
最新の研究によれば、彼らは夕食に大好物のエビを美味しく味わうために、昼食のごはんをぐっと我慢するという。
つまり彼らにはエサをもらえる時間を記憶する力があり、その記憶で予定を立て、さらにより良い結果を得るために自制心まで発揮できるということになる。これは高度な脳がなければできない、とても複雑な行動である。
コウイカはカニよりエビが好きなことを確認
イギリス、ケンブリッジ大学とフランス、ノルマンディ大学の研究グループがヨーロッパコウイカ(学名 Sepia officinalis)29匹で行った実験は次のようなものだ。まず彼らを水槽に入れ、1日に5回、カニとエビを一緒に与え、そのときの食いつき具合を5日間観察してみた。
これはコウイカの好きなエサを確かめるための実験だ。同時にエビとカニを与えられたとき、最初に飛びつくエサがあれば、おそらくコウイカはそちらの方が好みなのだろう。
その結果、29匹すべてがエビを好むらしいことが判明した。コウイカはカニよりエビが大好きなのだ。

Petra Roth / Pixabay
大好物のエビを夕食にだけ与える実験
今度はコウイカを2グループに分け、エサを与えるスケジュールを変えてみた。どちらのグループにも昼にはカニだけが与えられる。大好物のエビが与えられるのは夜だけだ。
ただし片方のグループには必ずエビを与え、もう片方には乱数発生器を利用してランダムに与えたり与えなかったりしてみた。
すると必ずエビを与えられたグループは、夜になれば好物のエビをもらえると理解したらしく、徐々にカニを食べる量を減らし、エビをたくさん食べるようになったのだ。
しかし夜にエビを食べられるかどうか不確かな状況に置かれたグループでは、カニを食べる量はほとんど変化しなかったという。
さらに両グループのエサのスケジュールを完全に入れ替えてみた。するとまったく同じ現象が観察された。
グループを入れ替えても、確実にエビをもらえるようになったグループは、やはり徐々にカニを食べる量が減ったのだ。

Damocean
コウイカはごちそうを得るため、目先の欲を我慢する
この実験は、人間の子供をはじめとする脊椎動物を対象に行われる「マシュマロ実験」に似ている。これはもともと、目の前にあるマシュマロを食べるのを我慢すれば、更に追加でマシュマロをもらえるという実験で、将来の大きな報酬のために、目先の欲求に耐えられるかどうかを試すものだ。
テストに見事クリアできる動物は、人間の子供のほか、一部の霊長類、犬、カラスなど、いずれも知能が自慢の生き物たちだ。もちろん、こうした動物でも失敗するときはあるし、人間の子供でも我慢できるのは3人に1人くらいだ。
そしてコウイカもこのラインナップに加わった。無脊髄動物にもかかわらず目先の欲を我慢できる自制心があることが確認されたのだ。

Damocean/iStock
異なる進化を辿ったコウイカが同じ認知能力を身につけた不思議
5億5000万年前に脊椎動物から枝分かれした彼らは、無脊椎動物であるばかりか、この地球に存在する他のほぼすべての動物と異なる進化の経路を辿ってきている。ゆえに脊椎動物が見せてくれる認知能力を触手の生えたコウイカまでが持っているというのは、とても不思議で興味深いことなのだ。それは複雑な認知能力の進化を理解する大切なヒントを与えてくれる。
なお、注意して欲しいのは、今回コウイカで観察された行動が、本当に将来へ向けて計画する能力に裏付けられたものだったと完全に断定されたわけではないということだ。
これをきちんと立証するにはもう少し研究が必要となるだろう。
この研究は『Biology Letters』(2月5日付)に掲載された。
References:eurekalert / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
「朝夕エビとカニを適当にやろう」するとイカたちはどちらもかまわず食った。
「朝にはカニ、夜にはエビをやろう」するとイカたちはカニを残してエビだけ食った。
好きなものを確実に食べられる状況では嫌いなものを残すことを「朝蟹暮蝦」(ちょうかいぼか)というのはこの故事に由来する。
2. 匿名処理班
イカにも、そのとおり!
3. 匿名処理班
これからはイカをペットに飼うのがナウい(死語)時代に
ってなるかー!
4. 匿名処理班
消化に必要なエネルギーと獲得できる栄養価を
計算できる能力が備わっているからね。
5. 匿名処理班
次があるかもしれないから今は食べないなんて絶対命取りのはずなのに
「時間になったら何者かから絶対餌をもらえる」ってわかってるなら相当知能高いな
あと時間感覚もあるのか?
6. 匿名処理班
我慢できない自分はコウイカ以下だ…
7. 匿名処理班
自制心の有無を調べる凄く興味深い実験だな
やはり自制心持っての行動かどうかの見極めが大事だろう
例えば捕食に費やすエネルギーによる費用対効果としてカニよろエビを好むのか美食の好みによってエビを好むのかでもとらえ方が結構違ってくると思う
8. 匿名処理班
※6
俺も我慢できなくてさー、イカちゃんカニちゃん海老ちゃん、バンバン食っちゃうから尿酸値高くなっちゃって、足の親指が痛てーんだ・・・。グッスン。
9. 匿名処理班
一方、ダイオウグソクムシは夕食のために昼食を抜き、夕食でも何も食べなかった。
10. 匿名処理班
いかすごい!イカすな!
11. 匿名処理班
コウイカはイカの中でもトップクラスの可愛さ
12. 匿名処理班
カニ「エビうまいな」
イカ「カニもエビもうまいな」
人間「イカもカニもエビもうまいな」
エビ「くそっ…お、覚えてろよ!」
13. 匿名処理班
※5
体内時計はどの生物も持ってるんじゃないの、あとカウントする機能も。
季節で芽・花付ける植物や、大潮の時に一斉に産卵するサンゴとか。稲は実が実る時期が日照時間の累計で決まるし。
このイカは、餌貰える回数か間隔が体内時計に書き込まれ、何の餌がもらえるかって条件が紐づけられたんだと思う。それでも後者は知能が高い証拠なんだろうけど。
エビをたらふく食える実験体に、食えるけど十分じゃないってやってほしいな。そうしたらカニを食うのかしら。
14. 匿名処理班
安定した生活が大前提だよね
野生の時と切り替えられるなら凄い事だと思う
15. 匿名処理班
何となくお腹の減る記事
16. 匿名処理班
人類絶滅の後はイカが覇権を握るらしいし。
17. 匿名処理班
イカって世界征服もしないでこんなこと考えてたの?
ガッカリした。
18. 匿名処理班
※1
民明書房館か?(笑)
19. 匿名処理班
>>17
イカスミを究極兵器に改良したものを保有して、秘密裡に各国政府を揺さぶっているらしいぞ。
20. 匿名処理班
イカも空腹が最高の調味料なの?
それにも驚いたけど
21. 匿名処理班
「このカニ不味いんだよな…」と思いながら食べるイカさんカワイイ
22.
23. 匿名処理班
※13
知能のある人間だって水槽で時計も太陽も無い中だと今どのくらいの時間かってなかなかわからないし
イカは一日が24時間周期でその中の定期で餌が来る、なんて理解できないでしょって話だと思うけど
24. 匿名処理班
なんかかわいい
25. 匿名処理班
一方人間はアオリイカを我慢してコウイカ食べた
26. 匿名処理班
※21
イカ『ガーン!ゆ、夕食、エビだった!エビだったのにッ!・・・』
初エビ夕食、昼カニ食べ過ぎお腹いっぱいで、愕然とするイカを見てみたかったりもする
27. 匿名処理班
人間も、リンゴとミカンが置いてあったらミカンを食べるだろうな、楽だから。
28. 匿名処理班
本当はカニの方が好きだけど…食べるのめんどい…と思ってたかもしれない
29. 匿名処理班
※27
皮剥くの面倒くさいじゃん
30. 匿名処理班
自制心があるのは分かるけど、報酬の為の我慢じゃないからマシュマロ実験とは大分違うんじゃない?
事前に美味い飯が食えるのが分かっているから、まずい飯でお腹膨らますようなことしないって話で。
31. 匿名処理班
>>17
世界征服なんてめんどくさくて無駄な事ははなからしないんだよ。賢いから。
32. 匿名処理班
待って待って
夕食にたらふくエビ食ったから昼のカニを食わなかっただけじゃないの
33. 匿名処理班
※32
なるほどなー
確かにそういう穴があるかもしれない
でも時間経過とともに行動が変化してるなら記憶してるのは確かかな?
34. 匿名処理班
※32
じゃあ昼エビにして様子みよう
35. 匿名処理班
※31
面倒くさいか?
世界征服なんてその気になれば3日もあれば十分だぞ
36. 匿名処理班
※17
「今世界征服を我慢すれば、もっと楽に世界征服できる。もう少し待てば地上の二本足は滅びるんだから」
37. 匿名処理班
それ以前に、お腹いっぱいの概念があるということか
38. 匿名処理班
エビカニをたっぷり食べたイカはさぞかし美味しいでしょう…
39. 匿名処理班
魚でも人の顔を覚え、飼い主や馴染みのダイバーに愛想を振りまくからね
イカもペットとして世代を重ねると人に懐くようになるかもね
40. 匿名処理班
なんで夕食のコントロールがカニじゃなくて餌を与えないなんだ
この条件で判定できるのは好物の効果ではなく
夕飯が確実にありつけるなら昼飯は腹7分目に抑える
夕飯が定かでないなら食えるときに食っておくという事だけだ
41. 匿名処理班
※17
そう思わせてるだけでゲソ。