メインコンテンツにスキップ

Googleでカラパイアを「お気に入りサイト登録」

パルテノン神殿の有名な錯視効果は実際には存在しないものだった

記事の本文にスキップ

2件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Image by unsplash / Spencer Davis
Advertisement

 ギリシャの首都アテネにそびえ立つ古代遺跡、パルテノン神殿は紀元前5世紀に建造され、古代ギリシア建築を現代に伝える重要な建造物として世界遺産に登録されている。

 パルテノン神殿は、その美しい直線を保つための錯視効果「目の錯覚を補正する計算し尽くされたカーブ」が取り入れられているという説が2000年以上信じられていた。

  ところが、英オックスフォード大学の数学者たちが、詳細な数学的モデリングで検証した結果、錯覚そのものが存在しないが、あるいは人の目にわからないほど小さいことがわかったという。

 この研究成果は『Royal Society Open Science』誌(2026年9月16日付)に掲載された。

参考文献:

2000年以上語り継がれてきたパルテノン神殿の伝説

 ギリシャの首都アテネにあるアクロポリスの丘に建つパルテノン神殿は、紀元前5世紀、都市の守護神である女神アテナに捧げる神殿として建てられたものだ。

 長年にわたり、この神殿には直線をより美しく見せるための錯視効果「目の錯覚を補正するカーブ」が意図的に組み込まれていると信じられてきた。

 オックスフォード大学のアラン・ゴリエリ教授が実測データと数学的なアプローチを用いて詳細に調査した結果、この定説は事実上意味をなさない神話であることが明らかになった。

この画像を大きなサイズで見る
Image by unsplash / Josh Stewart

土台のカーブに錯視効果はない。数学者が徹底検証

 神殿のカーブが目の錯覚を補正しているという伝説は、紀元前1世紀の古代ローマの建築家ウィトルウィウスの記述に端を発している。

 ウィトルウィウスがこれを書いたのは、神殿が完成してから400年ほど後のことだ。

 柱が立つ一番上の土台部分、基壇と呼ばれる場所の土台の側面は平らではなく、中央に向かって6cmほど高くなる緩やかなカーブを描いている。

 ウィトルウィウスは、これを土台の中央が沈んで見える錯覚を防ぐためだと説明した。

 後世の人々は、交差する線によって平行線が歪んで見える「ヘリング錯視」などが原因だと意味づけをしてきた。

この画像を大きなサイズで見る
2つの垂直線(赤)はともに直線であるが、外側に歪んでいるように見える。これがへリング錯視だ。Image credit:commons.wikimedia / CC BY-SA 3.0

 だがヘリング錯視は、線が鋭い角度で交わるときにもっとも強く現れる。

 神殿の柱はほぼ垂直に立っているため、その角度にはならない。

 そもそも長い水平線が中央で沈んで見えるという現象そのものにも、裏づけとなる証拠は見つからなかった。

この画像を大きなサイズで見る
論文が否定した神話の一つ。土台にカーブをつけることで建物がまっすぐ見えるとする説を図にしたもの。Image credit:Goriely, R. Soc. Open Sci., 2026

柱の膨らみも錯覚とは無関係だった

 もう一つ有名なのが、神殿の柱の中央部がわずかに膨らんでいる「エンタシス」と呼ばれる形状だ。

 東アジアの伝統建築でも似たようなテクニックが用いられており、日本語では「胴張り」と呼ばれる。

 これも柱の中央が細く見えてしまう錯覚を補正するためだと長く言い伝えられてきた。

 パルテノン神殿の柱の膨らみはわずか18mmにすぎない。

 ゴリエリ教授の計算によれば、一般的な距離から神殿を眺めた場合、このわずかな膨らみを人間の目で認識することはほぼ不可能である。

 ではなぜカーブがあるのか。教授は、土台のカーブは単に雨水がたまるのを防ぐための水はけの工夫だったのではないかと推測している。

 柱のカーブについても、当時の古代ギリシャ人の目に自然で美しく映るデザインだったからだと考えている。

この画像を大きなサイズで見る
柱をわずかに膨らませることで、まっすぐに見せているとする説を図にしたもの。Image credit:Goriely, R. Soc. Open Sci., 2026

神話はなぜ生まれたのか?古代ギリシャへの過剰な憧れ

 錯覚を補正するという伝説が、なぜ2000年もの間誰にも疑われることなく信じられてきたのだろうか。

 ゴリエリ教授は、古代ギリシャ文明に対する後世の人々の過剰な憧れが原因だと指摘している。

 現代の人々は、古代ギリシャの建築家たちが現代科学に匹敵する完璧な知識を持ち合わせ、すべてを計算して神殿を設計したというロマンチックな幻想を抱きすぎているという。

 ケンブリッジ大学で古典建築史を専門とするフランク・サーモン教授も、ウィトルウィウスの記述を絶対的な本として扱うことの危険性を指摘している。

 この神話はネット上では今も生き続けている。

 ゴリエリ教授が主要なAIチャットボットに「建築における光学的補正とは何か」と質問したところ、どれも同じ神話をそのまま答えたという。 

References: DOI.10.1098/rsos.26

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 2件

コメントを書く

  1. 設計者「一体いつから────錯視効果を遣っていると錯覚していた?」

    現代人「騙してやがったのか…!」

    設計者「騙したつもりはないさ ただ、君達が誰一人理解していなかっただけだ。古代ギリシャの本当の姿をね。一つ憶えておくといい、現代人君。憧れは理解から最も遠い感情だよ」

    • -1
  2. いずれにせよ ウィトルウィウスは策士(さくし)だったということで

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。