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世界最大の蚊の生産工場がブラジルにオープン、デング熱の撲滅に挑む

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(著)

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World Mosquito Program
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 蚊は刺されるとかゆいだけでなく、危険なウイルスを媒介して感染症を引き起こす、やっかいな虫だ。できれば関わりたくないが、そんな蚊を週に1億9000万匹も生産する、世界最大の工場がブラジルに登場した。

 まるで悪夢のような話に聞こえるかもしれないが、これは深刻化するデング熱を止めるための、最先端の科学的プロジェクトである。

 テング熱のウイルスを媒介しない蚊をあえて自然界に放つことで、感染を広げる蚊を少しずつ置き換えていこうという試みが、かつてないスケールで進められているのだ。

ブラジルに誕生した世界最大の“蚊の工場”

 ブラジル、サンパウロ州にある都市カンピーナスに、世界最大規模の蚊の生産工場が完成した。広さは約1300平方mの敷地内で、研究員たちが週に最大1億9000万匹もの蚊を育て、成虫になったものを自然界に放つ準備をしている。

 育てられているのは「ネッタイシマカ」という蚊で、デング熱の主な媒介種だ。この蚊は、デング熱だけでなく、ジカ熱やチクングニア熱などのウイルスを運ぶことで知られている。

 ただし、工場から放たれる蚊は普通のネッタイシマカではない。体内に「ボルバキア菌」という細菌を人工的に感染させた特別な蚊だ。

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nature video / Youtube

ウイルスを防ぐボルバキア菌の働き

 ボルバキア菌には、ウイルスの増殖を抑える性質があり、この菌を持つ蚊の体内では、デングウイルスが唾液腺に届かなくなる。

 蚊の唾液にウイルスが含まれなくなるため、刺されたとしても感染することがなくなるのだ。

 さらに、この菌は蚊のメスから子どもへと受け継がれていく性質がある。その背景には、ボルバキア菌が蚊の生殖に影響を与えるという特性がある。

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ボルバキアの電子顕微鏡画像/ Image credit:Scott O’Neill / WIKI commons CC BY 2.5

感染力のある蚊が自然に減っていく仕組み

 ボルバキア菌は、子孫を確実に残すために、蚊の生殖の仕組みに影響を与えていく。つまりオスとメス、どちらかがこの菌に感染していれば、最終的に全ての蚊がボルバキアの保菌者になるのだ。

ボルバキア菌感染の有無と蚊の交配の関係

感染したオス × 感染していないメス → 卵が孵化せず子孫ができない
この場合、受精しても卵はかえらない。感染力のある蚊のメスが子孫を残せなくなる。

感染したオス × 感染したメス → ボルバキア菌を持つ子孫が誕生
両方が感染していれば通常通り繁殖し、子にもボルバキア菌が引き継がれる。

感染していないオス × 感染したメス → ボルバキア菌を持つ子孫が誕生
メスが菌を持っていれば、どんな相手と交尾しても子に菌が伝わる。

 感染していない蚊は繁殖で不利になり、世代交代の中で自然に数を減らしていくため、最終的には、感染力のない蚊が自然界で多数派となり、デング熱を広げる蚊を置き換えていくことが期待されている。

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nature video / Youtube

デング熱と戦う新たな武器

 このボルバキア菌を活用した方法は、ブラジルだけでなく、オーストラリアやインドネシア、ベトナムなどでも導入されており、実際にデング熱の感染率を大幅に下げる成果を上げてきた。

 今回のブラジルの取り組みが注目されているのは、そのスケールの大きさにある。

 ブラジルは、2024年に過去最悪のデング熱の流行を経験し、世界の感染報告の約8割を占めた。

 デング熱は、ネッタイシマカをはじめとする蚊によって媒介されるウイルス感染症で、高熱や激しい頭痛、筋肉痛、発疹などの症状が現れる。

 一般的には1週間ほどで回復するが、まれに重症化し、出血やショックを引き起こして命にかかわることもある。現在のところ特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法に限られている。

 殺虫剤やワクチンなどの従来の手段では感染拡大を食い止めることが難しくなっており、感染力のない蚊を自然界に増やすことで、感染源となる蚊を減らしていこうという新たなアプローチが、根本的な対策として注目されている。

工場で蚊はどう育てられているのか

 カンピーナスの工場では、まず温度や湿度を管理したトレイに水を入れ、蚊の幼虫を育てる。やがて成虫になると、オスとメスに分けられ、それぞれ専用のケージに移される。

 オスの蚊は、綿に染み込ませた砂糖水を吸って生きる。一方、メスには人の皮膚のような質感の袋に入れた動物の血液が与えられる。

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nature video / Youtube

 成虫になった蚊は交尾を行い、産卵用のトレイに卵を産みつける。こうして次の世代が育てられていく。

 このプロセスを繰り返しながら、週に最大1億9000万匹の蚊を安定して供給できる体制が整えられている。

これは、年間で1億人分の地域に対応できる規模に相当するという。

 こうして育てられたボルバキア菌を持つ蚊の成虫は専用の容器に集められ、車両や徒歩で地域ごとに放たれていく。

 放出は事前に計画されたスケジュールに沿って行われ、徐々に自然界での個体数を増やしていくのだ。

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nature video / Youtube

世界に広がる蚊のコントロール

 World Mosquito Program(WMP)と呼ばれるこのプロジェクトは、世界各地の研究機関や保健機関と連携しながら、蚊をコントロールするという全く新しい公衆衛生モデルを作り出そうとしている。

 従来のように蚊を「減らす」のではなく、感染力を「持たない蚊」に置き換えていくという考え方は、昆虫と共存しながら感染症を防ぐという点でも画期的だ。

 ブラジル発のこの巨大な工場から放たれる蚊たちが、今後どれだけ感染拡大を抑える効果を発揮するのか、世界中の関心が集まっている。

References: Worldmosquitoprogram / Get ready, Brazil. The 'good mosquitoes' are coming / The World’s Largest Mosquito Factory Opens in Brazil

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この記事へのコメント 30件

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  1.  これは期待ですね。 考えて見ると天敵導入でうまくいった例は知らないけど、不妊のハエやアブの導入でうまくいった例は見たことがあるので、同種をちょっと改変パターンという点でいけそうな気がします。 これでうまくいくとアフリカでも行けるんじゃないかなと。 撲滅できた時には不要な会社?組織?だけどそれまでは活躍してほしいな

    • +6
  2. オスの蚊と産卵期以外のメスの蚊は花の蜜を吸って暮らしているので
    蚊を絶滅させると受粉などで植物界に被害が出ると学者たちは考えているのであろう

    • +12
  3. 蚊の生殖ロジックをしくじったら
    大変なことになっちまわないか心配。

    • +8
    1. ちょっとパニック映画の冒頭っぽさを感じるな

      • +9
  4. みんな体と頭覆ってマスクして仕事してる中で、なぜか顔丸出しでチョコバー食ってるやつが包み紙をポイ捨てするコンプライアンスが謎すぎる職場でありませんように。

    ついでに気密ドアに、なぜかゴミを吸いやすい床の直上に謎の吸入口が付いてて、動作に関わる重要な機器がゴミで速攻、壊れるような謎すぎるドアを採用していないといいな。

    • -12
    1. 「ジュラシックワールド ふっ蚊つの大地」の冒頭ですね

      • +4
    2. 最初に謝っておく
      うろ覚えなので文中に(?)が満載だ
      申し訳ない

      細菌(?)だか何だかの研究所(?)があって、職員(?)の出入りの際の消毒体制(?)は(一応)万全なんだけど
      コンタクトレンズをしてる職員(?)がコンタクトと眼球の隙間に細菌(?)が入り込んでいるのに気づかずに出入りして、細菌(?)が外に持ち出されパンデミックになった
      という『チェインリアクション』という映画があった
      いくら管理体制が万全のつもりでも、ちょっとしたことやヒューマンエラーでエラいことになる可能性はゼロではないよね

      • +2
    3. 皆さんのおかげで、やっぱあのシーン相当、ヘンテコなシーンなんだなってのが証明された気分です。知らない人は尚のことでしょうね。

      • 評価
  5. Xファイルで
    ハチの工場があったのを思い出した。
    スカリー 「モルダー、あなた疲れているのよ」

    • +1
  6. 蚊を絶滅させるわけじゃなく テング熱だけを撲滅させるなら生態系を変える恐れが無くて良い方法だ。他のウイルス感染症にも応用できるようになることを期待します。

    • +11
    1. どこをよんだらそんな結論になるんだ

      お花畑すぎる

      • -14
      1. 「ボルバキア菌感染の有無と蚊の交配の関係」の項

        • 評価
  7. そういえば生殖能力無くす蚊を放つ実験ってどうなったんだろう

    • +6
  8. ボルバキア菌に耐性を持つウイルスが発生しそうではあるけれど、これだけに頼らず他の手段も同時に進めていくのならありかな

    • +3
  9. 朝日新聞デジタル
    デング熱の免疫持った蚊1万匹放出 ブラジルで予防策
    サンパウロ=田村剛2014年9月28日07時14分

    10年以上前からやっているんだな

    • +3
    1. へーそうなんですね
      てことはこの予防策がなければ大変なことになっているのかな…
      撲滅には時間というか十数年かかる?お金関係気になりますね

      • 評価
  10. オスとメスをどうやって分けるんだろう?
    砂糖水と血液のどちらに寄ってくるかで分けるかと思ったけど、産卵時期以外はオスもメスも花の蜜を吸うはずだし。

    • +1
  11. 人間の生活域周辺のみの限定的影響なら問題無いかもしんないけども、このデザイン蚊が自然界全域にまで生息域広げられると、何かしら問題が起こるかわからない。起こらないかもしれんけど。

    例えばこのウイルスに感染しても病気として発症しない動物が他のウイルスに感染しない防壁になってるとか、ウイルスで死ぬ動物が一定数いることでバランス保たれてる環境もあるとか。

    • +2
    1. ボルバキア菌に感染した蚊は珍しくないらしい
      ボルバキア菌の中で効果があるものを選んで感染させた蚊を使うんだから
      影響は、人間の生活域周辺のみって考えてよさそう

      • 評価
  12. あ、コレ仮に蚊がいなくなったとしても生態系に深刻な影響が出て問題になるタイプ
    でも失敗すると思うよ
    奴らの適応力をなめ過ぎ

    • -3
  13. 蚊を放流するときにめっちゃ噛まれそうな心配

    • 評価
  14. 工場人事部より
    雌の蚊に給餌するお仕事を手伝ってくれる人材を募集します。
    パンツ一枚で床に転がってるだけの簡単なお仕事です。
    待遇:弊社規定により優遇。

    • -1

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