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洪水がもたらす後遺症。大規模研究で長期的な健康への影響が明らかに

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(著) (編集)

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 世界中で発生した洪水を調べたところ、恐るべき社会的な後遺症が明らかになったそうだ。被災地域では人々が病院に殺到するのだ。

 感染症から心血管疾患・呼吸器疾患、さらには精神疾患まで、被災者はさまざまな症状で受診しており、しかも状況が落ち着くまでには最大で7カ月もかかるという。

 これはオーストラリアのモナシュ大学が主導し、世界8か国、747の地域における3億件以上の病院記録を分析した結果明らかになったことだ。

 洪水の長期的な健康影響に関する世界最大かつ最も包括的なこの研究は、これまで見落とされがちだった水害が人々に与える広範かつ衝撃的な影響を浮き彫りにしている。

この研究は『Nature Water』(2025年4月8日付)に掲載されたものだ。

世界最大規模の調査が示した「洪水と健康被害」の関係

 オーストラリア、モナシュ大学のチームによるこの研究では、2010~2019年にかけて洪水が発生した、オーストラリア・ベトナム・ブラジル・カナダ・チリ・タイ・ニュージーランド・台湾の747地域を対象に、病院の受診記録を調査した。

 その結果明らかになったのは,洪水が起きると病院受診件数が全体で26%増加することだ。

 災害があったのだから、そのこと自体は意外ではないだろう。だが健康被害は、洪水による怪我や溺水、あるいは感電といったものだけではない。

 洪水が終わってからしばらくは入院数が増加しており、被災者が病院を訪れる理由は、想像以上に広範囲にわたっているのだ。

入院者の内訳

心血管疾患(35%増)、呼吸器疾患(30%増)、感染症(26%増)、胃腸炎などの消化器疾患(30%増)、精神疾患(11%増)、糖尿病(61%増)、がん(34%増)、神経系疾患(34%増)、腎疾患(40%増)

 しかも研究チームの説明によれば、こうした状況が平常に戻るまでには最大7か月間もかかるという。

 「洪水にあった集団では、その直後に入院リスクが増加し(呼吸器疾患・精神障害は徐々に増加)、通常水準に戻るまでに約210日かかった(感染症は約90日,精神障害は約150日)」

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image credit:Pixabay

なぜ洪水後に健康被害が広がるのか

 これほどまで健康被害が広まる理由は、被災後の特殊な環境や病院の利用が難しくなることが関係しているようだ。

 たとえば、洪水によって水源が汚染されるうえに、洪水後にできる水たまりは感染症を媒介する昆虫の格好の繁殖地となる。

 仮設シェルターが提供されても衛生設備が不十分なことが多く、そのために呼吸器疾患・消化器疾患・感染症が生じやすくなる。

 さらに被災後の混乱では、いつも通りに既往症を管理することが難しく、そもそも医療機関の利用すらも容易ではない。

 洪水後は医療機関のアクセスや供給能力が低下し、腎疾患の透析、がんの化学療法・放射線療法、心血管疾患、呼吸器疾患、感染症、消化器疾患、精神障害、糖尿病、神経系疾患、腎疾患などへの定期的な医療介入が遅延するという。

 さらに家や財産を失ったことによる心理的ストレスも大きい。それは免疫を弱め、睡眠を乱し、健康管理を難しくし、人によっては薬物に溺れるようなこともある。

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image credit:unsplash

洪水が増加する今、私たちはどう対処するべきか?

 今回の研究において、日本は調査対象ではないが、決して他人事ではない。

 JICEによると、雨が多く、7割が山地や丘陵地である日本は、水害が発生しやすい環境にある。

 とりわけ近年では1時間50mmを超える豪雨が以前よりも多く、水害の被害額も10年で2倍になるなど、被害は増大傾向にある。

 研究を率いたグオ・ユミン教授は、世界の洪水被害は気候変動の影響でさらに悪化するだろうとニュースリリースで述べている。

気候変動、地球温暖化による豪雨の増加や海面上昇のために、洪水の激しさ・持続期間・発生頻度どれもが高まるでしょう(グオ・ユミン教授)

 政府や医療関係者は、洪水後には病気や怪我による受診・入院が大幅に増えるという実態を認識し、これを踏まえた災害対策や医療体制の確立を行うべきであるとのことだ。

References: World’s largest study reveals the long-term health impacts of flooding / Hospitalization risks associated with floods in a multi-country study

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この記事へのコメント 7件

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  1.  んー、水害に遭わないためには今後どうするか? という問いに対しては「日本の場合、低地はほとんどが沖積平野だからなるべく高いところに住む」くらいでしょうかね。 でも山や山で崩れたりとかあるから難しいです。 といいつつ、家を借りるときは水害に遭わなさそうな場所を選んでます。 東南海地震でも津波は大丈夫だと思うんだけど、予想を超えたらアウトかな。 こういう警鐘を鳴らしてくれる記事でその時の今後の身の振り方を改善しているの次の引っ越しのときまで記憶にとどめておきたいです

    • +3
  2. そりゃそうでしょ。みんな意識してないだけで「汚水」とか「おすい」って書かれたマンホール何ヶ所あると思ってんだ。そいつら結構浅いのも多いからね?

    全部混ざった水で溢れるんだわ。洪水ってのは。

    • +19
  3. シンプルに「衛生状態の悪化は万病の元」という事であり、その原因の一つが洪水〜濁流ですね

    • +16
  4. 呼吸器疾患は堆積した泥の乾燥や瓦礫の撤去なんかで舞う粉塵の影響も大きそうだね

    • +15
  5. 大地震で避難生活を余儀なくされ、その後亡くなって「関連死」に計上されるものもるからね。

    • +6
  6. 津波があった時に、浄化槽や下水の汚水が混ざって流れてくると聞いて、津波というのはかなり汚い水だと思っておかないといけないと思った
    洪水も一緒だわな

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