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クローン羊「ドリー」誕生から30年、あれからクローン技術は進化したのか

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(著)

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コットランド博物館に展示されているクローン羊ドリーの剥製 public domain / Wikimedia
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  世界初のクローン哺乳類となった羊のドリーが1996年にイギリスで誕生してから30年がたった。

 さぞかしクローン技術は進化したのでは、と思うかもしれないが、SFが描く未来はまだ実現していない。クローン技術は今も成功率が低く難しいままなのだ。

 だが、その研究はiPS細胞の発見や絶滅危惧種の保全へとつながり、生き物をコピーする技術とは別の方向で進んでいる。

30年前にイギリスで誕生したクローン羊のドリー

 1996年にイギリスのロスリン研究所で、世界初のクローン哺乳類となる羊のドリーが誕生した。

 ドリーの誕生は、クローンペットやクローン人間、さらにはマンモスのような絶滅動物の復活まで、SFが描く未来を予感させた。

 クローンは、精子や卵子ではない体細胞を動物の体から取り出し、DNA(遺伝情報)を収めた核を抜き取ることから始まる。

 ドリーの体細胞は、乳を作る乳腺から取られた。

 科学者は別の動物の卵巣から卵子を取り出し、卵子の核を抜き取ってから、ドリーの体細胞の核を電気の刺激で卵子に入れた。

 核を入れ替えた卵子が胚へと育ち始めると、科学者は代理母となる動物の子宮に着床させた。

 この技術は体細胞核移植と呼ばれ、誕生したクローン動物は、元の体細胞を提供した動物とDNAがほぼ同じになる。

世界初のクローン哺乳類、羊のドリー

クローン成功率の低さは30年たっても変わっていない

 技術は進歩したが、哺乳類のクローンの作成は今も成功率が低いという

 クローンが1頭成功する裏で、多くの胚が途中で育たずに失敗する。実際に、ドリーが誕生するまでには277回もの試行が必要だった。

 クローンをつくるためには、専用の設備や提供細胞、卵子、代理母の妊娠が欠かせず、費用がかさむため今でも大規模に行うのは難しい。

 メルボルン大学(オーストラリア)でがん科学を専門とするササナ・ドゥシャンセン氏によると、哺乳類のクローンでもっとも難しいのは、DNAをコピーすることではないという。

 遺伝子は生き物を形づくる要素の一部にすぎず、育つ環境や経験も動物の育ち方や振る舞いを左右するからだ。

 いちばんの壁は、乳腺細胞のように役割の決まった成熟細胞に、その役割を忘れさせて受精したばかりの胚のように働かせることにある。

 卵子は、どの遺伝子を働かせてどれを止めるかという細胞への指令をリセットしなければならない。作業をエピジェネティック・リプログラミングと呼ぶ。

 リセットはうまくいかないことが多く、クローン胚の多くが正常に育たない原因になっている。

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Image credit:Aldona

クローン技術がiPS細胞の発見へつながる

 過去30年の間に、クローンの成功率はあまり上がらなかったが、その一方でクローン研究が別の発見の土台となった。

 成熟した細胞を受精卵のような状態に戻せることが発見されたのだ。

 2006年、京都大学の山中伸弥博士らは、成熟した細胞に4つの遺伝子を導入し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)と呼ばれる状態に戻すことに世界で初めて成功した。

 iPS細胞は、さまざまな種類の細胞へと育つ能力を取り戻した成熟細胞で、生き物を丸ごと作るのではなく、必要な細胞を作り出すために使われる。

 iPS細胞のおかげで、研究者は病気のしくみを調べ、新しい薬を試し、失われた組織を再生する医療を探究できるようになった。

 役割の決まった細胞は永久に固定されているのではなく、生物学的に書き換えられる。クローンの研究は書き換えられる事実を証明してみせた。

絶滅危惧種の保全という新たな道が生まれた

 クローン技術は、絶滅の危機にある動物を救う手段としても使われ始めた。

 2020年、アメリカの科学者は数十年前に死んだ個体から保存されていた遺伝物質を使い、クロアシイタチのクローンに成功した。

 クロアシイタチは北米にすむ絶滅危惧種のイタチである。

 クロアシイタチのクローンは、アメリカで数が激減した種の遺伝的な多様性を高めることを目指したものだ。

 ただし遺伝的に似すぎた動物を多く生み出すと、かえって病気に弱くなる恐れがあるため、多様性を保つことが重要になる。

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クローン技術で誕生したクロアシイタチ Image credit:Roshan Patel / Smithsonian Conservation Biology Institute

 ただしクローン技術で絶滅した動物を丸ごと復活させることは、今も難しい。

 本物のクローンには、傷んでいないゲノム(全遺伝情報)と、適した卵子、近縁の代理母が必要になる。

 マンモスのように数千年前に消えた動物では、残された古代のDNAが壊れているため、そのままの復活はできない。

 そこで研究者は、古代DNAの研究とCRISPR(狙った遺伝子を書き換える技術)を組み合わせ、絶滅した種の特徴を生きた近縁種によみがえらせる脱絶滅という試みを進めている。

 将来の「マンモスのような動物」は、本物のマンモスではなく、遺伝子を編集されたゾウになると考えられている。

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コロッサル・バイオサイエンス社はマンモスを復活させるため、遺伝子操作によって毛がふさふさしたマウスを誕生させた。image credit:Colossal Biosciences

人間のクローンは誕生するのか?

 人間のクローンは、数十年語られながらも実現していない。

 動物クローンの失敗率が今も高く、人間に応用すれば胚や代理母、生まれてくる子どもに許されないリスクを生むからだ。

 生殖を目的としたヒトクローンは、倫理の問題もあって多くの国で禁止または厳しく制限されている。

 ドリーの誕生から30年、クローン技術は生き物をそっくりコピーする技術としてはほとんど進化していない。

 だがクローンの研究はiPS細胞の発見を生み、絶滅危惧種の保全へと使い道を広げ、生命を扱う技術として別の方向に大きく進化した。

References: 30 years since Dolly the sheep was born, where is cloning technology at now?

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この記事へのコメント 6件

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  1. >絶滅危惧種の保全という新たな道が生まれた

    環境が死んでいるのだからクローン作っても無駄
    そのクローンも死ぬだけ

    • 評価
  2. 亡くなったペットのクローンを提供するビジネスが行われている国もありますが、
    外見や性格が乖離していたり、奇形や急速な老化、早逝であまりうまくいかないようですね。
    記憶や経験は引き継がれないでしょうから、似て非なる個体という感じなのでしょうか。
    唯一無二の思い出が消えるようで、怖い気もしますね。

    • +7
  3. クローン肉牛とか普通にいるけど、そういう話じゃないの?
    受精卵を使うクローンは邪道とか?

    • -1
  4. 「生きてるって、なんだろ
     生きてるって、なぁ~に」

    • 評価
  5. どうやら俺の生きてる間にマンモスは見れないらしい

    • +1
  6. 怖い事を言うけど恐らくもうどこかの大国で軍事兵器用にクローン人間は開発されてると思う。しかも改良が加えられてて知能は高くテロメアは4倍の長さで長寿でおまけに筋骨隆々な完全人類とかいてもおかしくないよ。

    • 評価

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