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捨てるくらいなら供養。50年前のアメリカで行われた最も奇妙なピザ3万枚の葬儀とは?

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(著)

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 万物に魂が宿るというアニミズム的感覚が浸透している我が国では、人や生き物以外を弔うような行為に違和感はあまりない気がする。針供養や人形供養、ロボット犬の供養だって普通に行われているしね。

 だが造物主である神がすべてを創造したとする西洋文明からすると、そうした行為はレアな事態だと思う。

 1973年のアメリカで、なんとピザの葬儀が大々的に執り行われたことがあるそうだ。そう、あのチーズとかトマトソースとかペパロニとかがたっぷり乗った、食べ物のピザのお葬式なんだよ。

「冷凍ピザ」のリコールで、廃棄の代わりに葬儀を決行

 1973年3月5日、アメリカのミシガン州では約3万枚のピザの「葬儀」がしめやかに、そして大々的に執り行われた。

 主催したのはアメリカ最大の冷凍ピザ工場の一つを所有していたイラリオ・マリオ・ファブリーニ氏。

 自社工場で生産された冷凍ピザをリコールする羽目になったファブリーニ氏は、ただ廃棄するのではなく、「葬儀」を行うことで抗議の気持ちを表したのだ。

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 ファブリーニ氏は、もともとはクロアチアのリエカ出身だったが、リエカが第二次世界大戦後にユーゴスラビア領になると、多くのイタリア系住人とともに脱出し、最終的にアメリカに移住した。

 戦前のリエカはイタリア領で、人口の9割近くがイタリア系の住民だったという。そんな背景からファブリーニ氏は、自身も慣れ親しんでるイタリアの味、ピザをアメリカで売ることを家業として選んだのだろう。

 ファブリーニ氏はまず自宅のキッチンでピザを作り、冷凍ピザとして販売し始めた。彼の妻のオルガさんは、伝統的なレシピをアメリカ人の口合わせるための試行錯誤を重ねた。

 そして10年後、ファブリーニ氏の事業は、アメリカでも最大のピザ工場の一つとなった。

トッピングのマッシュルームにボツリヌス菌が?

 すべてが順風満帆に見えた1973年、事件は起こった。この年の1月、オハイオ州の缶詰工場で生産されたマッシュルームの缶詰の中に、異常に膨らんでいるものが発見された。

 アメリカ食品医薬品局(FDA)が検査を行った結果、該当するマッシュルームの缶詰が、ボツリヌス菌に汚染されていることが判明した。

 そしてこのマッシュルームを使っていたファブリーニ氏の冷凍ピザにも、回収命令が下ったのだ。

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image credit :photo AC

 ファブリーニ氏の被った損害は約3万ドル(現在のレートで約447万円)、小売価格にすると約6万ドル(894万円)とも言われている。

 移民としてアメリカにやってきて以来、ファブリーニ氏はピザ一筋に一生懸命働いてきた。FDAの通達を聞き、ファブリーニ氏は目の前が真っ暗になる思いがしたという。

どうせ捨てるなら、ピザの葬式を大々的に開催しよう!

 これまでに自分が築いてきたものが、すべて失われてしまうのではないか。対象となったピザは29,188枚。これだけのピザをゴミにするには忍びない。

 そう思った彼は、責任の所在を明確にする手段として、人目につかないように廃棄する代わりに、その様子を公開することにした。

 さらにファブリーニ氏は考えた。どうせならピザの葬式をしよう! 珍しい出来事が話題になれば、世界に向けて報道もされ、彼のピザの宣伝にもなるだろう。

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 当日は数百人がこの「葬儀」に参列し、4台のダンプカーいっぱいに積まれた冷凍ピザの山が、深さ5.5mの穴に投げ込まれる様子を見守った。

 ミシガン州知事のウィリアム・ミリケン氏も駆けつけて、牧師の代わりに「悲劇に立ち向かう勇気」についての説教を行ったという。

 葬儀の最後には、ファブリーニ氏自らがピザの墓に花輪を捧げた。その花輪は、トマトソースに見立てた赤いグラジオラスと、チーズの代わりの白いカーネーションでできていたそうだ。

 なお、葬儀の終了後、ファブリーニ氏によって、調理したての冷凍ピザが参列者にふるまわれたとのこと。 

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ボツリヌス菌混入は誤報だった!

 この「葬儀」は確かに話題にはなったが、それでもファブリーニ氏の冷凍ピザの安全性を疑問視する声は多かったらしい。

 だが、後になってFDAの検査が間違っていたことがわかった。マッシュルームにボツリヌス菌は含まれていなかったのだ!

 ファブリーニ氏は訴訟を起こし、最終的に21万1,000ドル(約3150万円)の賠償金を勝ち取った。

 その後彼のピザ工場は順調に営業を続けたが、1980年代初頭に廃業。ファブリーニ氏は2023年2月に91歳で亡くなったそうだ。

 彼が作り上げたビジネスモデルは、バーなどに冷凍ピザを温める電気オーブンを貸し出した上で、ピザを卸すというやり方だった。

 バーでは彼の会社から借りているオーブンで、彼の会社が作った冷凍ピザを温めて客に出すわけだ。

 現在もこのビジネスモデルは生きていて、アメリカの多くの場所で、ファブリーニ氏と同様のやり方で冷凍ピザが販売されている。

That time 30,000 Contaminated Frozen Pizzas got Funeral | Short Documentary
The Great Michigan Pizza Funeral (Short Documentary)

References: US town held funeral for nearly 30,000 pizzas for a very important reason

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この記事へのコメント 7件

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  1. 神様、あなたの恵みを無駄にしてごめんなさい

    ってのも含まれた葬儀なんでしょうねきっと。

    • +14
  2. 日本なら普通の範疇なのに
    「頂きます」「御馳走様」は誰のため?
    全てに感謝する意味だよ
    あるいは筆供養もあり針供養、人形供養もある
    それを生業にしてるなら当たり前のこと

    • +5
  3. 昔郵政省から日本郵便株式会社に変えた時、大量の郵政仕様の配達車が
    ひっそりスクラップ屋送りになり、オタ内で大ブーイングの嵐
    たいしてペリカンが宅配事業撤退した時に出てきた同じく大量の配達車は
    ひっそり猫が購入し、ペリカン車なのに猫色になって走るというこれも
    超レア車にオタ内で大盛り上がり
    あのくず鉄になった郵政省仕様も今回のように供養すればオタも
    ブーイングせずに済んだのにもったいねえわ

    • -3
  4. 案外、ピザたちもスパゲッティモンスターのもとに召されて楽しくやってるかもよ

    • +5
  5. 廃業残念だなあ。どんな味だったんだろう。

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