか言ってる奴もいるけど論外。
早く答えが欲しいのはみんな一緒だけど、不確かな情報に流されちゃいけない。
9. 匿名処理班
※2
楽観視は出来ないとは言え、普通の病気になりつつあるって事を隠して
とにかく不安を煽って人々を混乱させたいって人達が居るからね
この間少し話題になってた医師の人曰く、テレビ局にコメント求められた際に
そういう事言おうとすると「今回の出演の話はなかった事に」ってなる事が多いみたいよ
10. 匿名処理班
レムデシビルしか名前出てないので信憑性が薄いわ
11. 匿名処理班
※10
そりゃまだ認可されてない薬を先走って公表しちゃったら
抗マラリア薬みたいなことになるからじゃね。
12. 匿名処理班
ていうかコロナウィルスって別に突然出てきた新種じゃなく「新型コロナウィルス」であって
既存のコロナウィルスは風邪を引き起こすウィルスの一つに過ぎないもの
その変種が新型コロナなんだから、既存のコロナに効く成分の既存の薬が新型でも有効な可能性は前々から予想はされてたしなあ
既存の薬に耐性をもってるからやべーってわけじゃなかったんだし
まあ21種もあるのかよって多さは期待以上だったが
13. 匿名処理班
やぶ医者「葛根等を飲みなされ」
14. 匿名処理班
富嶽の成果はどうなったんじゃろ
15. 匿名処理班
抗体検査の数字を見るに、インフルや風邪になったときの致死率と何も変わらないんだよね
症状が出るほどの風邪になれば必ず後遺症になるし、一生残ることだってあるし確率はほとんど同じだと思う
実際は症状隠す人間と検査の予約ができず諦めた人間が多数派で、蔓延しきってると思う
検査すればするほどただの風邪になってくのは確実だし、海外じゃ抜き打ちでかなりの無症状陽性を見つけたなんて話もあった
初期に死者が増えたのは、今年風邪で肺炎になって死んでいたであろう人間の寄せ集め
5月で既に感染爆発は起きていて集団免疫に向かってるとしか見えない
16. 匿名処理班
「そんなに心配しなくても必ず人類は勝つよ。時間は掛かるかもしれないけどさ」って、親戚や知人によく話してたけど、ここまで進んでいたとは驚き。
進化をただ自然の流れに任せているウィルスと、世界中で叡智やデータを結集して進化の力を上回る科学で対抗する人類。
よく考えたら、後者の勝率が高いのは当たり前なんだよね。
結局の所、人類を本当の意味で危機に陥れうるのは人類自身の行動だけなんじゃないかなって思うよ。
17. 匿名処理班
※10
それ思いましたわ
依りにも依って副作用が甚大で、コロナへの明確に有効な効果が確認されていない薬を筆頭に持ってくるのは何なのだろうって
あ、日本で認可されているからか、何で認可されたんでしょうね()
18. 匿名処理班
※10
※11
※17
リンクされてる元論文をざっとよんだけど、普通にいろんな薬の候補が名前と共に出ていたよ。知らない名前もググれば製薬会社の名前とか知られている生化学反応の機序とか分子式、構造式までもちゃんと見つかる。そもそもこれが"既存薬"という意味なんじゃないかな。
論文のイントロでは、もちろんレムデシビルの他にファビピラビルとかHIVの薬とかにもちゃんと言及されていた。
動物細胞のモデルであるベロ細胞(サルから樹立)にウイルスを感染させて、薬によってどう反応があるかを調べる実験をしているみたいだよ。
さらにすごいなと思ったのはiPS細胞からヒトの肺の細胞を分化させたものでも、同じように効果を確認していることだった。
こんなところにもiPSが応用されている。ノーベル賞というのはどれだけ応用範囲が広い研究かどうかが審査の基準になっているらしいけれど、まさに相応しい研究だったんだなと改めて思ったよ。再生医療の方面では思ったよりも進捗が遅いと感じてる人もいるみたいで官僚の人でもそのことで山中先生にマウントをとって予算を削ったなんて話もあったけれど、研究の価値っていうのは生半可な勉強では測れないんじゃないかなと思った。
逆に言えば、勉強すればそれだけ今までクソだと感じていたことにも新しい価値が見えるようになれる可能性もあるってことだと思ったよ。
勉強して、たとえば宇宙がもの凄く広すぎて他の惑星に自転車では行けそうもないこととかを知って絶望することもあるけど。
それでも勉強は世界を拡げてくれる気がしたよ
19. 匿名処理班
大変だと思うけど同時に他の病気の治療薬開発も進めて下さいますようお願いします。
20. 匿名処理班
薬一年後どんな感じになっているだろうかw
21. 匿名処理班
海外のスチュワーデスだったかな?コロナ陽性の患者さんと濃厚接触者になる事数回、自分だけがコロナに罹らなかったと。
実は私も同じで、濃厚接触者になってもコロナに罹らなかった。
また学生時代にもインフルエンザでクラスメイト20人中、19人が次々にインフルエンザに罹ったのに私だけが陰性。
薬と並行して、こういう体質の人の研究もして欲しいな。