メインコンテンツにスキップ

メタンを食べる細菌を育て餌にする「ウミグモ」の仲間3種を深海で初めて発見

記事の本文にスキップ

4件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
メタンを食べる細菌を育てて餌にする新種のウミグモ / Image credit:Shana K. Goffredi
Advertisement

 アメリカ西海岸沖の深海で、独自の生存戦略をもつ3種の新種ウミグモが発見された。

 このウミグモは、体の表面にメタンをエネルギー源とする細菌を繁殖させ、それを直接食べて生きている。

 アメリカの研究チームが太平洋岸の深海メタン湧出域で、この新しい細菌利用の仕組みを明らかにした。

 ウミグモが細菌を餌として活用する例はこれまで確認されておらず、深海生態系の理解に新たな知見をもたらしている。

 この研究は『PNAS』(2024年6月16日付)に掲載された。

極限環境の深海でメタンを食べる細菌を養殖するウミグモ

 強力な温室効果があるメタンは、地球の気候にとって厄介な代物だが、真っ暗な海底に生きる小さな生物にとっては命の糧である。

 最近、アメリカ西海岸沖の「メタン湧出域(ゆうしゅついき)」で、3種の新種の「ウミグモ」が発見された。

 ウミグモとは、海に生息する節足動物の1グループで、小さな体と長い手足が地上のクモに似ているが、それとはまた違う生物だ。

 今回発見された3種の新種は、「セリコスラ属(Sericosura)」の仲間で、体長1cmほどの体はほぼ透明。どこか異世界のクリーチャーを思わせる姿をしている。

 彼らが生きているのは、太陽の光が届かない暗闇に包まれた深海だ。しかも通常のウミグモならあるはずの、獲物から体液を吸う牙のような器官がない。

 では何を食べて、生きているのだろうか?

 それは体にびっしりと付いた細菌だ。この細菌は、海底から湧き出るメタンと酸素を食べて糖や脂肪を作り出す、メタン酸化細菌(methanotrophs)だ。

 新種のウミグモは、自分の体の上で育てた細菌を直接食べることで、エネルギー源を得ているのだ。

 それはいわば、自らの体のうえで細菌を”養殖”し、自給自足をしているようなものだ。

 米国オクシデンタル大学のシャナ・ゴフレディ教授は、「まるで朝食に卵でも食べるように、ウミグモは自分の体表をはみ、そこにいる細菌をむしゃむしゃ食べるのです」と語る。

 こうした採餌戦略がウミグモで確認されたのは今回が初めてであるという。

この画像を大きなサイズで見る
セリコスラ属のウミグの一種 / Image credit:Shana K. Goffredi

ウミグモのオスは卵を足に巻きつけて保護する

 新種のウミグモは、繁殖方法も非常にユニークだ。

 体が小さいため、内臓の多くは長い手足の中にまで入り込んでいる。これは生殖器官も例外ではない。

 交尾の際、メスは足の「ひざ」付近から数百個もの卵を噴き出す。オスはそれを集め、「卵嚢(らんのう)」として自分の足にまるでブレスレットのように巻きつけて保護する。

 やがて卵が孵化し、子グモが生まれると、父親の体表に付着していた細菌がそのまま受け継がれ、新たな栄養源となる。

この画像を大きなサイズで見る
卵嚢を抱えているオスのウミグモ / Image credit:Shana K. Goffredi

深海が地球を守る役割

 このユニークな細菌利用の仕組みは、単なる生存戦略にとどまらない。

 気候変動、地球温暖化の原因であるメタンの一部を深海で捕捉し、大気中への放出を防ぐ役割を果たしている可能性があるのだ。

深海は遠い世界のように思えるかもしれませんが、すべての生物はつながっています

たとえ小さくても、これらのウミグモはその環境に大きな影響を与えているのです

海をこれからも持続的に利用したいのであれば、その仕組みを理解する必要があります(ゴフレディ教授)

 太陽光が一切届かない深海では、生命の営みは光合成ではなく「化学合成」によって支えられている。

 海の表層で死んだ生物が沈み、分解される過程で発生したメタンが、海底の亀裂から湧き出す。

 そのメタンを利用する細菌と、それを餌とする生物たちが独自の生態系を築いているのだ。

 今回確認された新種ウミグモは、こうしたメタンを利用する細菌を食べて生きる初の例だ。だが、同様の仕組みはウミグモ以外にも見られる。

 たとえばチューブワームや海綿などの仲間の中にも、似たような微生物との関係を築いている種が存在する。

 さらに、深海の生態系は決して一様ではない。今回発見された3種も、南カリフォルニア沖とアラスカ沖という異なる場所に、それぞれ局地的に生息していた。

深海は均一な世界と思われがちですが、実際には地域ごとに非常に多様な生物相があり、特定の環境にしか棲めない生物も多いのです(ゴフレディ教授)

 そのため、もし海底で採掘などの開発を行うならば、こうした固有の生態系を傷つけないよう細心の注意が求められる。

 ウミグモの研究が示すのは、深海という未知の世界が、私たちの気候とも密接に結びついているということだ。

References: PNAS / PHYS / Interestingengineering

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 4件

コメントを書く

  1. オスが卵の世話係なんだ
    同じくらいの大きさの地上のユウレイグモだと一回の産卵が10~40個と言うから
    ぜんぜんもっと多いよね

    こないだのゾウガメの記事のコメ欄で、海ガメは他のカメに比べて卵多いよね、って話題になったけど、やっぱり海の中って生き残るの厳しいってことかな
    タラコとか千兄弟って感じだし サメは少ないけど

    • +3

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

水中生物

水中生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。