この画像を大きなサイズで見る仕事で成功できるだろうか?病気は治るだろうか?借金は返済できるだろうか?人は不確かな状況や困難に遭遇すると、なんとかして答えを求めようとするものだ。
こういった疑問に答えを求めて安心したいという心理は昔も今も変わらない。答えとして頼るものが少々うさんくさい占い師の予測だとしてもだ。
ここでは、古代の人々が頼っていた占いの道具を見ていくことにしよう。
古代人が良く利用していた占い道具「ソルテス・アストラムサイキ」
エジプト、カイロの南にある古代都市オクシュリュンコスで発見された、西暦2世紀か3世紀のものと思われるパピルスの束はある意味、わからない未来への疑問に答えを出してくれる。
おもに中世の写本にある「ソルテス・アストラムサイキ」または「アストラムサイカス
の神託」として知られている。
この文書を使うときは、92のリストの中から自分の心配な状況にもっとも近い質問を選ぶ。
次にひとつの質問に対して1から10まである回答をくじ引きしてランダムに選ぶという流れだ。
古代の人々は次のようなことを占っていたようだ。
ソルテス・アストラムサイキの質問項目内訳
・財産と相続 20%
・政治と官職 13%
・商取引 10%
・恋愛、結婚 13%
・その他法手続き
現代も変わらないが、アストラムサイキからもやはり金銭と生計が大きな関心ごとであることがわかる。
92の質問にはそれぞれ少なくとも10の回答例があり、それはとてもいいことから恐ろしく悪い内容まで多岐にわたっている。
興味深いのは、いい答えと悪い答えの中間の答えだ。
例えば、相談者が配偶者と終わりになるかどうか訊ねた場合、その答えには「あなたは配偶者と和解するが後悔するでしょう」、「あなたは死ぬまで配偶者と縁が切れることはありません」、「あなたは自分の利益のために配偶者と別れることになるでしょう」などがある。
こうしたシステムは、不確実でわからないことに対して、確かな答えを求めたがるという人間の根深い欲求が基盤になっている。
人生をどのように快適に送るか?さまざまな状況での決断をどうやって下すか?神託は相談者が納得するためにその回答を神がそう告げていると神聖化するためのシステムといえる。
この画像を大きなサイズで見るソルテス・アストラムサイキの由来
ソルテス・アストラムサイキの神託書は、古代エジプトの伝説の魔術師、アストラムサイカスにちなんで名づけられているが、実際にはなんの関係もないらしい。
神託書はピタゴラスやアレクサンダー大王とのつながりを自慢しているが、かなり眉唾もので、地元の占い師に持ちかけるような相談事項が並ぶ占い道具だという。
専門家は、ソルテス・アストラムサイキのような占いの道具を〝くじ占い〟(sortesはくじの意)と呼んでいる。
こうした運頼みのくじ占いの文献上の証拠は、古代ギリシャやエジプトにまでさかのぼり、中世初期まであったという。
ローマ帝国は1~4世紀の間、最初は嫌っていたキリスト教を徐々に受け入れるようになり、ソルテス(くじ)を振るという異教の習慣がほとんどそのまま取り入れられた。その後、その時代の状況に合わせて更新されることもあった。
この画像を大きなサイズで見るそのほかの神託
「デルフォイの神託」で知られる神の巫女ピュティアは、神の起源を思わせるヘクサメトロス(六歩格。西洋の詩形のひとつ)という形で未来を告げ、命令口調でその答えも勧告という少々深刻なものだった。
だが、アストラムサイキはわりと親密さが感じられる口語的な言い回しで相談者に語りかける。
古代エジプトで見つかった別のパピルスには、「ホメロマンティオン」という神託がある。
これはホメロスの詩を使って未来の指針を与えるもので、相談者は特定の手順に従って占ってもらわなくてはならなかった。
ホメロスの詩の答えは、アストラムサイキのように適度に曖昧で相談者が希望を失わないような内容になっている。
この画像を大きなサイズで見る世界各地で発見されている占いの道具
現存するアストラムサイキやホメロマンテイオインのパピルスはギリシャ語で書かれていて、おもに北エジプトから来ている。
似たような文書は、ラテン語、ヘブライ語、コプト語、シリア語、アルメニア語、グルジア語でも存在し、こうした占いツールは教会はもちろん、さまざまな場所で発見されている。
市場の広場や柱などに刻まれているものもあり、その場によく集まる商人や旅人に特化した質問が網羅されている場合もある。
とはいえ、相談者のすべてがこうしたお告げを100%鵜呑みにしたわけではない。
キリスト教の文書『マリアのくじ福音書』にはこうした懐疑主義対策が盛り込まれていて、多くの回答の最後に「疑うな」、「二心を持つな」と釘を刺している。
これらは全能の神を信じたい気持ちと、それでも真実ではないかもしれないと疑う人間心理の二面性を表しているのかもしれない。疑いつつも早く答えが欲しいという心理だ。
ソルテス・アストラムサイキの回答は、肯定的なものが多く、相談者が望む回答を受け取る可能性が高かったようだ。
エリートや富裕層が良く利用していた
未来がどうなるのか知りたいという欲求はほぼ普遍的な人間性だが、古代においてこうした占いを利用できた人たちはエリートや金持ちなど一部の人間だったという。
男女比では男性が80%、女性が20%だったという仮説が立てられている。
古代エジプトでは、女性の法的な立場に比較的寛容だったが、ローマ帝国の一部になったとき、それは縮小されたようだ。また、逃亡を企てている奴隷が、うまく逃げおおせられるだろうか?という相談もあった。
この画像を大きなサイズで見る古代後期は宗教色が出る
西暦3~7世紀になると、キリスト教の文脈に合うような質問項目が多くなった。
「私は教師になれるでしょうか?」という質問が「私は聖地を旅できるでしょうか?」という質問に変わったり、恋愛相談が「私は修道士になれるでしょうか?」といった宗教色が強い質問に置き換えられた。
アストラムサイキが長く残っている理由のひとつは、時代時代の社会の状況に合わせて変更されていくという柔軟性があり、特異性と一般性のバランスがうまくとれているからではないかという。
この画像を大きなサイズで見るキリスト教徒は中世まで、こうした質問ベースの方式をとった神託に頼っていた。
戦争に行くかどうかを決めるのに、占いに頼っていたケースもある。
現代でもなにかを決断しなくてはならないときに、ある種の神のお墨付きに頼ることはある。精神的に安心したいという心情はいつの時代でも変わらないのだろう。
References: To Divine the Future, the Ancients Relied on These Chance-Based Fortune-Telling Tools | Smithsonian














試験のときに使った鉛筆サイコロは由緒あるものだったんだな。