第二次世界大戦時の強制収容所がゴージャスなリゾートホテルとして生まれ変わった（モンテネグロ）

　第二次大戦終結以降、ヨーロッパの数多くの旧強制収容所は、そこで非業の死をとげた者を追悼し、厳粛な負の記憶を今に伝えるため、その姿をそのままに残してきた。

　ところが、そのうちの１つがラグジュアリーでゴージャスなビーチリゾートに生まれ変わろうとしている。その決定は、国際的な怒りをかっているそうだ。

　地中海の海域にある、アドリア海に浮かぶ直径200mほどの岩だらけの無人島「マムラ」は、地図にもほとんど載っていないが、モンテネグロとクロアチアの境のコトル湾に浮かぶ。 Mamula

　ここには19世紀に建てられた要塞があり、第二次世界大戦時には、ベニート・ムッソリーニ率いるイタリア軍が駐留し、要塞は強制収容所として使用された。 　ここに2300人の人々が収容され、そのうち130人が殺されたり、餓死したと言われている。こうした痛ましい過去をもつ島に対して今提案されていることは、まったく対照的だ。

　モンテネグロ政府は、マムラ島をプール、ヨットマリーナ、スパ、レストラン、ダンスフロアが完備されたリゾートにするというプロジェクトにゴーサインを出した。そして、スイス・エジプト系企業オラスコム社と、1平方メートル1.64ドル（198円）という名ばかりの価格で、49年間の賃貸借契約を締結した。 　政府観光開発局長のオリベラ・ブラヨビッチは取材に対して、「選択肢はふたつ。この要塞を放置して廃墟と化すのにまかせるか、投資家を見つけて修復してもらい、来訪者を受け入れるようにするかのどちらかだ」と語る。オラスコム社は、このプロジェクトに1630万ドルを投資する予定だという。

　オラスコムの広報は、景観や現存の建物に敬意を払い、島の歴史的価値を風化させるようなことは決してないよう配慮するつもりだというが、当時収容所に収監されていた人たちの家族・遺族は、この計画に怒りがおさまらない。　「多くの人たちが殺されたり、苦しめられたリしたこの場所に、娯楽のための豪華ホテルを建設するなど、はなはだしい歴史の軽視にほかならない。ホテルに改築された強制収容所など世界にひとつもない」と、オリヴェラ・ドクレスティックは言うオリヴェラの祖父、父親、おじは、マムラに収容されていたのだ。

　しかし、地元の第二次大戦の退役軍人会や市議会は乗り気だと、オラスコム側はいう。モンテネグロ政府も、プロジェクトは地元の経済を活性化させるとして、この決定を擁護している。もちろん、マムラの歴史は尊重すべきなので、計画の中には記念館など施設を設けることも含まれているという。 　記念館では文化イベントや政治討論、芸術イベントなどが行われる予定で、観光客や地元の人に一年を通して解放されるとのことだ。島の改革は、観光事業を促進すると同時に、文化的遺産や歴史的特質をきちんと保存していくという。

　マムラ島についての議論は、2013年12月に、政府が裕福な顧客の要望を満足させる機会に投資するとして、島を宣伝したことがきっかけで始まった。前国連事務総長のブトロス・ブトロス・ガリに批判されたが、オラスコムは記念館を含む大型ホテル建設に強気だ。

via:amusingplane・translated konohazuku / edited by parumo

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