
そう割り切っているつもりが、しつこくその悩みが付きまとう。
振り払っても振り払っても心配事が消えない。なんでだろう?
どうやらそれは、悩み事を普段以上に目につくように情報を処理してしまう脳の働きにあるようだ。
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問題を解決するたびにその定義が変更される

彼らは暴行や強盗といった犯罪が行われないか目を光らせる。その甲斐あってか、やがて犯罪が随分と減ってきた。すると住民はどうするだろうか?
可能性の一つとしては、治安に安心するようになり、警察への通報を止めるかもしれない。犯罪の不安は過去のものになったのだ。
だが安心するどころか、横断歩道の信号無視や夜間の徘徊のような、これまで犯罪とみなされなかった行為まで通報するようになる可能性もある。
こうした状況は「コンセプトクリープ」や「動くゴールポスト」と呼ばれる。問題を解決するたびにその定義を変更したとしたら、状況が改善しているのかどうか分からなくなってしまうではないか。
脳はわざわざ問題を探し求める

すると画面に映し出される脅威的な顔が減るほどに、参加者の”脅威的”の定義が拡大されていることが判明した。
つまり脅威的な顔が見つからなくなると、それまで無害とされていた顔まで脅威的とみなすようになったのだ。参加者が脅威と考えたものは、それがいくつ見えたかによって変化したのである。
こうした非一貫性は脅威の判断に限らない。別の実験では、画面上に表示されるたくさんの点が青か紫か判断してもらった。
すると青い点が減るにつれて、それまで紫とされていた点が青と判断されるようになった。これは事前に青が少なくなると教えたり、一貫した判断ができたら金一封を与えると告げたりしていても同じだった。
・人が悲観的になる理由。小さな問題を大きな問題としてとらえてしまう脳のメカニズム : カラパイア
倫理の判断

これを確かめるために、参加者にさまざまな科学研究を読んでもらい、それが倫理的な内容か、あるいは非倫理的な内容か判断してもらう実験を行なった。
実験前、顔や色の判断とは違い、内容の判断はもっと一貫しているだろうと予測された。なぜなら倫理的な判断は時間が経過してもそうは変化しないという印象があったからだ。
もしあなたが今、暴力は間違ったことだと考えるのなら、その多寡にかかわらず、明日もそれを間違っていると考えるはずだろう。
だが驚いたことに、この実験でも同じパターンが繰り返された。非倫理的な内容が減るほどに、それまで倫理的とみなされた研究まで非倫理的と判断されるようになったのだ。
つまり非倫理的な研究が目につかなくなると、ボランティアはよりいっそう厳しい判断をするようになったのである。
脳は相対的な比較をする

私たちは目の前の物事を最近の文脈と常に比較しているのである。
その脅威を注意深く判断するかわりに、顔の脅威を最近見たほかの顔と比較して測定する。すると脅威的な顔が少なくなると、ほぼ無害な顔との比較で脅威の認定がされるために、すぐさま実験で観察されたような結果につながることになる。
柔和な顔だらけの中では、ほんの少しいかついだけの顔ですら恐ろしげに見えてくるのだ。
脳にとって、相対的な比較(他との比較の上に成り立つ)は絶対的(何物にも制限されない)な測定よりもエネルギーの消費が少なくて済むことが明らかとなっている。
これを直感的に理解するには、クラスメイト全員の身長を正確に憶えるよりも、クラスの中で一番背が高い人を憶える方がずっと楽であることを考えればいい。
人間の脳はいろいろな状況の中で相対的比較を行うよう進化してきたようだ。環境の中で安全に暮らし、判断するにはそれで十分な情報が手に入る場合が多いからだ。
一貫した判断

病気の診断から投資まで、現代人は一貫していることが重要となるいくつもの複雑な判断を下さねばならない。
だが、そうした態度が必要なとき、人はどのようにして一貫性を保つことができるのだろうか? それは今後の研究課題だ。
最初に問題だったものを書き留めておく
可能性のある戦略として、一貫性のある判断をしなければならない状況において、カテゴリーをできるだけ明確に定めておくというやり方が考えられる。だから、もしあなたが自警団に入ることがあるなら、最初に問題視されていたものが何で、どのように逸脱していったのかを書き留めておくといいかもしれない。
さもなければ、不審者の対象はどんどん拡大していき、寒くてパーカーのフードを頭にかぶっているだけの人でも通報するようになる恐れがある。
References:theconversation/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2018/7/13): 本文の一部を修正して再送します
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コメント
1. 匿名処理班
結局は根源的な恐怖
「死」への対処からそうなるのではと思うのです
2. 匿名処理班
最後の、「さもなければ、不審者の対象はどんどん拡大していき、寒くてパーカーのフードを頭にかぶっているだけの人でも通報するようになる恐れがある。」って下り、漫画版の「日本沈没」でも出てたな。
東京直下型大地震が起こった後に、新宿中央公園に避難した人たちがいるんだけど、そこに、渋谷のあたりから避難してきた青年がやってきて、彼がたまたま「パーカーを着てフードをかぶっていた」ために不審者扱いされた挙句、おびえた避難民に殺されてしまった。
その後、レスキュー隊員たちが救助に来るんだけど、彼らには事前に「フードをかぶって訪れると不審者と思われる」ということが通達されていたために、レスキュー隊員たちは到着後直ちに、フードを脱いで顔をさらして救助活動を始めたっけ。
要は、不安と恐怖心がいかに正常な判断力を奪って、異常で暴力的な行動をとらせるかということになると思うけど。
まあ、それ以前に子供に声掛けしたら、通報される世の中っておかしいよね。
人相の悪い人物が、子供連れで歩いていたら、たとえ実の親子でも通報されるとか。さ。
3. 匿名処理班
ありがとう
オレが部屋の掃除をしないのはそうゆーことなんだよ
キリがないからな
4. 匿名処理班
いつまでたっても人は幸せになれないわけですわ
5. 匿名処理班
※2
昨今の性犯罪に巻き込まれる事件増えてるので
通報もやもなしだけど、実際には怪しい奴
いわゆる顔の怖い奴とか妙なことをする奴って
意外にいい人であり、裏ではボランティアや
社会活動に準じていたりする
本当にやばい奴って世間に目立たないようにひっそりし
顔もこの人犯罪しないよねというようないい顔だったり
ばれたときにはこの人ってこと多い
大体素人が見てわかる犯罪者なんて警察がさっさと
とっ捕まえて犯罪なんて消えるわな
6. 匿名処理班
お金が無いと生活が心配になるけど、お金がたくさんあるとお金が無くなる心配をするようになる。
7. 匿名処理班
日本の不謹慎攻撃、社会の訳のわからないルールで攻撃するやつ、過度な学歴、年収マウントなどはこうやって生まれるんだろうな。
絶対的な測定より、相対的な測定の方がエネルギーを使わないから、浅いインスタントな思考回路な人は嵌ってしまう。
なかなか勉強になった。
8. 匿名処理班
二番目の小見出し「脳波わざわざ問題を〜」たぶん正しくは
「脳はわざわざ問題を〜」だね
9. 匿名処理班
プロジェクトのゴールポストも似てる...
10. 匿名処理班
うーん、短期的な話と長期的な話、個人の話と組織の話と社会の話、はある程度分けた方がいいように感じる
社会の倫理がずっと一貫していたら、DVとかセクハラとかパワハラとかブラック労働とか、ずっと被害者が泣き寝入りして終わるままになってしまう…
11. 匿名処理班
悩みや心配ってほんと常にまっさらになくなることってなかなかないよなあ
現状に感謝満足していくよう心がけてはいるが
12. 匿名処理班
子供とすれ違っただけでも男性が一人で歩いていて全身黒尽くめの格好だったというだけで事案扱いとかね
13. 匿名処理班
心配がないと却って張りがなく感じるってのはあるかなw
リスカとかも張りがなくなりすぎて生きてるのかわからないからするのかもしれん
俺はしないけども
14. 匿名処理班
心配性も生活に支障がないなら大切な個性です
自分の個性と付きあう必要があるのは心配性でけではありません
15. 匿名処理班
このあいだtwitterで見た話。
公園で小さい子供がブランコのそばで泣いていた。
声をかけてみたら怪我をして泣いていた、近くに親は見当たらない、だから携帯電話で救急車を呼んだ。
そしたらなぜか救急車じゃなくパトカーが来た。
離れた場所でずっとスマホ触ってたのが実は母親で、子供のほうに目をやったら知らない男がなにか話しかけてる様子だから通報して、パトカー到着まではまたスマホいじりつづけてて子供の方に近付きもしなかったんだと。
警察と母親に説明したら、母親はありがとうもごめんなさいもなしで子供を連れて帰った。
警察としては不審者として通報を受けた以上、引受人がいないと男性を帰せない。
なので仕事中の奥さんを電話で呼び出した。
それで男性は開放されたけど、警察に呼び出された件に尾ヒレがついて、奥さんは仕事をクビになったんだって。
16. 匿名処理班
※3
いや それはしろよ
17. 匿名処理班
問題解決の為の組織がいつの間にか組織の為の組織になり組員は組織の為に命を捧げることが善とされるようになる
問題なんて本当にあったのか
組織の引き起こした問題のほうが大きいのではないか
18. 匿名処理班
ある意味こういうキリがない性質があるからこそ人は常に進化し続けてこれたんだろうし(とりあえず技術的なことだけに関しては確実に進歩している)
これはこれで必要な性質なんだろうけど
まぁ、いいことばっかりのことはないということだね
19. 匿名処理班
ちょうど今、もともと挙動不審なご近所サンがある件でタイーホされたんだが、拘置されてるから安心と思う反面、出てきたら前科者になっちゃったのではっちゃけて余計ひどくなるかもって心配してるわ。警戒しすぎて刺激するかもしれないってことだよね。気をつけよっと。
20. 匿名処理班
人間がいて犯罪がある以上、安心していい状況など絶対にない
21. 匿名処理班
自分に自信がないから相手を信用できない、不必要なフィルター、障壁設けてますます嫌われる。無駄な事ばかり考えている。
22. 匿名処理班
※15
私はむしろ
ツイッターっで聞いた話で〜
的な話に不信感を覚えます
本人があることないことをさも事実であるかのように語る方便のように感じるので
特に通報事案系はデマがまかり通ってる気もします
単に人に声をかけたりコミュニケーションをとるのが面倒だったり怖かったりして
無関心の風潮を当たり前にしたい人が話を作ってる可能性もあるだろうな〜と思ってます(個人の感想です)
という話をこないだツイッターで見たよと書くこともできますね
ツイッターやってないけど。
23. 匿名処理班
やれ誰が不倫しただの失言しただのですぐ炎上する日本は平和だからこそなのかも
24.
25. 匿名処理班
ジャレッド・ダイヤモンドだったかな、ニューギニアの先住民のお年寄りは常に心配してるって話があったな。天候や動物のふるまいがちょっといつもと違うってだけで、凄く心配して、みんなで話し合いを始めるって。
でも彼らの伝統的な生活スタイルだとそれは必要な心配だ、とも。常に天候や動物の脅威にさらされていて、先に何かの対策取らないとたくさん死んじゃうから。だから彼らは心配性を笑わないし、狩りの途中で男の子が興奮した獲物から逃げても笑わない、とも。それが生き残るのに必要な行動だってわかってるから。
私たちの先祖も長くそういう生活スタイルだった。
今の私たちは過去より安全になったぶん、先祖から受け継いだ心配性をもて余してるのかも。
まあ人口過密のせいで、先祖が体験してこなかったような心配も必要になっているんだけども。
26. 匿名処理班
集団からズレてるものを脳は不安に感じるということかな
27. 匿名処理班
※19
全然理解していなくて笑ったわw理解力無さすぎw
28. 匿名処理班
これはほんとにそう思う。この現象に名前をつけて全人類に周知してほしい。
粗なんて探し続けたら永遠に安心なんて得られない。玉ねぎ剥くのと一緒。
キリのいいとこで追及をやめる必要があることに気付いてほしい。
職場の先輩が常に誰かの文句を言うんだよ。
一つ解決すれば次の問題探してきてなにかしら文句を言っている。
先輩はまとめ役だからそういう厳しい目も必要なんだけど、次の問題が起きるまではたいしたことない物事でも言い続ける。
大きな事件が起こってなくても時間与えられてる限りはなんか取り上げなきゃいけないニュース番組と一緒。
本人は無自覚なんだろうけど、この世でいじめがなくならないのもこれだと思う。
常に最下位の人間を作りたがるんだよ。問題を他の人間に押し付けることによって自分が問題ない人間であると思うために必要なことであったりもする。
自分自身も常に人や物に厳しくなりすぎていないか、立ち止まって考えることを習慣にしたいよね。ポジティブな向上心は大事だけどね!
29. 匿名処理班
その話を嘘臭いと思わないなら
詐欺被害に気を付けてください
30.
31.
32.
33. 匿名処理班
被害者が加害者になる、正義は悪になる
テキを探し続けてしまうアンチ活動の悲しい正体だね
しかしアンチを社会にライフサイクルを与え循環を生み出す事象として捉えるならば
アンチを許容し制御しつつ歩んでゆくことが持続可能な社会ということになるね