メインコンテンツにスキップ

Googleでカラパイアを「お気に入りサイト登録」

キリンは足し算ができる可能性。でも引き算はできない

記事の本文にスキップ

26件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
ウガンダキリン Image by Istock / Lakeview_Images
Advertisement

 キリンは数が多いか少ないかを理解できることはこれまでの研究でわかっていた。では数を記憶し、足し算することは可能なのか。

 スペインの動物園でおこなわれたバルセロナ大学の実験によると、キリンが頭の中で足し算をしていた可能性が示された。

 ただし引き算になると、途端に正解できなくなったこともわかった。

 だとすると動物園でキリンを見に来ている人間のことも、「あれ、昨日より今日はいっぱい来たな」なんて思ってるかもしれない。

 この研究成果は『Scientific Reports』誌(2026年6月26日付)に掲載された。

参考文献:

キリンは数の多い、少ないがわかる

 そもそもキリンが数を理解できるのか。実はできるのだ。

 スペイン、バルセロナ大学の研究チームは2020年、バルセロナ動物園のロスチャイルドキリン(ウガンダキリン)が2つの量を見比べて多いほうを選べることを確かめ、Animal Cognition誌に発表した。

 さらに2023年には、同研究チームが同動物園のキリンを対象に実験をおこなったところ、好物のニンジンがたくさん入っている容器を見極め、多いほうを選べることをScientific Reports誌に発表した。

 正確にキリンが1、2、3と数えたわけではないが、「こちらのほうが多そうだ」というおおよその量の感覚で判断したとみられている。

 キリンはある程度の数が理解できることは分かっていたものの、見たものを記憶して頭の中で足したり引いたりできるかどうかは、これまで調べられていなかった。

 実は、キリンは賢さの研究があまり進んでいない動物なのだ。

 今回の実験を率いた研究チームにも、この研究に参加した研究者が加わっている。

この画像を大きなサイズで見る
バルセロナ動物園のキリンたちの能力を研究しているバルセロナ大学の研究チーム、ジョルディ・ガルバニー氏(左)とイケル・ロイディ氏(右) Image credit:UNIVERSITY OF BARCELONA

箱を隠してニンジンを足す実験、キリンは合計数を記憶していた

 今回、バルセロナ大学のイケル・ロイディ氏らの研究チームが、バルセロナ動物園で4頭のキリンを対象に行ったのは数の記憶だ。

 ナクル、ニャノ、ヌル、ヤリンガという4頭が参加し、いずれも好物のニンジンを使っって実験を行った。

 まず、黄色い箱を2つキリンの前に置き、それぞれに違う数のニンジンを入れて、キリンに中を見せる。

 数秒後に箱の中をキリンから見えなくする。

 次に、別に用意した緑の箱からニンジンを1つずつ取り出し、2つの黄色い箱のうち片方にだけ入れていく。

もう片方の黄色い箱には何も足さない。

 箱にニンジンを入れる動作はキリンに見せるが、箱の中が最終的に何個になったかは見えない。

 キリンは最初に見た数と、あとから足された数を頭の中で合わせないと、どちらの箱が多いか分からない。

 2つの箱に最初から違う数を入れてある点も、実験の大切な仕掛けだ。

 たとえば1個と2個を見せ、少ないほうの1個に2個足すと、3個対2個になって多い少ないが逆転する。

 最初に多く見えたほうを選ぶだけでは間違えてしまうため、キリンは足し算をしないと正解できない。

 箱の位置も最後まで動かさないので、キリンは左右どちらの箱がどうなったかを覚えておく必要がある。

 その結果、4頭すべてが偶然を上回る成績を出した。

 正解率は平均68%で、でたらめに選んだ場合の50%をはっきり超えている。

 キリンは合計で最大5個までを頭の中で追い、多いほうの箱を選ぶことができた。

この画像を大きなサイズで見る
研究者はまず、2つの黄色い箱にそれぞれ違う数のニンジンを入れ、キリンに中を見せる。数秒後に箱を閉じて中身を隠す。次に緑の箱を見せ、そこに入っているニンジンを2つの黄色い箱のうち片方にだけ移す。キリンは箱の中が最終的に何個になったかを見ないまま、多いと思うほうの箱を選ぶ。Image credit:UNIVERSITY OF BARCELONA

だが引き算は当てられなかった。人間と同様の傾向

 研究チームは他に、引き算にあたる課題も試した。

 手順は足し算の時と同じで、2つの黄色い箱に違う数のニンジンを入れて見せてから中身を隠す。

 今回は緑の箱を最初は空にしておき、2つの黄色い箱のうち片方からニンジンを抜いて緑の箱へ入れていき、もう片方の黄色い箱には手を加えない。

 ところが引き算になると、成績は50%前後まで落ちて偶然と変わらなくなった。 

 同じ傾向は人間にも見られる。子どもは足し算を先に身につけ、引き算はあとから覚える。

 大人でも、1桁の簡単な数を暗算で答えさせる実験では、足し算より引き算のほうが時間がかかることが分かっている。

 文化の違う複数のグループで同じ結果が確認されており、大人の頭にとっても、引き算のほうが手間のかかる作業だと考えられている(Journal of Experimental Psychology: General誌, 2001年)。

 チンパンジーやサルの研究でも、引き算のほうが難しいという結果が出ている。足すより引くほうが頭に負担がかかる点で、キリンは人間や霊長類と同じ壁にぶつかった。

 同じ傾向は人間にも見られる。子どもは引き算を足し算より後に身につけるし、大人でも引き算のほうが時間がかかる。

 チンパンジーやサルの研究でも、引き算のほうが難しいという結果が出ている。足すより引くほうが頭に負担がかかる点で、キリンは人間や霊長類と同じ壁にぶつかった。

本当に足し算ができていたのか?

 ただし気をつけたいのは、キリンは本当に足し算をできているのかどうかだ。

 キリンが計算せずに正解できる方法として、研究者は足し算のとき、片方の箱にニンジンを入れる際、箱を触ることになる。

 触れた箱には元の中身に足した分が加わるので、触った箱のほうが多くなる場面が多い。

 キリンが「人間が触った箱を選ぶ」と決めた場合も、正解に近づけてしまうのだ。

 研究チームはこの点に着目して確かめてみた。

 その結果、ナクルとヤリンガの2頭は、多く触れた箱に多く入っている時しか偶然を上回らなかったため、この2頭が足し算できたとは言い切れない。

 一方で、ヌルとニャノの2頭は、この方法が通用しない場面でも正解を続けたため、ヌルとニャノは頭の中で数を追っていた(足し算していた)可能性が高い。

 となると、キリンも人間同様、個体によって能力が異なるようだ。

 特にヌルは、過去の研究でも優秀な成績を残していた個体だった。 

集団生活とエサ探しがキリンの数の能力を育てた可能性

 研究チームは、キリンに数を追う能力が備わった理由として、野生での暮らし方にあると考えている。

 野生のキリンは、群れが分かれたり合わさったりを繰り返す社会で生きている。

 仲間が増えたり減ったりする中で、周りに何頭いるかを数えて覚える必要があったのかもしれない。

 エサの取り方も関係している。キリンは広い範囲に散らばった葉を食べて回るため、どこにどれだけエサがあるかを覚えておく力が役立つ。

 数を追う力は、より多くのエサを見つけたり、天敵の多い場所を避けたりするのに有利だったと考えられる。

 今回の実験は、対象がわずか4頭と少なく、結論を出すには慎重さが要る。

 それでもキリンのような大きな動物が、数を覚えながら頭の中で追えることができるとしたら、その能力は霊長類だけのものではないことを示している。

まとめ

この研究でわかったこと

  • キリンは、隠された箱の中でエサが足されても、多いほうを選べる。頭の中で足し算をしていた可能性がある。
  • 引き算になると成績が偶然と変わらないレベルまで落ちた。足すのは追えても、引くのは追えない。
  • 4頭のうち2頭は、当てずっぽうでは説明できない場面でも正解を続けた。頭で数を追った可能性が高い。

まだわかっていないこと

  • なぜキリンは足し算はできても引き算はできないのか、はっきりした理由はまだ分かっていない。
  • 対象がわずか4頭と少ないため、キリン全体に当てはまるかどうかは今後の研究待ち。

References: DOI: 10.1038/s41598-026-54126-7

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 26件

コメントを書く

  1. ”クレバー・ハンス現象”が起きていないか、その辺は考えてあるのかな?
    人間の方が無意識に答を示していて、それをキリンが感じ取っているとか
    そう言う事は無いんだろうか。

    • -4
    1. 可能性はゼロではないけど
      それだと引き算でも正解できるはず

      • +17
    2. 🐴「キリンには人の機微は感じ取れまい・・・」

      • 評価
  2.  なくなったとか減るという概念が理解できないのかも? カラスが 4 までは数えられるという話がありましたし、たしか人の出入りで数か量を(残っている人がいるか否かという方法で)計算できていそうな話があった気がします。 減算はキリンに必要な能力でないのかもしれませんね

    • +9
  3. 群れで生きる(大型)動物は、仲間を見分け数を数える
    そうでないと地位が保てないし、その移動もできない
    群れの誰かが急に欠けた場合に問題になるし

    計算できる馬が、実は…というのも、飼い主の微妙な反応を読み取っているからだし、群れる動物は関係性にかかわる知能は高い

    • +7
      1. 野生ではライバルの群れとド付き合いが終わって帰る時、奥さんが入れ替わってもだれも気付かないらしいし、
        飼い主である塚本学長先生の、足やあばらを骨折させる頭脳の持ち主だよね (ライオンの骨も砕けるらしい)
        先生たちは今日も命がけでダチョウから抗体(卵)を強奪して、人々の命を救っている

        • +5
    1. 記事よりもあんたの説明のほうが分かりやすく内容も深いな

      • -5
  4. 偶然正解したのかどうかの見極めが大変そうだ

    • +2
  5. 人間は指を使って足し算や引き算ができるけど、キリンは首しか使えないから計算が難しいのだろう
    多分2進数で計算しているな
    だから引き算が大変なんだ

    • +7
  6. 葉っぱばっか食うのかと思たら🥕もいけるのか

    • +2
    1. 秋田県のリンリンは、リンゴが好きだよ!
      でも主食じゃないから、たくさんはあげられないよ~

      • +4
  7. ちょっとかわいいじゃない。私はありそうな事かなって思って。ウチに居たウサちゃんも、オヤツが1つだともう終わっちゃったよ、って顔をして3つだともうちょっと貰えない?って態度して、5つだとうわぁ、いっぱいある‼️って感じだったから、『増えている』って事は分かってそうだったな。私の思い過ごしかしら。

    • +9
    1. うちの猫も「さっき食べたでしょ?」が分からない模様

      • +6
  8. >子どもは引き算を足し算より後に身につけるし、大人でも引き算のほうが時間がかかる。

    えっ、そうなの?
    幼児が足し算のほうを先に覚えるのはともかくとして、
    大人って、どういうやり方で計算させた場合の結果なんだろう?

    普通に紙に数式を書いて、テストを解かせる感じ?
    それとも、このキリンみたいに、中身を見えなくした箱から 現在進行形で出し入れする方式?

    後者なら、操作者の出し入れに連動して 脳内で同数だけオバジキを動かすような図形処理でいけるから、足し算だろうが引き算だろうが、操作が終わった段階で残ったオハジキの数を答えるだけで、速さは変わらないように思うが。

    同じ理屈で 前者でも、現代っ子ではもう一般的ではないかも知れないけど、珠算式暗算ができる人(考えなくても反射的に珠を動かせる程度には習熟した人)なら、やはり加算と減算の速度差って そんなに無さそうな気がする。

    • -1
  9. 目の前で箱に出入りして動いた人参の数だけに釣られてたり?

    • +1
  10. 純粋な疑問で、なんで箱2つの実験だけなんだろう?運要素強くない?
    3つ以上で正答に確実性もたせたらいいのに

    • 評価
    1. 3つも4つも箱があって、そこに別々の個数が入っており
      さらにそこへ何個か出し入れするとなると、
      あちこちへ注意が逸れて
      人間の大人でも、シンプルに覚えきれなくて間違える奴が多発しそう。

      • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。