この画像を大きなサイズで見る世界の浅瀬には、争いの爪痕として今も不発弾が眠っている。長年の間に砂に埋もれて藻にも覆われ、海の風景に溶け込んだ不発弾を見つけ出すのは至難の業だ。
この恐ろしい遺産について、アメリカのマイアミ大学の研究チームが、新たな”不発弾探し”に挑んだ。
NASA由来の先進技術を組み込んだ空飛ぶAIドローンが、海中に沈む不発弾を次々見分けることに成功。危険と隣り合わせの海中探査を、安全かつ効率的に変える可能性を示した。
この研究成果は『Frontiers in Marine Science』誌(2026年4月13日付)に掲載された。
参考文献:
- New airborne tech identifies camouflaged underwater bombs successfully
波に阻まれ続けた不発弾探査の壁
長年続いた世界各地の争いは、海底に恐ろしい遺産を残している。爆弾や機雷、砲弾といった無数の不発弾が、今も浅瀬に潜んでいる。
特に水深10メートルよりも浅いところは、人が近づきやすいぶん危険度も高く、最も探しにくい深度でもある。そうした場所での不発弾の発見は、費用がかさむ危険な賭けのようなものだ。
ソナー(音の反射で物を探す装置)は浅瀬ではうまく機能せず、カメラは砂の動きや波のうねりによる映像の歪みで視界を奪われてしまう。
波は動くレンズのように働き、光を歪ませて水中の物体をぼやけさせる。海底地図を作るうえで最大の壁になっていたのは、水そのものだった。
マイアミ大学ローゼンスティール校で地球科学の教授を務めるヴェド・チラヤス氏は、浅瀬に残る不発弾を世界的な課題だと位置づける。今回の手法については、検出精度を高め、沿岸をより安全にする助けになると説明している。
NASA由来の技術とAIドローンが挑む海底探査
チラヤス氏が率いる研究チームは、浅瀬の不発弾を安全に見つけ出すため、NASAの2つの先進技術を組み合わせた撮影システムを開発し、フロリダキーズ諸島の上空にドローンで飛ばした。
その技術の一つ目は「Fluid Lensing(流体レンズ技術)」。波による映像の歪みをリアルタイムで取り除き、海底の鮮明な高解像度画像を撮影できる独自技術だ。もともとサンゴ礁の健康状態を調べるために開発された技術で、今回は不発弾探しに応用された。
二つ目は「MiDAR(Multispectral Imaging,Detection, and Active Reflectancの略称)」だ。直訳では、多波長スペクトル画像化・探知および能動反射率測定などと訳される。
LEDなどの光源で複数の色の光を水中に照射し、暗い海底を照らし出す技術および装置を指す。この技術の強みは、太陽光だけに頼らず、自分で光を当てて撮影できるところだ。
この画像を大きなサイズで見る実験に先立ち、研究チームは、フロリダキーズ北部にある研究拠点・ブロードキー島周辺の海底に、火薬などを取り除いて安全に処理した本物の軍用弾薬(不発弾)14個と、わざと紛らわしくさせるためのデコイ(おとり)用に、金属パイプ3個を設置していた。
この画像を大きなサイズで見る的中率95% 藻や砂に埋もれても見逃さないAIの目
海中に置かれたばかりの物体を見つけるのは比較的簡単だが、時間が経ち周囲になじんだ物体を発見するのははるかに難しい。
潮流が周囲の砂を動かし、藻などの海洋生物が付着すると、物体は自然の海洋環境に溶け込むように偽装されてしまう。
そこで今回使った弾薬は、そうした状況を再現するため、あらかじめ約2ヶ月間海中に置かれ、生物の付着や砂の堆積によって見た目が大きく変化した状態になった後に撮影された。
研究チームは、高解像度のドローン画像をAI(機械学習モデル)に学習させた。AIは、サンゴの自然な形状や岩、がれきと区別しながら、兵器特有の細長い形や輪郭のパターンを認識するよう訓練された。
その結果、このシステムは設置した14個の弾薬すべてを漏れなく発見した。的中率(見つけたもののうち本物だった割合)はおよそ95%に達し、AIが「不発弾らしい」と判断した対象の見立ては、ほとんど外れなかった。
一方、あえてデコイとして仕込んだ金属パイプは、一度も誤って「不発弾」と判定されなかった。
AIは不発弾特有の細長い輪郭を手がかりに判断しており、紛らわしい物体にはだまされなかった。
なお調査中は、想定外の副産物もあった。不発弾探しのはずが、これまで知られていなかった沈没船が2隻、偶然見つかった。
この画像を大きなサイズで見る世界の沿岸を脅かす不発弾問題へ
新しい探査技術は、フロリダだけの話にとどまらない。世界には第一次世界大戦や第二次世界大戦の時代から、半世紀以上にわたって海中に残されたままの不発弾も数多く存在する。
ヨーロッパの旧戦場や太平洋の忘れられた投棄場に残された不発弾などは、今なお深刻な脅威であり続けている。
これらの兵器は、有毒化学物質を脆弱な生態系に漏出させ、沿岸のインフラ整備計画を突如として妨げる原因でもある。
この画像を大きなサイズで見る従来の探査手法の迅速・安全な代替手段を目指す
これまでの不発弾探査手法には限界がある。潜水士は高いリスクにさらされ、音響探査船は水深10メートル未満の浅瀬を安全に航行できない。
このようなドローンによる空からの調査が実現すれば、広大な海岸線を一度の飛行でカバーでき、迅速かつ安全な代替手段になりうる。
ただ研究チームは、この実験の限界も認めている。
海底の表面に見えている不発弾は検出できても、砂に完全に埋もれてしまったものは対象にできなかった。
またフロリダキーズという比較的穏やかで澄んだ海域での実験だったため、より濁った海や深い場所での検証も今後の課題になる。
今回の初期実験では高い精度が確認されたが、研究チームは今後、大西洋の濁った水路から太平洋の深い湾まで、より幅広い海洋環境でシステムを検証していく予定だ。
この研究でわかったこと
- NASAの技術「Fluid Lensing」と「MiDAR」を組み合わせ、空からAIドローンで海底を撮影する新手法を開発した
- AIが海底に設置した弾薬14個をすべて発見した。的中率は約95%に達した
- 不発弾が藻や砂に覆われて自然に溶け込んだ状態でも検出に成功し、おとりの金属パイプは一度も誤判定されなかった
今後の課題
- 光学的な撮影による手法のため、砂に完全に埋もれた不発弾は検出できない
- 濁った水域や荒れた海域での精度は未検証
- 研究チームは、大西洋の水路から太平洋の深い湾まで、幅広い海洋環境での検証を計画
References: (LAS) MiDAR -Active Multispectral Imaging - NASA / Earth.miami.edu / doi.org/10.3389/fmars.2026.1776178















