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3つの唇に赤い目。新種のウミグモがカナダの海で約100年ぶりに発見される

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新たに発見された新種のウミグモ、カリパレーネ・ピロススペデス Photo credit: Cormac Toler-Scott.
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 カナダのセイリッシュ海で約100年ぶりに、奇妙な姿をした2種類の新種のウミグモが発見された。

 ブリティッシュコロンビア大学の研究チームが気候変動の影響を調べるために潜水調査を行ったところ、赤い目と毛深い脚、3つの唇を持つ不気味なウミグモを見つけたのだ。

 ウミグモは脚にある穴から卵を産み、オスが卵を体に貼り付けて育てるという変わった生態を持っている。

 もう1種の体には、さらに別の小さな寄生生物が住み着いていたという。

 この研究成果は『Organisms Diversity & Evolution』誌(2026年8月26日付)に掲載された。

参考文献:

約100年ぶり、カナダのセイリッシュ海で新種のウミグモを発見

 カナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカのワシントン州にまたがる内海、セイリッシュ海で、約100年ぶりに新種のウミグモが2種発見された。

 ウミグモは約5億年前に登場し、一度も陸に上がることなく海の中で生きてきた節足動物である。

 ウミグモはクモやサソリ、カブトガニに近い仲間で、陸上のクモによく似た姿をしているが、種によっては脚が最大12本にもなる。

 ブリティッシュコロンビア大学のコーマック・トーラー=スコット氏ら研究チームはは、気候変動や人間の活動がウミグモに与える影響を調べようとした。

 しかし、セイリッシュ海にどんな種類のウミグモがいて、どんな暮らしをしているのかは、ほとんど知られていなかった。

 研究チームは、2023年9月から2024年8月にかけてセイリッシュ海の各地で潜水調査を行い、水深18mまでの海中でウミグモを採集した。

 研究チームが採集したウミグモの体を顕微鏡で細かく観察し、DNAを解析したところ、これまで知られていなかった新種が2種見つかったのだ。

赤い目と毛深い脚、3つの唇を持つカリパレーネ

 新種の1つは、脚の下半分を覆う長く曲がったトゲにちなんで、ラテン語の「毛深い足」をもじったカリパレーネ・ピロススペデス(Callipallene pilosuspedes)と名付けられた。

 カリパレーネ・ピロススペデスは赤い目を持ち、頭の先には吻(ふん)と呼ばれる短い管が突き出ている。

 吻の先端には、食べ物をかむ前につかむためのツメと、3つの唇でできた口がついていて、口は感覚器の役割を持つ細い触手に覆われている。

 半透明な体とあいまって、小さな海のエイリアンだ。

 今回の調査で見つかったカリパレーネ・ピロススペデスの標本は1匹だけだった。

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新種のウミグモ、カリパレーネ・ピロススペデス(Callipallene pilosuspedes)の3つの唇と触手に覆われた口(スケールは30μm) Photo credit: Cormac Toler-Scott.

ウミグモのユニークな繁殖方法

 ウミグモのメスは脚全体に卵巣が広がっており、脚でつくった卵を脚にある専用の穴から外へ押し出す。

 オスは交尾の際に、頭の付け根にある担卵肢(たんらんし)と呼ばれる器官で卵をすくい上げ、自分の脚から出す接着剤で卵を担卵肢に貼り付けて育てる。

 担卵肢は毛づくろいにも使われる。

 カリパレーネ・ピロススペデスが担卵肢を器用に自分の脚に巻き付け、担卵肢の棘を櫛のように使って体を掃除する姿も、顕微鏡で観察されている。

体に寄生生物が住み着いていたタニスティルム

 もう1つの新種は、標本が最初に採集された場所の近くにある先住民の古代の村の跡にちなんで、タニスティルム・キーヒン(Tanystylum kiixin)と名付けられた。

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新種のウミグモ、カタニスティルム・キーヒン(Tanystylum kiixin) Photo credit: Cormac Toler-Scott.

 浅い海にすむ小型のウミグモの多くは、自分より大きな生物に寄生し、吻で体液を吸って暮らしている。

 タニスティルムはクラゲの仲間であるヒドロ虫の一種に寄生していた。

 自分が寄生しているにもかかわらず、タニスティルムの体には、自分よりも小さな寄生生物がびっしりと住み着いていた。

 タニスティルムの担卵肢はカリパレーネよりずっと小さくて不器用なため、タニスティルムは自分の体をうまく掃除できない。

 そのため、タニスティルムの体には泥やごみがたまり、泥やごみの中に小さな寄生生物が住み着いていたのだ。

 トーラー=スコット氏は、他の生物に寄生して暮らすウミグモの体に、さらに小さな寄生生物がすみついている状態を「生態系の中の生態系の中の生態系」と表現している。

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タニスティルム・キーヒンに寄生していた極小の寄生生物 Photo credit: Cormac Toler-Scott.

セイリッシュ海にはまだ見つかっていないウミグモがいる

 今回の研究は、詳細な画像とDNA解析の両方を使ってセイリッシュ海のウミグモを調べた初めての包括的な研究となった。

 研究チームは、これまで遺伝子が調べられていなかった複数のウミグモの遺伝子データを作成し、セイリッシュ海にすむウミグモを見分けるための識別ガイドも作った。

 新種2種は世界的なデータベースに登録された。

 トーラー=スコット氏は、調査できたのは1シーズンだけだったが、セイリッシュ海にはまだ記録されていないウミグモの種が確実にいると語っている。

 海の無脊椎動物が気候変動からどんな影響を受けているのかを知り、守っていくためには、まずどんな種がいるのかを見分けられるようにする必要があるという。

 深海のみならず、比較的浅い海にもまだまだ多くの、未知の生物が潜んでいるようで、今後の調査結果が待ち遠しいね。

References: DOI.10.1007/s13127-026-00707-3

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