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イカが人間をサメから守ってくれるかもしれない。イカ墨にサメを遠ざける効果

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 理由もなくサメに襲われるという事故は毎年発生する。それでも2024年は世界的に減少傾向にあり、全体で47件(うちアメリカが28件)と、10年平均した数(70件)の約半分だったそうだが、ゼロにはならない。そこでイカ先輩の登場だ。

 新たな研究によると、コウイカの墨(スミ)にはサメを遠ざける効果があり、環境にもサメにも優しい防サメ剤になる可能性があるそうだ。

 イカ墨のサメ忌避効果をうまく使えば、サメを人間から遠ざけ、両者共存の道を切り開くことができるかもしれない。イカはある種の救世主なのだ。

優れた生き物だが、人間の脅威となるサメ

 サメは素晴らしい生き物だ。聴力・視覚・嗅覚などきわめて優れた感覚を持っており、その力で現代の海の頂点捕食者として君臨する。

 だが、その捕食者としての資質がときに摩擦を生むこともある。サメに襲われて海水浴客が死亡、こんな痛ましいニュースを目にしたことがあるだろう。

 断っておくと、サメに襲われて亡くなる人間はごくごくわずかでしかない。人間を殺した数ということで言うなら、本当に危険なのは私たち人間自身だし、それ以外で人類の天敵と言えそうなのは小さなあの生物だ。

 だから無闇にサメを恐れる必要はない。とは言え、利用者の安全を守らねばならない海水浴場などの関係者にとって、サメによる事故が放置できない問題であることもわかる。

海の頂点捕食者であるホホジロザメだが、絶滅危惧種でもある Photo by:iStock

イカ墨がサメを遠ざけてくれる理由

 そこでアイルランド、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンなどの研究チームが目をつけたのがコウイカのスミだ。

 サメはきわめて鋭い嗅覚の持ち主だ。しかし鋭すぎるゆえに弱点にもなる。コウイカの墨(スミ)はそこを突くのだ。その成分がサメの嗅覚を混乱させるので、サメを遠ざける効果が期待できる。

 今回の研究の中心人物であるコリーン・ローレス博士は、ニュースリリースでその効果について次のように説明する。

この発見を活用して、海水浴場、養殖場、漁場などの場所で安全な忌避剤として使えば、サメと人間との遭遇を最小限にできるかもしれません(コリーン・ローレス博士)

 ローレス博士らの研究では、ホホジロザメなどの遺伝子データをベースに、サメの嗅覚受容体の三次元構造モデルを構築している。

 これを元に分析を進めると、スミに含まれる「メラニン」の構造は、サメの嗅覚受容体に付着し、ニオイをわからなくするだろうことが判明したのだ。

 一口にサメと言ってもさまざまな種が存在する。だが嗅覚受容体の作りは基本的に同じであるため、イカスミ防サメ剤はどんなサメにも効くだろうと考えられている。

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コウイカのスミが人間とサメの命を救うかもしれない image credit:Diego Delso, CC BY-SA 4.0

イカは人間だけでなく、サメや他生物の命も守ってくれる救世主

 イカスミ防サメ剤は、あくまでサメ除けなので、サメを傷つけてしまうことはない。さらに良いことに、サメ以外の生き物を傷つけることもない。

 これまで海水浴場へのサメの侵入を防ぐために魚網などが使われてきた。だが、これは特に危険ではないサメや、エイ・ウミガメ・イルカ・クジラなどもかかってしまう。

 イカスミ防サメ剤ならば、こうした混獲を防ぎ、サメ以外の生物たちへの悪影響を最小限に抑えることができる。

 さらにイカスミ防サメ剤は人間を守るだけでなく、サメをも守ってくれるかもしれない。

 海の中には汚染されていたり、漁業が行われていたりと、サメにとって危険な海域もある。こうした海域にサメを近寄らせないために、イカスミ防サメ剤を利用できるのだ。

 「多くの種が絶滅危惧種に指定されてますが、彼らの状況を改善するための管理にも有効かもしれません」と、ローレス博士は語っている。

 なおコウイカがすごいのはスミだけではない。中には催眠術を駆使する種までいるという。さらには、後でもらえる大好物のためなら、目先の欲望を抑えることもできる自制心まであるというのだから、やはり頭足類は侮れない。

 この研究は『G3: Genes, Genomes, Genetics』(2025年1月8日付)に掲載された。

References: Cuttlefish ink has potential as natural repellent to keep sharks away from beaches - University College Dublin

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この記事へのコメント 17件

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  1. コウイカのイカ墨おいしいやつらしいからサメ避けに使うのもったいない気がする
    タコのは駄目なんですか…

    • 評価
    1.  いま調べてみたところ、読んだ記事がただしければという前提で、タコのスミも「ウツボの嗅覚をまひさせる効果がある」という記事を見つけたので使えないことはないみたいです。 ただ、タコのスミがあまり食べられないのは取り出すのが難しいからのようです。 

      • +4
  2. インクにも食材にもなる上にサメ除けにもなる墨を吐くなんて
    コウイカさんはスミに置けない上にイカしてるなぁ

    • +11
  3. 「効果が期待できる」ってだけか
    健康情報番組レベルやな笑

    • -2
    1. 記事読む限りではまだ机上論みたいだから
      とりあえず実験で効果の有無を検証してほしい

      • 評価
  4. どんな感じで鼻が利かなくなるんだろう
    物凄く臭くて何も分からなくなるのか
    イカスミ被ったら世界から匂いが消えた?なんで?ってなるのか
    どっちにしてもサメから逃げたい時は良さそう

    • +3
    1. サメの血液に対する嗅覚は、9,000リットルの水で薄めた1滴の血にも反応するそう
      これを、イカ墨がつぶしてしまえるらしい
      ただし、視力や聴覚にも優れており
      さらには生体電気も感じることができるから
      近くに寄らせないことが重要になる
      血の臭いが遠方まで届くことを考えると
      遠方のサメを引き寄せない効果は期待できそうってことになる

      • +6
    2. イカ墨が捕食者にとっておいしいものではないことは確かだよね
      イカ墨特有の臭いに血の臭いが含まれていたとしても
      それ以上に良くない臭いが含まれているってことが考えられるから
      そんなものに構っている暇なんてないと判断しているのかも

      • +1
  5. メラニンって、日焼けやシミとかのあれでしょ?人間でも気合いでなんとか作れそうな気がする

    • +2
    1. メラニンには基本部分だけでも複数あり
      それに他の高分子化合物がくっついて完成する
      これが血液の臭いを感じる受容体に結合する
      便潜血検査も陽性になるから検査の数日前からイカ墨は食べてはダメってウィキペディアにあったw
      つまり、イカ墨のメラニンは特別製らしい
      作るなら遺伝子操作した酵母菌とかでできないものかな
      全体を作らなくても効果がある部分だけを作ることができればな

      • +4
  6. コウイカの墨はヤバイよ。墨汁みたいなもの想像してたら大間違いだ。
    粘っこいわ、濃度半端なく高いわ、量が多いわでろくでもないぞあれ。

    一回キッチン大惨事にしたから知ってる。貰い物は要注意だ。魚屋さんみたいに扱いやすくない。

    • +3
  7. タコ墨は煙幕でイカ墨はデコイだというが、うっかり墨を食った捕食者に不快感を与えるのは有効かも

    • +3
  8. シャークトパスって本来相性悪かった組み合わせなのかな…

    • +2

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