食文化・食生活の違いがわかる世界各地の人々の職業別、1日の食事

　米カリフォルニア州のフォトジャーナリスト、ピーター・メンゼルと彼の妻、そして記者のフェイス・ダルージオは世界中の人々の食事内容を記録するために三年間で30カ国を巡り、数えきれないほどの人々を訪ね、そこに住む人々と食事を撮影し、「What I Eat: Around The World In 80 Diets（地球のごはん 世界30か国80人の“いただきます）」という素晴らしい写真集を発表した。

　写真集には世界各地に住む80人の人々の食事とプロフィール、歴史的背景などがまとめられている。そのうちの一部が紹介されていたので見てみることにしよう。 　そこには地域差、食文化の差もさることながら、職業や年齢、嗜好などライフスタイルによる違いも如実に反映されており、なかなかに興味深い。

1.エジプト　ラクダの仲買人

　ラクダの仲買人のサラ・アブドル・ファドラッラーがエジプトのカイロ郊外にあるラクダ市場で一日に食べる食事。4月某日の彼の総摂取カロリーは3,200kcalだった。彼の年齢は40歳、身長173cmで体重は75kg。

2.ドイツ　菓子職人

　ドイツの焼き菓子専門の菓子職人、ロビナ・ワイザー・リナーツは、両親の経営するベーカリーで食事をする。3月某日の彼女の総摂取カロリーは3,700kcalだった。彼女の年齢は28歳、身長168cmで体重は65kg。「ブレッドクイーン」のたすきと冠は、ドイツでも名高いケルン地域の焼き菓子の同業組合(ギルド)の代表として、フェティバルや見本市、そして教育に関するイベントに参加する時に彼女がいつも身につけるアイテムだ。

3.インド　インターネット会社コールセンター勤務　

　AOLのコールセンターで働くシャシ・カーントとバンガロール市の職場で食べる1日のメニュー。年齢23歳、身長170cmで体重は56kg。インドのコールセンターで働く人々同様、彼もファーストフードやチョコバー、そしてコーヒーを頼りに夜勤をこなし、アメリカの顧客からの様々な技術面の質問や、請求書にまつわる問題に対応している。

4.ボツワナ　大型トラック運転手

　ボツワナとナミビアの国境で手続きに時間を取られてしまった大型トラック運転手、タルシウス・"テリー"・ベズイデンホウト。車中で口にする彼の典型的な食事と、彼が乗る長いトラックが写っている。

5.スペイン　闘牛士

　プロの闘牛士のオスカル・イガレスと、彼が訓練中にスペインの闘牛場で摂るいつものメニュー。

6.チベット　高僧

　チベット高原の僧院で高僧が食べる典型的な食事。6月某日の彼の総摂取カロリーは4,900kcalだった。この僧侶の年齢は45歳、身長165cmで体重は72kg。

7.アメリカ　陸軍兵士

　米カリフォルニア州モハーヴェ砂漠にある陸軍基地の訓練センターで、米軍兵士のカーティス・ニューカマーが食べるいつもの食事。9月某日の彼の総摂取カロリーは4,000kcalだった。彼の年齢は20歳、身長196cmで体重は88kgだ。2回目の派遣を控え、12時間のシフトで無線通信用のテントに詰めるという任務を2週間続ける。派遣先はイラクだ。朝夕の食事を給食用テント内で食べるが、昼はバラエティに富んだ簡易食品(レーション)を食べる。最近のお気に入りはチーズと野菜のオムレツだという。

8.アメリカ　タクシードライバー

　米イリノイ州シカゴのタクシードライバー、ディン・メモンは、一日に食べる典型的なメニューを車の上に並べてくれた。9月某日の彼の総摂取カロリーは2,000kcalだった。年齢は59歳、身長170cmで体重は109kgだ。彼のお気に入りはケバブ、チキンティッカ、もしくはビリヤニだ。ティッカは味付けした肉を焼いたもので、ビリヤニは、サフランやターメリックなどのスパイスをふんだんに使い、お米に肉や魚、野菜などを加えた料理だ。

9.アメリカ　トラック長距離運転手

　写真は米イリノイ州のドライブインで出会ったアメリカ人トラック長距離運転手、コンラッド・トルビーと彼のいつもの食事。彼が平日働いているときの1日の総カロリーは5,400kcalだった。彼の年齢は54歳、身長188cmで体重は118kg。運転中の食事の内容はもう何年も変わらないという。ドライブインやファーストフード、医者に注意されていても脂っこい料理を食べる。彼は運転中に2度も心臓発作を起こしているにもかかわらずだ。親友でもある5歳の愛犬と共にトラックに乗り込み、マクドナルドでは一緒にハンバーガーやフライドポテトを食べるそうだ。

10.アメリカ　モデル・女子大生

　プロのモデル兼ニューヨーク大学の学生のマリエル・ブース。彼女と彼女の普段の食事をブルックリンのスタジオにて撮影。10月某日の彼女の総摂取カロリーは2,400kcalだった。彼女の年齢は23歳、身長177cmで体重は61kg。フルタイムでモデルをしていた時より健康的な体重になったのは良かったと思っているが、収入が減ったのは残念だという。

11.ベネズエラ　高校生

　ベネズエラのカラカスに住む高校生のキャサリン・ナヴァスは家族と住む家の屋根の上にいつもの食事を並べてくれた。11月某日の彼女の総摂取カロリーは4,000kcalだった。年齢は18歳、身長170cmで体重は71kgだ。

12.ベネズエラ　石油会社勤務

　ベネズエラ国営石油会社に勤務するオスワルド・グティエレスとその食事内容。彼はマラカイボ湖の石油プラットフォームの主任でもある。12月某日の彼の総摂取カロリーは6,000kcalだった。年齢52歳、身長170cmで体重は100kg。7日働いてして7日休むという勤務体系だ。

　彼はヘリポートの上でジョギングや空手、ウエイトトレーニングに縄跳びなどして体型を維持している。食事はプラットフォームの食堂でとる。そこにはゴキブリが何匹も住み着いているが、メニューの方は健康的なものから脂っこい揚げ物まで揃っている。彼は写真の搾りたてのオレンジジュースを一日に3リットルも飲んでいる。職場にたくさんいる太った同僚みたいにならないようにと、約3年前に食生活を変えたそうだ。

13.ベトナム　退役軍人

　彼らが住むアパートで普段の食事を見せてくれた退役軍人のグエン・バン・トゥアンと彼の妻。

14.イエメン　専業主婦

　専業主婦のサーダ・ハイダーと彼女のいつもの食事。イエメンのサヌアにあるサーダの自宅にて。4月某日の彼女の総摂取カロリーは2,700kcalだった。彼女の年齢は27歳、身長150cmで体重は44kg。サーダ同様、イエメンの女性のほとんどは伝統に習い、人前では慎み深さを表すために身体を覆っている。

15.オーストラリア　ライフガード

　オーストラリアのシドニーにあるボンダイ・ビーチのライフガード、ブルース・ホプキンスが食べる普段の食事。2月某日の彼の総摂取カロリーは3,700kcalだった。彼の年齢は35歳、身長183cmで体重は82kg。ファーストフードを食べるのもごくまれで、お酒も妻や友人と外食する時ぐらいしか飲まない、という彼の食事は控えめ。

16.バングラデシュ　主婦

　4人の子供の母親、シャナーズ・ビィーガムと彼女の普段の食事。後ろに写っているのは貧困者向けの融資で手に入れた牛達。バングラデシュのダッカ郊外に位置する、バリ・マジリッシ村の彼女の家の屋外にて。

17.ブラジル　牧場経営

　牧場経営者の妻、ソランジュ・ダ・シルヴァ・コレイア。ブラジルのソリモンエス川を一望できる家で、家族と一緒にいつもの食事を披露してくれた。11月某日の彼女の総摂取カロリーは3,400kcalだった。彼女の年齢は49歳、身長159cmで体重は76kg。

　彼女は夫のフランシスコ(写真右)の祖父がカビアナ村の郊外に建てた家で、3人の孫と共に暮らす。牛を育てて収入を得ており、時には1、2頭の羊を飼って食べるが主に動物性タンパク質は魚を釣ったり、飼育している鶏の卵に頼る食生活をしている。また、彼らは自分の土地で育てている果物やブラジルナッツを収穫して、村内の店で米やパスタ、トウモロコシ粉を買ったり、この地域原産でカフェインに富むガラナの実を原料としたソランジュのお気に入りのジュースを手に入れる。

18.カナダ　ベジタリアンの高校生

　カナダのケベック州ガティノーに住む10代のベジタリアン、ココ・シモーヌ・フィンケンと彼女の普段の食事。10月某日の彼女の総摂取カロリーは1,900kcalだった。彼女は16歳で身長は177cm、体重は59kg。彼女の家では車を所有しておらず、オーガニック食品は手頃な値段のものを買い、庭では野菜を育てている。

19.カナダ　イヌイットの彫刻家

　イヌイットのWillie Ishulutakは、カナダのヌナバット準州イカルイト市でソープストーン(滑石)の彫刻家をしている。10月某日の彼の総摂取カロリーは4,700kcalだった。彼の年齢は29歳、身長175cmで体重は65kg。彫刻はイヌイットの伝統工芸の一つで、今や彼らにとって賃金を得る職業になっている。彼は1日に2つか3つの作品を仕上げて、夜にイカルイト市のバーやレストランで一つにつき約1万円、またはそれ以上の値段で売るそうだ。

20.カナダ　CNタワー運営担当役員

　カナダのトロント市にあるCNタワーの運営担当役員、ニール・ジョーンズと、タワーの展望台にあるレストランで彼が食べる普段の食事。6月某日の彼の総摂取カロリーは2,600kcalだった。年齢は44歳、身長188cmで体重は100kg。このレストランで食事をすると、25ドル(約2,600円)の入場料とエレベーター料金がタダになるので、景色だけを見に行くよりランチを食べた方がお得なんだとか。

21.中国、ゲーマー・CGアーティスト

　フリーのCGアーティスト兼ネットゲーマーのXu Zhipengは、上海にあるインターネットカフェでいつも食事をとる。6月某日の彼の総摂取カロリーは1,600kcalだった。年齢は23歳、身長188cmで体重は71kg。彼は日夜パソコンに囲まれて過ごし、疲れた時もそこで寝る。そして週に一度友達のアパートでシャワーを浴びる。徹夜で続けたゲームの最長記録は3日間だ。このカフェでゲームに飽きた時はファンタジー小説を読むという。

22.中国　大学生

　中国、上海にある南京東路で普段の食事を披露する大学生のChen Zhen。6月某日の彼女の総摂取カロリーは2,600kcalだった。彼女の年齢は20歳、身長165cmで体重は48kgだ。食事については麺でもご飯でもかまわない彼女だが、ライスロールにはこだわりがある。特にお気に入りなのは揚げたパンや漬物、カラシナ、そして糸のように細かくなった乾燥豚肉を粘り気のある黒いご飯で巻いたものだという。友達と一緒に週に3回ほどKFCで食べるが、クーポンが無ければ食べに行けない。また、上海の北東部の小さなアパートに住んでいるZhenの父親と祖父母は、彼女が訪ねて来た時に少し豪華な食事をするので、平日は肉を食べない生活をするそうだ。

23.中国　農場経営の未亡人

　未亡人で農場を営むLan Guihuaは、中国の四川省にあるGanjiagou村の家の前でいつもの食事を披露してくれた。6月某日の彼女の総摂取カロリーは1,900カロリーだった。彼女の年齢は68歳、身長160cmで体重は55kg。食事は自家栽培の野菜や米が中心だが、その背後には鶏の羽と、手際良く羽をむしるために用意した熱湯入りのボウルが写っている。来客をもてなす特別な肉料理の下準備に使うのだ。この地域では、それぞれの農家はそれ自体が小さな食品工場であり、何千年も受け継がれてきた農業の知識の恩恵でもある。

24.エクアドル　農業経営夫人

　クアドルの中央アンデスにあるティンゴ村で農業を営む、Maria Ermelinda Ayme Sichigaloと彼女の普段の食事。このキッチンは煉瓦造りだ。9月某日の彼女の総摂取カロリーは3,800kcalだった。年齢は37歳、身長160cmで体重は54kg。彼女は土の上に設けた炉端でひざまずいたまま、直火を木切れと藁で調節して家族全員の料理を作る。そこにはテーブルもイスも無い。ゴミやこぼれ落ちた穀類を探しまわるモルモット達は祝日などのご馳走にされる。またこのキッチンには煙突も無く、天井の梁とわらぶきの屋根は煙で黒ずんでいる。ある調査では、エクアドルの農村では調理の際に出る煙を排気しないことが重度の呼吸疾患を招き、幼児の死亡率が50%にのぼる原因 にもなっているという。

via:amusingplanet・原文翻訳：R

　この写真集には他にも、日本の力士や、北極のハンター、苦行を行うインドのヒンズー教徒、チャドに暮らすスーダン人の難民、ヤクを飼うチベット人牧夫、バングラデシュの縫製工場で働く女性、イラク戦争で負傷した退役軍人をはじめ、一日にわずか800kcalしか摂らない牛飼いのマサイ族女性や、摂食障害を患い、一日に12,300kcal相当のジャンクフードを食べるイギリス人女性などが収録されている。興味のある人はチェックするといいだろう。▼あわせて読みたい
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